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蚊帳の外

食事会から一夜、休日という事もあり祇梨蓮斗は家の近くの展望台に来ていた。

蓮斗「.......」

柵に肘を乗せぼーっと景色を眺める。忙しなく走る車、遊んでいる子供、部活をしているであろう学生。そんなありふれた風景を眺めながら祇梨蓮斗は物思いにふけっていた。

蓮斗「(俺が処刑かぁ...人生、何があるか分からないとは言うが、まさか処刑)対象になるとは...」

祇梨蓮斗は今自分の置かれる状況を改めて明確にし今後の立ち回りを考える。

蓮斗「(攻められれば相手を叩き潰せばいい。ただ、命までは奪わなくていい、下手に命を奪えば要らん悲しみを生む。)」

ぼーっと風景を眺めながらそう考える。祇梨蓮斗という人間は戦いは好きだが、血も涙も無い殺人鬼では無いのだ。無益な殺生は好まない。

蓮斗「......?」

物思いにふけっていると、祇梨蓮斗はある違和感を感じる。普通の人間なら気が付かないであろうとても小さな違和感。しかし、死線を越え成長している祇梨蓮斗は確かな確信があった。

蓮斗「...静かすぎるな。」

そう、先程まで聞こえていた街の喧騒、動物達の鳴き声、風邪などの自然音。その全てが忽然と消えたのだ。

蓮斗「........」

違和感に気が付くと同時にその場に得体の知れない気配が渦巻き始める。自然と祇梨蓮斗の体に力が籠る。警戒心が最高潮になる。その瞬間だった。

蓮斗「おっ。」

その場に現れた存在は見知らぬ男女だった。その姿、その雰囲気、全てに至るまで完璧な人間のそれだった。だが、祇梨蓮斗はその2人からただならぬ気配を察知していた。

蓮斗「一応聞くが、敵か.....?」

この瞬間、祇梨蓮斗は思考を素早く回していた。相手の手段、所属、関係。祇梨蓮斗は今も尚、倒すか殺すか決めあぐねていた。しかし、そんな心配は杞憂に過ぎなかった。

男「待った。俺達は君と戦う意思は無いよ。」

蓮斗「...その言葉を、俺が馬鹿正直に聞き入れると思うか?」

女「そう思う気持ちも分かるけど、本当に私達は君と戦うつもりは無いんだ。証拠だって見せれる。」

蓮斗「証拠?」

男「これだよ。」

そう言い男が見せたのは右腕。その右腕には神の因子を持つ者にしか現れない特徴的な紋様だった。その紋様は、祇梨蓮斗の右掌の物に酷似していた。

蓮斗「それは...」

女「自己紹介が遅くなっちゃったね。私は学園都市エーゼルファリア所属の教師七衣梨花。」

男「同じく学園都市エーゼルファリア所属、楽海界人配下、向井創。」

蓮斗「エーゼルファリアの...どうしてそこの人達が俺の元に...何かあったんですか?」

向井「俺達がここに来たのは君を保護する為だ。」

蓮斗「保護?」

七衣「今回、君達が処刑される事になったのは知ってるよね?」

蓮斗「一応。」

七衣「その処刑に際して別の国がここ日本を攻めてくる予兆があった。現に、複数の国で制圧部隊も編成されてる。」

蓮斗「........」

祇梨蓮斗は七衣梨花の話を真剣な面持ちで聞く。

七衣「でも、相手の国が攻めてくる理由も判明、相手が君達を処刑しようとする理由もね。それを今から公表して相手に揺さぶりを掛ける。」

蓮斗「理由...?聞いても?」

七衣「もちろん。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

蓮斗「っ...........」

祇梨蓮斗は七衣梨花に事の顛末を聞き唖然としていた。無理も無いだろう、何故なら侵攻の理由があまりに身勝手なものだったから。

七衣「アルドンスは突然現れた君と天羽綾人を最大限警戒してる。危険因子は早く潰しておきたいだろうしね。」

向井「それで俺達がここに来た理由、それは今回の戦いに君を参戦させない為だ。」

蓮斗「なぜだ!?」

向井創のその発言に祇梨蓮斗は困惑と怒りの混ざった声で反論する。

蓮斗「今回の戦いの目的は俺達を殺すってものだろ!?だったら俺と天羽が前線に出れば、その分民間人の被害が減るだろう!?」

七衣「こればっかりは仕方ないの。アルドンスの連中は君達を捕らえた後、高確率でこの国に侵略戦争を仕掛けてくる。それに、君は冠位に選ばれた存在だ。此処で失う訳にはいかないんだ。」

蓮斗「だったらどうしろと!?俺はただ、この国が侵略されていくのを何もせずに見ていろと!?」

祇梨蓮斗は激情のままに二人に対し詰め寄る。しかし、2人は至極冷静に返答を返す。

向井「そうは言っていない。」

蓮斗「.....?」

向井「君はこの世界でもとても稀有な力を持ってる。それに加え君程の修羅場を経験している人間なんてそうそう居ない。だから君は人に頼るんじゃなく自分の力で問題を解決しようとする。違うかい?」

蓮斗「.....そうだ。」

向井「それが悪いとは言わない。だが、君は子供だ。大人に頼ってもいいんだ。」

蓮斗「.......」

七衣「それに、いくら君が天才って言ってもそれに頼りきる程、この国の大人は馬鹿じゃないよ。」

蓮斗「だが、それでは....」

向井「それに、君が今までやってきたことの答えが見れるよ。」

蓮斗「答え?どういう...」

七衣「これの事だよ。」

そう言い七衣梨花は祇梨蓮斗にスマホの画面を見せる。そこに映し出されていた映像は祇梨蓮斗を驚かせる物だった。

イルア「今回の祇梨蓮斗と天羽綾人処刑の件ですが、彼らに救われた身としては非常に怒りを覚えるものです。ですので、我が神聖国家アルベシアは日本に全面協力し、武装国家アルドンスを筆頭とする国際連合軍と徹底抗戦する事をここに誓います。」

蓮斗「イルアさん....」

七衣「それだけじゃないよ。」

蓮斗「え?」

向井「学園都市エーゼルファリア、国防軍全団長、妖人街、その他にも色々な組織が今回の戦いに参戦する事を表明しているよ。」

蓮斗「なんで...」

七衣「言ったでしょ?これは君が今までやってきた事の答えだって。」

蓮斗「........」

祇梨蓮斗はその言葉を聞き張り詰めた糸が切れた様にその場に座り込んだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

蓮斗「それで、今回の戦いに俺達は.....」

荒山「参戦する事は許さない。今回お主らは守護対象。戦闘に関してだけはお主らは蚊帳の外じゃ。」

天羽「ですよねー.....」

荒山「ただ、お主らは複数ある避難所に1人づつ避難してもらう。」

蓮斗「.....?一箇所に固まった方が良いのでは?」

荒山「いや、恐らく相手は本軍とは別の部隊を動かす。もし一箇所に固まっていれば間違いなくそこを集中的に襲撃される。それを避ける為に避難所を分けるんだ。」

天羽「それじゃ、俺達の居ない避難所が襲撃されたらまずいんじゃ...」

荒山「それに関しては問題ない。」

蓮斗「なぜ、そう言い切れるんですか?」

荒山「答えはこの者達が居るからじゃ。」

そう言い荒山厳十郎は部屋にとある人物達を招いた。そこに立っていたのは学園都市エーゼルファリアの者達だった。

蓮斗「戸塚さん...!どうしてここに...」

戸塚「えっと、私も祇梨君の事助けたくて...みんなと一緒に、来ました...!」

蓮斗「...ありがとう。」

楽海「やぁ、蓮斗君。久しぶり。」

蓮斗「楽海さん、今回はありがとうございます。」

楽海「気にするな。」

荒山「さて、皆聞け!」

そう荒山厳十郎は大きな声で言う。その声を聞き部屋に居た全員や放送で国防軍に待機していた全団員がそちらに目を向けた。

荒山「諜報部からの伝達だ!アルドンスが攻めてくるのは明後日の午前11時!すぐさま迎え撃つ準備をしろ!」

その咆哮に近い声を聞いた団員達は瞬時に動き出した。

蓮斗「とうとう、始まるのか...」

天羽「大丈夫だ祇梨。俺達はみんなを信じよう。」

蓮斗「...そうだな。」

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