表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
85/116

全員集合

「二人とも怪我とかなかったか?」


あれだけの能力強化のアクセサリーを付けた相手、しかも事前に着ていた鎧や剣も相当なランクの代物だっただろう。おそらく西城バカが与えたものだろう。


「はい、大丈夫です」


「俺も問題ない」


幸いにも二人とも細々としたかすり傷はあるものの酷い怪我は見当たらない。


「ところでなんであいつは倒れてるんだ?」


ベイカーの足元。ヒスイがベット替わりになって気絶している西城を乗せている。


「よく分からん。あんたらが物凄い攻撃をすると思って咄嗟にこの人を守ったんだけど」


理解した、おそらくベイカーは善意で西城を守ろうとしたのだろう。お姫様抱っこやら自分を盾にして守るために抱きしめたとかそういったことをされてオーバーヒートしたのだろう。


「凛さんは大丈夫なんですか?」


「問題ない。見てみろこの幸せそうな顔を、そっとしといてやろうぜ」


気絶している西城の表情は天にも昇る気持ちだったのだろう緩みきっている。


「ところでなんでサリーまでここにいるんだ?シンラは何となく西城の連れて来られたのは分かるが」


ずっと背負っていた少女。彼女はアフロディーテ商会の頭脳、会計監査を仕切る幹部の一人にして天才だ。


「もちろん会長に言われて付いてきたのよ。あんな状態の会長を一人にしたらどうなっていたことか。実際問題あの王子バカにあれだけの装備を与えておいて制御の指輪一つしか渡さないとか頭沸いてんのって思ったわ」


「それならこうなる前に西城を止めてくれれば」


「私が止めたところであの人は強行したでしょ。せめて私の目が届く範囲ならどうにかできると思ったのよ」


その判断は正しい。基本の西城は高スペックで問題ないのだが、こと自身の恋に関する事となるとポンコツ具合は半端ない。


「それにこうなるように仕組んだのは半分別人だもの。対策は32通り考えたけどこれが一番勝率高かったから。ねぇ、この部屋を監視してるのは分かってるからさっさと出てきてくれないかしら」


サリーの声が響く。数秒後シンラの攻撃で半壊したテラスから3人のフードを被った人物が現れる。


「流石はサリーさん。凛会長と一緒だと厄介だと思って離しておいたのにそれすらも読まれてましたね」


聞き覚えのある声、忘れるはずがなかった。サウスランドを滅ぼした張本人。コーネリア・ヴァン・サウスランドだった。


「隼人さんもシンラさんもお久しぶりです。隼人さんとその他だけご招待するつもりだったのですが、まさかシンラさんまでご招待しているとは驚きました」


「あなたの狙いは隼人さん。彼一人ならあなたたち3人でなら勝てると思ってたんでしょ。ベイカーさんやアリスさんはどう考えても足手まといになって最悪人質としても使えるから」


「感服です。さすが未来を見通すなんて呼ばれるだけはありますのね」


「未来を・・・・」


アリスが自分と同じ能力だと思っているようで驚いているが、彼女の能力は未来予知ではない。


「私にそんな能力なんてないわよ。私はただ計算と観察、情報をまとめた結果を提示しているだけよ」


サリーのスキル“演算”は文字通り計算を比較的早くできるだけのスキル。だが天才である彼女に掛かれば相手の行動パターンをシミュレートして、最も起こりうる可能性の高い確率を導き出すことができるらしい。


「それが当たりすぎて未来予知とまで言われているのだから、それは未来予知と変わりないと思いますけどね。さて、私の目的は先ほどサリーさんのおっしゃったように隼人さん含め邪魔な方々を始末すること。シンラさんがいらっしゃるのは想定外ですが、凛さんが目を覚ます前に片付けます」


しかしここはサウスランドではない。サウスランドならオスカー様と同じようなスキル持ちの彼女が有利だが、ここは別地方で彼女は特殊な力を使うことはできない。


「さっきから聞いてれば君たちで俺を倒せるみたいなこと言ってるけど、消耗しているとはいえ土地の魔力を使えない君には負けないよ」


これは自惚れでもなんでもない。演技だったとはいえ仮にも手合わせをしたことがある以上彼女の実力はある程度理解している。もちろん本気だったとは思えないがSランク相当の実力があるとはとても思えない。


「うっふふ、確かに私が最も力を発揮できるのはサウスランドの土地ですが、あなたたちを倒す手立てはいくらでもありますよ。さぁ女神ミスラよ、その御身の力を我らに貸し与えた前!」


彼女の隣に立つフードの人物たちが突然物凄い魔力を放出し始めた。片方はホワイトタイガーを思わせる毛並みに尻尾、俺の腰ぐらいある腕には鋭い爪が現れる。ホワイトタイガーの獣人と言われればその通りなのだが、体は3メートルを超え、目の焦点は合っていない。さらに反対側に立つ男は背中から燃えるような赤い羽根を羽ばたかせ、鳥のような鋭い爪をもつ足、これまたハーピーかと思う姿だがこちらも物凄い魔力な上に獣人と同じようにうつろな目をしている。


「これも出来損ないではあるのだけど、ミスラが従える四獣の力を秘めてるのよ。戦力外の人たちを守りながらこの二人に勝てるかしら?」


確かにこいつらが四獣の力の一片でも持っているのであれば脅威だ。不完全のキャッスルタートルですら俺の奥の手を使わないと倒せなかったかもしれないのに、それが今度は2体。もちろん太陽光レーザーなんて用意しているわけもないし、そもそも許可がなければ使うことすらできない。


「何も問題はないわね」


「へー、そこまでの自信があるんだ。でもあなた含めここにいる人でまともに相手をできるのは隼人さんとシンラさんだけ、戦力外のあたなたたちを守りながらこの二人に勝つことは不可能よ。それともあなたが導き出した答えにはそんな不可能を可能にできるとでもいうのかしら?」


確かに正面にいる2体はSランク冒険者でも手間取るほどの強敵だ。倒されない自信はあるが、それは万全の状態で後先考えなければの話。多少回復はしているとはいえシンラと一戦交えた後だと厳しいものがある、それはシンラも同じだろう。


「なんだか騒がしいと思えば随分楽しそうなことしてるじゃねーか!」


そういえばここはウエストランド、確かここの土地を管轄している聖獣は確か。


「この土地でこのフェンリル様に喧嘩売ろうなんてどんな奴かと思えば、神格落とした婆の信者かよ」


コクロさん、せっかくかっこよく出て来てくれたのになんだかチンピラみたいな喧嘩売ってますよ。


「あなたがフェンリル?うっふふ、確かにすごい魔力を秘めているようだけど、聖獣フェンリルがこんなところにいるわけがない」


「確かに俺たち聖獣は守護する土地から離れることは基本できない。だがな俺は片割れ、本拠地はもう一人がちゃんと留守番しててくれるから問題ねーんだよ」


聖獣が守護する土地、つまりフェンリルにとっては魔の森から離れられない。だがハクロとコクロは2体でフェンリル。片方ならば森から出ることはできる。度々ハクロとコクロを入れ替えていたのはこれが原因だ。


「もちろんこれだけじゃないわよ」


サリーの合図でさらに2人、大柄な男が階段から駆け上がってきた。


「リュートさんにアモスさん!!」


Sランクのリュートさんに聖獣の加護を有しているオケアノスを従えるAランクのアモスさん。


「私も忘れないでね」


いつの間にかコーネリアの首元に刃物を突き付けているSランク暗殺者のビオラさんまでいらっしゃった。


「Sランク4人にAランク、さらに聖獣、今回は逆にあなたを捉えさせてもらうわ」


俺が想定する中で最高戦力が揃ってしまった。いくら四獣の2体を従えているとはいえ、ここまでの戦力には叶うまい。


「うっふふ、これこそ私が望んだ最高の場面。ユーディリア最高戦力がここに集まってくれた」


「おかしな真似はしないことね。この距離で私が殺せないなんてありえない」


「もちろんビオラさんの力は十分承知してます。でもいまだに私を殺さないのは私を生かす理由があるということ。でなければあなたの性格からして最初の一撃で私を殺しているはずですもの」


「本当によく回る頭ですね。確かに依頼主からの要望はあなたの生け捕り、ですが必要とあれば殺すもやむなしと言われていますよ」


「なら殺される前にお仕事を片付けておきましょう」


コーネリアの手から小さなガラス玉が地面に落ちて割れると辺り一面の景色が変わる。薄紫色の煙に包まれたかと思うと透明な魔力障壁がドーム型になり城を包み込んだ。


「これって封印結界?!」


「内側から壊すのが不可能と言われてるあれか?でもあれって30人規模の大魔術だろ」


「封印石って呼ばれる特殊な石を使えば発動は可能だと何かの文献で読んだ気はしますけど、製法はすでに失われたもののはず」


サリーで知らないのであればそれは確かに失われた技術なのだろう。


「失われたということは存在していたことを意味します。なら復元できてもおかしくはないと思いませんか?」


ビオラさんに捕まっていたはずのコーネリアがいつの間にか結界の外、空中に佇んでいる。


「まさか厄介な人たち全員を結界内におびき出せるとは思ってもみませんでした!!サリーさんが有能なことは分かっていましたが私の予想を大きく上回っていました」


勝ち誇った態度をしているコーネリアだがサリーの表情はなにも変わらない。


「ねぇ、この結界ってあなたの命と連動しているのよね。だったらこの結界を壊したらあなたは死ぬのかしら?」


「残念だけどこの封印結界の触媒は私の命ではないわ。この国にいる数千人の民の命よ」


「バカな!その封印結界の触媒には膨大な魔力が必要だ。民たち全員を触媒にでもしない限り・・・・・まさか!!」


「ええ、輸血のための採血お願いしま~す。って言ったらいーっぱい集まったわよ。触媒の血がね」


魔法道具の触媒として一番ポピュラーなのは触媒者の一部。髪、血、骨など特に多いのは採取も簡単で大気中の魔力に汚染されることのない体液、つまり血だ。


「数千人の血を固めてそれ自体を触媒としたのね。術自体の構築はあなたでもその触媒を使えば代償を支払うのは触媒の持ち主。つまりこれを壊すと」


「だーい正解!!血を供給してくれた心優しい民たちが死んじゃうわけ。そもそもこの結界自体壊すことはかなり難しいんだけど、あなたたちを甘く見るつもりはない」


確かに今いるメンツならこの封印結界も破れる可能性がある。


「だから精々この結界が切れるまで大人しくしていてちょうだい。流石に触媒にした人間たちは一般人だからそこまで結界が長く持たないの。それじゃあね」


封印の外にいるコーネリアは手をひらひらとさせながら城を降りていってしまった。


「サリーどうする?!このままじゃあ」


「待って、今考えている!正規の手順で組まれている術なら事象改変でいくらでも書き換えは可能。つまりビオラさんならどうにかできるけど」


「無理ね、圧倒的に魔力が足りない。この規模の結界だと全ての改変に高ランクの魔導士の魔力がざっと100人ぐらい必要よ。いくら大量の魔力を保有する隼人君でもそれは無理」


確かに俺の総魔力量だと高ランク魔導士50人分ほど、あと半分も足りない。


「それに万が一魔力を集められたとしてもそんな膨大な魔力私が扱いきれない」


「なら一部ならどうかしら?」


いつの間にか起き上がって自信満々の表情をしてる西城だ。


「西城ようやくお目覚めか?」


「本当なら王子様のキッスで起きたかったんだけど、この二人がこんな状態ですもの」


先ほどと打って変わってベイカーとアリスが倒れている。


「流石にこれだけの魔力濃度の高い結界内だと倒れちゃうわよね」


高い魔力は人に有害となる。魔力抵抗の強い人や特殊な装備で守られている者以外はこの空間は毒とかわりない。


「円」


急いで2人を包むように魔力を中和する魔法を展開する。


「クリアサークルの応用だけど、これで大丈夫だろう。コクロ、すまんがこの二人のこと頼めるか」


「せっかく来たのに御守かよ」


「コークーロー、ベイカー君に傷の一つでも付けたらどうなるか分かってるわよね」


「全力で守るぜ!!」


だからなんで主である俺の言うことじゃなくて西城の言うこと聞くんだよ。


ふとコクロの隣を見るとヒスイが白目を剥いて倒れて倒れている王子を一生懸命浄化の効果を持つ円に引き入れている。


「ヒスイもありがとな。念のためコクロと一緒にこいつらを守ってくれ」


ヒスイは任せろを言わんばかりにサムズアップしている。


結界が発動したときは城全体を包んでいたが、いつの間にか屋上を包むのみとなっている。これなら下の階にいる人たちは大丈夫だろう。


「それで結界の一部だけをビオラさんの力で改変することは可能なのか?」


俺が非戦闘員たちの守りを固めている間作戦会議が続いていた。


「出来る出来ないで言え出来るけど、周りの結界がすぐに修復をしてしまうわ。シンラ君ぐらいのスピードだったらなんとか出れるかもしれないけど、そう何度も使える手じゃないわ」


「だからこそサリーと私がいるのよ」


この自信に満ちた西城の表情。碌なことが起こった試しがない。


「要は一瞬空いた隙間を維持するだけの何かがあればいいんでしょ。なら答えは一つ」


西城がマジックバックから取り出したのはフラフープだった。


「中条、通り抜けフープ作るわよ!!」



お読みいただきありがとうございます。


少しでも面白かった、続きが気になる方は高評価コメントよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ