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王子 VS C級冒険者

本日より5話連続投稿。

期間中ヒスイのお品書きはお休みします。

目の前で突然隼人さんが吹っ飛ばされてしまいました。仮面を付けていて素顔は見えませんでしたけどSランク冒険者の隼人さんも反応できないなんて相当な実力者のようです。ただ、遠くからお話をしている様子から顔見知りなのだと思います。


「あいつも終わったね。なにせゴーゴジャーレッドはSランク冒険者と同等の実力。如何に強いと言えどもあいつには勝てない」


その話が本当なら隼人さんはこちらの援護はできない。元々基本的な付与魔法は掛けてもらっているから通常より攻撃面も防御面も飛躍的に上がっている。ただこれまではどんな状況でも助けてくれる安心感があったのにそれが無い、それだけで一気に緊張がはしる。


「それなら俺たちはあんたの相手をすればいいんだな」


隣で剣を構えているベイカーさんは常に警戒を怠ってはいなかった。こういうところは経験の差を感じてしまう。同じCランク冒険者といえども私には圧倒的に経験が足りない。


「あの付与魔導士エンチャンターがいなければお前らなぞ僕の相手にはならないぞ!」


ハッシュ王子は金色のフルアーマーに身の丈ほどの大剣を持っている。あれほどの大剣を軽々操れるということは相当な実力者だと思っていいかもしれない。ベイカーさんが切りかかるが細身のショートソードと大剣では物量が違いすぎる。いくら強化の付与を施された剣でもあの大剣相手では逆に折られかねない。


「四種の矢よ、天地を貫く閃光となれ。ベイカーさん、下がって!!」


得意のエレメントアローで応戦してみる。相手の実力がはっきりしない以上王子相手だからって手加減はできない。謀反を働いているのは相手の王子なので思いっきり矢を放つ。


「そんな矢は効かーん!!」


だが4種の属性を秘めた矢は金色の鎧に全て阻まれてしまった。


「あの鎧4種の属性全てに耐性があるようです」


「ああ、それに鎧自体の防御力も相当だ。国宝でも持ち出したんじゃねーだろーな」


それを聞いて想像できてしまった。下の階で戦った騎士たち、彼らが持っていた武器や防具も相当高い性能のものだった。隼人さんが色々サポートしてくれたおかげで相手の装備に後れを取ることがなかった。だが、今隼人さんはこちらをサポートできるほどの余裕はない。加えてあの装備はおそらく凛さんお手製のものだろう。彼女が作る装備は高性能で有名だ。あんな趣味の悪いデザインをするのか疑問だが、国宝級の装備だって作れる実力がある。


「ああ、王子様と勇者様が私を掛けて争ってくれている。私ってなんて罪な女なのかしら」


当の本人は自分の世界に入ってしまっている。本当にこの人はなにがしたいのだろう?


「アリス、俺がもう一回突っ込んで時間を稼ぐ。俺たち2人だとあの防御を突破するならお前の魔法しかない」


確かに直接攻撃ではベイカーさんでも私でも無理そう。残るはあの鎧の防御を突破するほどの魔法だが、私の奥の手は時間が掛かりすぎる。


「1分ほど掛かりますが行けそうですか?」


「心配するな。あいつ剣の腕はそこまでじゃない、剣筋さえ見切れば躱すのは難しくない」


そう言い残すとベイカーさんはハッシュ王子に向かって行った。正直ベイカーさんでもハッシュ王子の攻撃を1分間耐えるのは難しい。でも私のやることは変わらない、極限まで魔力を絞り出すことだけだ。


「天地に降りし古の業火」


詠唱は34節。私には詠唱破棄も高速詠唱もできない。覚えた詠唱を繰り返し、魔力を込める。そういえば隼人さんが言っていた、魔法はイメージなのだと。何度も練習して魔法の発動は目にしている。その結果を強くイメージする。


「理に従い、我が前の敵を焼き尽くせ」


気付けば詠唱の3分の1もカットしていた。本来ならこんな短い詠唱では発動などしないのだが、手に感じる魔力は間違いなく発動する予兆を感じる。これなら行ける!!


「エンシェントノヴァ!」


発動した魔法はイメージ通り、ドラゴンすらも焼き尽くす古の炎だ。私の魔力の半分を使用するこの魔法はお父様から教わった私の奥の手。しかしこの奥の手でも鎧の防御を破ることは出来なかった。


「こ、怖かったが、さすが黄金の鎧!これほどの魔法すらも防御してみせるとは!!」


私にとってはもう打つ手はないのだが、ベイカーさんの奥の手が残っている。


「紅蓮の帝王、我が声に答えよ。我が前に立ちはだかる者をなぎ倒す力をここに」


ベイカーさんの奥の手である“魔法武装”しかも彼の武装は炎の力を吸収する。私が放ったエンシェントノヴァの魔力すら自身の力と変えてしまう。


「これで最後だ!!」


巨大な炎の大剣がハッシュ王子の剣とぶつかる。巨大な衝撃波と共に王子の剣が砕け、炎の大剣が王子の鎧を貫いた。


「ば、バカな!!この鎧が負けるなんて」


鎧が貫かれた瞬間黄金の鎧ははじけ飛び沢山のアクセサリーを付けたハッシュ王子が無傷で飛び出してきた。


「え、僕、なんとも、ない?」


おそらく鎧が身代わりの機能でも持っていたのだろう。鎧が全損する替わりに装備者を守るとかそんな能力。だがあの身に着けいてるアクセサリーが全て自己強化のアクセサリーならどんだけ盛っていたのだろう。


「勝負は俺たちの勝ちだ。誘拐した商会の会長さんを返してもらおう」


「キャーーーーー!!ベイカー君かっこいい!!!」


せっかくベイカーさんがかっこよくきめてくれたのに後ろで応援をしている凛さんのせいで台無しだ。


「こ、こんな勝負認めない!!2対1なんて卑怯だ!!!」


この王子様は何を言っているのだろう。戦いに卑怯も何もない、これが騎士の決闘やルールがしっかり定められている大会ならまだしも、命のやり取りをしているのに卑怯と言われるのはどうかと思う。


「それじゃあこちらも言わせてもらうが、あんたが体中に付けている強化アクセサリーは卑怯じゃないのか?どんな手段でも使っているという点では俺たちとなんら変わりないと思うが」


「っぐ!ぼ、僕は王子だからなんでも許されるんだ!!!」


「話にならんな」


同じ上流階級として恥ずかしい!!貴族の中には平民を蔑む輩もいるようですが、それは自分の貴族という名にプライドを持っているため、なのにこの我儘王子にはプライドどころか常識すら無いとみえる。


「ベイカーさんこれ以上は時間無駄です。王子を拘束して凛さんを保護して帰りましょう」


「ぼ、僕を馬鹿にするのもいい加減にしろ!!」


怒りに目を血走らせている王子は右手中指にはめていた指輪を投げ捨てる。その瞬間王子が装備している強化のアクセサリーたちから莫大な魔力が流れ始めた。


「ハハハハハ!!!もう知らない、お前らなんか木端微塵になっちゃえばいいんだ!!」


魔力は王子を中心に渦巻き近づくことすらできない。このままでは行き場をなくした魔力が暴走して大爆発が起こりかねない。


「ヒスイ!!」


万事休すと思ったその時頼りになる声が聞こえた。


緑色のスライムが私たちと王子の間にちょこんと着地すると私たちを包むように壁を作ってくれた。


「ヒスイその二人を守っててくれ」


「隼人さん!!」


「二人とも無事だな。見るからに魔力の暴走って感じだが、暴走しているのは中心にいる王子の魔力か?!」


「いいえ、おそらく彼が付けていた膨大な強化アクセサリーの暴走だと思います。暴走する直前に装備していた指輪を外してましたので、おそらくそれが強力なアクセサリーを使うためのアイテムだったのかと」


あれだけの強化アクセサリーを付けてその力が相互干渉を起こさないわけがない、おそらく凛さんが作った特殊な指輪だったのだろう、あの指輪で相互干渉を防いでアクセサリーを使えるようにしていたに違いない。


「なんでそれをわざわざ外して自滅するような真似するんだよ!!馬鹿なの」


「それより隼人さんあの暴走抑えられますか?」


「正直難しいな。アクセサリーを壊したところで溢れ出ている魔力をどうにかしないと何が起こるか分からない。かといってここまで膨大な魔力を吹き飛ばすほどの魔法は俺には使えない」


おそらくここにいるメンバーを守ることは出来るだろうが、王子やこの城に留まっている人たちはひとたまりもないだろう。


「それなら僕の出番ですね!!」


さっきまで隼人さんと戦っていた赤い仮面を付けた人が堂々と隼人さんの横に立つ。


「あ、あの、その方ってさっきまで戦ってた」


「今は気にするな。それよりあれどうにかできるのか?」


「中心にいるあの人の体に触れさえすれば魔力を無効化させることは出来るだろうけど、僕じゃあそこに近づけない。魔力の渦が大きすぎてそれ自体の無力化は無理、おまけに魔力が起こした突風で中心どころかこれ以上進んだら吹き飛ばされる。拳圧で吹き飛ばすこともできるけどこの城半壊させちゃうからねぇ」


最後ぽろっと恐ろしいことを言っている。この人はSランク冒険者相当の腕前、隼人さんと互角に戦っていたことからその言葉も嘘ではないだろう。


「だよなぁ。俺もこの魔力を吹き飛ばそうとすると城を完全破壊しかない」


どうやら二人とも解決策はあるのだが、被害が大きくなるだけのようだ。


「こんなことになると思ったわよ」


いつの間にか隼人さんの背中から眼鏡を掛けた小柄な少女が顔を出した。


「2人ともさっき言った通り隼人さんは物理障壁と魔法障壁の準備。シン」


「ゴーゴジャーレッド!!」


「・・・・・・レッドは大技の準備をして」


少女の指示通り隼人さんは何重もの魔力障壁と物理障壁を仮面の男性、ゴーゴジャーレッドさんの前に展開していく。


「カウント10で発射。隼人さん威力を殺しきれないだろうからもう10枚障壁を展開」


「これでも結構きついんだけど」


隼人さんは要望通り物理と魔力障壁を10枚ずつ追加で展開した。ゴーゴジャーレッドさんは腰を落として拳に物凄いエネルギーを溜めている。


「3,2,1発射!!」


「餓狼の型奥伝がろうのかたおうでん破砕哮はさいこう!!」


拳に込められたエネルギーが狼の形となって王子に向かって放たれた。隼人さんが展開した障壁はガラスが砕ける音と共にどんどん壊されている。だが狼も障壁を壊すごとに少しづつ小さくなっている。数十メートルはあった狼は数メートルにまで小さくなり隼人さんが最後に展開していた障壁を壊す。そのまま王子の周りを渦巻いている魔力をいっきに吹き飛ばした。中央にいた王子も一緒に吹き飛ばされたが、障壁で威力が弱まっていたのか大きな傷はなさそうだ。


「ほい、これでお終い」


いつの間にか王子のそばに移動していたゴーゴジャーレッドさんは王子に触れると装備していたアクセサリーが次々と壊れていった。


どうにか城を破壊を免れることができた。




お読みいただきありがとうございます。


少しでも面白かった、続きが気になる方は高評価コメントよろしくお願いします。

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