バーベキュー
「ストーンランス!!」
「にゃ~!!」
岩の槍と氷の槍が高速移動をしている虎男に向かって行く。もちろんシンラと同等のスピードを誇る奴には当たらない。
「アモスさん、そのまま防御。オケアノスは回復に専念。シンラは中距離から相手をして」
「僕中距離戦は苦手なんだけどなぁ。餓狼の型中伝、破狼脚!!」
凄まじい速度の蹴りは衝撃波となって鳥男に向かって飛んでいく。しかし制空権を獲得している彼には避けるのは容易い。だがシンラは衝撃波を連続で放つ。
「2体は絶対にお互いの戦闘領域に入らない。戦闘フィールドが制限されているなら動きを計算するのも簡単よ。リュートさん今よ!!」
シンラの攻撃を避けていた鳥男は気配を消して待っていたリュートさんに捕まる。
「本当に待機していた場所にやってきた!!」
「それを計算した場所に投げれば」
「うおぉぉおぉぉぉぉ!!!」
投げられた先には偶然虎男の背中があった。まさにアモスさんに攻撃をしようとしているその時にぶつけられた。
「3人とも最後の答え合わせよ」
「にゃ~!!」
オケアノスが氷の茨で2体を拘束する。
「フアッハッハッハ!!足りん、足りんぞ!!この程度の痛みでは俺を絶頂させることなぞできーん!!!!M・インパクト!!」
「荒象の型中伝、三津地!」
「竜の破滅光!!」
3人の必殺技が炸裂したのだが、アモスさんだけネタっぽい技名。残り二人は中二病感満載なネーミング。だが名前はともかく威力は申し分ない。四獣といえどもあれだけの攻撃をうけてはひとたまりもなかった。
「中条、あんたちゃんと集中してる?さっきからチラチラ戦闘の様子見てるみたいだけど」
「あ、ああ、付与の管理は任されてたから様子を見てたんだけど、相変わらず攻撃職は派手だなぁと思ってな」
「私たちなんて傍から見たら輪っかを触ってる変な集団だものね」
俺たちがやっているのは大きな輪に付与を施している。付与するのはもちろんビオラさんの固有スキル“流動”。流れを変える事象改変のスキル。その効果は強力で、例えば本来起こった事象すら流れを変えることで無かったことにしたり、不利な戦況の流れを良い方へ導いたりと多様できる。
今回は結界が起こす“破壊されたら術者が死ぬ”という事象を変える。そのために使用するのがこのフラフープらしい。
「全体への流動は魔力が足りないから、この輪を付けた部分だけを改変するってことよね。私の魔力じゃこの輪だけでも難しいから、隼人君を魔力タンクにして付与をするわね」
「なんかサラッと酷い事言われてる気がする」
付与は俺の専売特許ではない。ビオラさんのスキルも結構色々なことができるので、今回俺の仕事は足りない魔力を補うだけ。本当に魔力タンクにしか使われてない!!
「まぁ、魔力制御もビオラさんの方が上手いし、俺がやる必要はないんだけど、魔力タンクってのはちょっと酷い、ブツブツブツ」
「なにブツブツ言ってんのよ。あんたは大人しく魔力を出してればいいのよ」
「酷い!!」
「(そもそも、他人に干渉できるほどの魔力を持っていること自体がおかしいんだけど・・・・うん、黙っておこう)」
俺の魔力をビオラさんに流す。あんまり多すぎるといくらビオラさんでも扱いきれないから少しずつ。
「隼人君ちょっと魔力が多いわ。もう少し少なくできる?」
「えっと、これ、くらいですか?」
これでも大分少なくやっていたつもり。感覚で言えばスポイトで水を移しているイメージだったのだが、今度は一滴ずつ水を移していく。
その感覚でちょうどよかったのかビオラさんは輪っかに流動の付与を施した。
「これで原理的には外に出られるはず。さっさとこんなところ出るわよ!」
気を失っている者たちを抱え結界を出る。輪っか、改め通り抜けフープはちゃんと機能してくれて結界を壊すことなく外にでることができた。
内部に取り残された人たちもいるが、全員を助けている時間は無いのと通り抜けフープがもうすでに限界。いくら強力なスキルを付与できたと言っても付与した物自体はただのフラフープ。強力な結界に耐えられるわけもなく消滅してしまった。
「あのフラフープAランク素材で作ったんだけどね」
フラフープにAランク素材なんてどんな用途を想像して作ったのあいつ。
「とにかく出れたからには奴を追わねばならぬな」
「追うにしてもどこに行ったかわかりませんよ?」
リュートさんが飛び出そうとしたところに珍しくシンラが適切な発言をした。
「時間をいただければ私のクランが探しますわ。こう言ったことは得意ですのよ」
「私直属の密偵にも探らせるわ」
ビオラさんはともかく、西城直属の密偵とか知らないんだけど。
「あら知らないの?会長が密偵として育て上げた恐ろしい奴らがいるのよ」
サリーさん、あなたが恐ろしいとか言っちゃう輩ってどちら様?
「と、とにかく時間が掛かるようなら落ち着いた場所で飯でも食おう。腹が減っては戦は出来ぬって言うしな」
もう考えるのはやめよう。何も聞かなかったことにして俺は料理に集中しよ。
城の裏庭にちょうどいいスペースがあったのでそこに仮設キッチンとテーブルや椅子を出す。
「さて、これだけ人数がいると何を作るか・・・・・・時間もあることだしバーベキューでもするか」
流石にこの人数の定食を作るよりも一気に作って食べれる物の方がいいだろう。西城に作ってもらったバーベキューセットを3台用意する。
「西城悪いんだけど炭の用意を頼めるか?他のメンバーに手伝ってもらって炭を温めておいてくれ」
「それくらいなら問題ないわ」
いくら料理下手な西城でも炭に火を付けるぐらいはできる。さらに他のメンバーもいることだし、大参事になることはないだろう。
その間に食材の用意をする。各種野菜や魚介は下処理をして食べやすい大きさに切っておく。肉はそのまま焼くものとタレに漬けこんであるものを用意するのでお好みで。肝心のタレだが、醤油・はちみつ・酒・ごま油・すりおろしショウガ・すりおろしニンニク・ゴマで作るスタンダードな物と、レモン汁・ごま油・塩・はちみつ・鶏がらスープの素・コショウで作るレモンダレ、合わせ味噌と豆板醤にはちみつを混ぜて作る辛味噌ダレの3種を作る。あとはタレを配って各々好きなように焼いてもらえばいい。
「えっと、どうしてバーベキューコンロから火柱があがってるのかな?」
用意した3台のバーベキューコンロから物凄い勢いで火柱が上がっており、火を付けたであろう西城、シンラ、アモスさんがアタフタしている。
「ち、違うのよ。ちょっと火が付きにくかったから油を掛ければ付きやすくなるかと!」
「し、シルフにお願いして風を起こしたらこんなことに・・・・」
「リュートの旦那に頼んだら口から物凄い火がでてなぁ。アッハッハッハ」
なるほど遠くの空を見て知らんぷりしているそこの御仁まで今回の発端でしたか。
「ちなみに私は面白そうだったから様子見」
ビオラさんは楽しんでるし、コクロは知らぬ存ぜぬ。残りは気を失っているベイカーとアリス、王子もいるか。絶望的な状況だった。
「全くお前らはまともに火も起こせないのか?ヒスイ、頼む」
食材の処理を手伝ってくれていたヒスイは燃え上がる火柱に水弾を一つずつ当てて鎮火させていく。それから水浸しになったバーベキューコンロと炭から水分を吸収して乾かしてくれた後触手を器用に使って火を起こしてくれた。本当にまともに料理作業を手伝ってくれるのはこいつだけ(涙)
「今回の料理は各々好きなように焼いて食べるんだからな」
各テーブルにタレや食材たちを置いて俺もそのままテーブルの一つに付くのだが。
「おい、どうしてみんな俺のテーブルに集まってんだよ!散れ!!各テーブル3,4人に分かれろ」
向こうは向こうで決めてもらうとして俺はさっさと食材を焼き始める。
「ったく、食材に火を通すだけだぞ。どんだけみんなものぐさなんだよ」
「仕方ねーだろ。あいつら極めたもの以外はダメなタイプばっかりだからな。姉御は別として」
コクロはなぜか我が物顔で俺と一緒のテーブルで肉が焼けるのを待っている。
「お前もあっちだろ。なんか滅茶苦茶睨まれてるぞ」
「はぁ!なんで俺があっちなんだよ!!俺の主なんだから俺への食い物を貢ぐのは当然だろう!!」
「コクロちゃ~ん、あんただけ安牌に行かせるなんてするわけないでしょ!」
涙目であの集団に攫われていく聖獣。西城がいるから何もできないんだろうなぁ。
結局話し合いとじゃんけんの末に俺のテーブルにはアモスさん、西城とリュートさんが座っている。ビオラさんとシンラが一緒のテーブルでビオラさんが焼いている。もう一つのテーブルはなんとヒスイとコクロとオケアノス、ヒスイが器用に食材を焼いてコクロとオケアノスの皿に次々と入れている。
「結局焼くメンツは予想通りだな。ようやくビオラさんもやる気になったか」
「私だって隼人君が焼いたお肉食べた~い。でも私以外が焼くと何か起こりそうな予感しかしないのよねぇ」
それは確かだろう。このメンツ本当に生活能力という面に関しては壊滅的だ。
「この肉うま!!これ何の肉だ?」
「レモンダレってさっぱりしてるからいくらでも食べれちゃうわ!」
「野菜もこの味噌ダレと相性が良い。これがメインでも問題ないほどの味わいだ」
「ねぇねぇビオラさん、もっと一気に焼こうよ!!」
「あんまりいっぱい乗せすぎると温度が下がって余計食べるのが遅くなるわよ。まずは焼けた物からゆっくりと味わいましょ」
人チームはおおむね俺とビオラさんが調整して問題ない。従魔チームはヒスイが超スピードで焼いている。どうゆう原理かまるで分らないが網に食材を乗せて数秒で火が通っている。それを自分も含めて順番に皿に乗せていっている。まぁあちらは多少生でも平気で食べれる方々なので問題はないだろう。
こういうバーベキューって自然と焼く側はあんまり食べれないってパターン。だがヒスイは超高速で自分の皿にも置いており触手を使って器用に食べている。ビオラさんはシンラと和気あいあいとした感じで一緒に食べている。俺は大ぐらい3人にひたすら食材を焼くばかりだ・・・・・・・・・何この理不尽!!
俺が担当する3人が腹いっぱいになったところで秘蔵の焼き鳥を自分用に焼く。これぐらい贅沢をしても罰は当たらない。
「あんたまだそんな美味しそうなのを隠してたのね。でも、もう無理」
流石の西城も腹が膨れた後に出されれば食べれまい。そういえば一応人数分用意したと思った焼き鳥が一本余る。
「それは私よ」
ぬるっと現れたサリー。一体どこにいたのか不思議だった。すっかり存在を忘れていた。いや、食材を用意しているときは覚えていたのだが、火柱事件のせいですっかり忘れてしまっていた。
「サリーお前どこにいたんだよ?!」
「あら、ずっと一緒にいたじゃない。お肉が焼ける最高のタイミングで各々のテーブルに移動してたから目に入らなかったのかしら」
なんとサリーは各テーブルを移動して肉だけを食べ続けていたらしい。しかも秘蔵の焼き鳥にまで手を出している。
「俺がいうのもあれだが、もう少し落ち着いて食えばいいのに」
「これが最も効率的にこのメンツから肉を奪える作戦なのよ」
この食欲の亡者たちから効率的に肉を手に入れる計算をして実行していたらしい、本人が良いのであれば何も言うまい。
「それにしても相変わらずこの料理だけは計算外ね。ついつい食べ過ぎちゃう」
小柄にみえて結構食べるんだよこの子。西城やアモスさんたちが腹がいっぱいだと言っているのにいまだに食べ続けているのはサリーと従魔組だけだ。従魔組はそもそも胃袋のでかさが違いすぎる。
「そういえばこの前コクロがレッドドラゴンの肉を持ってきてたな。あれも出せばよかった」
「そうだった!!俺あれ楽しみにしてんだよ。早く出せ!!」
ドラゴン種はこの世界でも結構貴重。食用肉の中では最高ランクの美味しさなのだが、生息数がそもそも少ないのでなかなか手に入らない。おまけにダンジョンでドラゴンを倒しても肉がドロップする確率は結構ひくく、爪や鱗なんかばかりが落ちる。普通の冒険者ならそっちの方がありがたいのだが、俺たちにとっては貴重な肉の方がありがたい。
「ちょっと待てって、ドラゴンの肉はちゃんと下処理しないと肉が固くて食べれないんだよ。ちょっと待ってろ」
コクロがドロップした肉は5キロほどある肉塊だったが、料理しやすいようにブロック肉と薄切りに分けてある。薄切りにした肉に塩と胡椒をふり、肉用ハンマーで叩く。ある程度叩かないとドラゴンの肉は固すぎて嚙み切れない。あとはちみつと醤油、すりおろし玉ねぎとごま油で漬けたものを用意する。はちみつや玉ねぎに含まれるプロテアーゼという成分が肉を柔らかくすると某料理漫画で言っていた。
「叩いた方よりも漬けた方が柔らかいな。叩いた方は噛み応えがあって噛むたびに旨味が出てくる」
正直ドラゴンの肉は現代の高級和牛よりも美味い。レッドドラゴンの肉はそれ自体に味があるのかと錯覚するほど強いスパイスのような旨味がある。正直タレに漬けなくても美味い。だが、醤油やはちみつなんかの最低限の漬けダレで漬けた肉は格別。正直いくらでも食べれると錯覚する。
「これご飯に乗っけて焼き肉丼とかやりたい」
「なら作れ!!」
今回ご飯を出していないのは無限に食べれてしまうから。米と焼き肉のコンボはどんな料理よりも勝ると思っている。この世界で米を発見できていないので、金欠の今アイテムボックスに眠っている米は貴重だ。
「米は貴重なの!目の前の米より未来の米の方が大事!!」
うん名言を生んでしまった。この場で米を食べれないのは残念だが目の前のドラゴン肉を堪能する。
お読みいただきありがとうございます。
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