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聖獣リヴァイアサン 後編

ヒスイのお品書き


ヒスイ「お腹いっぱい!!実は後片付けは一人でやってました!


・シーキャット


食器も調理器具も体の中で丸洗いOK!!」

結局あれから5回は作り直しをしてようやく全員が満足することができた。肉類は魔の森で採った分がアイテムボックスにあるので足りたが、魚が足りず蒼喗様がどんどん追加してくれた。おかげで食材が大量に余ってそれは快く譲ってくれた。ただ取ってくるものの中にエビやらイカやらタコやら今回使用しなかったものもいくつかあったので、それは別の機会に使おうとアイテムボックスにしまう。


「満足じゃ。やはり人が作る物は美味じゃのうぉ」


蒼喗様もかなり満足してくれたようで今にも寝そうだ。


「蒼喗様そういえばサウスランドのことを食事中にお話しするはずだったと思うんですけど」


「おお!!そうじゃったな。食事があまりにも美味くて忘れておったわい」


おい!!っといつもなら蒼喗様にツッコむハクトだが自分自身も食事に夢中になっていて忘れていたのだろう、気配を消して静かにしている。


「それではサウスランドの帝都を消滅させた件を話してもらおうかのぉ」


この場には当事者が多かったため特に隠すようなことはない。アモスさんだけは今回の騒動に関わりがないということで一旦話合いから外れてもらった。


「ちょっと神殿の周りでも探検してくるわ」


ちょっと申し訳なく思ったが本人が楽しそうに探検しに行くもんだから罪悪感はあまり感じずにすんだ。ってか俺もどちらかといえばアモスさんと一緒に探検しに行きたかった。以前来た時は蒼喗様にご挨拶してすぐに帰ったから、この神殿周りはちょっと気になるんだよなぁ。


「そもそもの原因はサウスランド国で人造魔導士が造られているという情報からでして」


それからロビンとハイネのこと。2人の両親ロイドさんとアマンダさんのこと。不死王ワイトキングと白衣の男、それに黒幕である王女コーネリアのこと。召喚されたキャッスルタートルのことを順を追って話す。俺は説明がそこまで上手いわけではないので、ところどころハイネやロビンが説明を加えてくれた。ハイネはともかくロビンが意外と説明が上手いことに驚いた。


「なるほどのぉ。あそこの王女ということはなかなか面倒なことになりそうじゃのうぉ。あそこは代々男よりも女の方が力も知恵も優秀な輩が多いからのぉ。そういう事なら儂がなにかすることはないじゃろう。お前さんの単なる気まぐれなら尻ぬぐい程度はしようと思っておったが、人間が仕掛けたのなら自業自得じゃ」


俺は気まぐれで国一つを滅ぼそうとしているように見えるのだろうか。それはとても心外です!


「まぁ儂のことも考えてハクトもコクロもサウスランドには入っていないようじゃし、他の聖獣たちは何も言わんじゃろ。それに隼人君には色々と世話になってるしの、特に東の奴はお前さんを偉く気に入ってるしの」


東を守護するのはフェニックス、空を司る霊鳥であり。聖獣の中で一番過激派だ。あの方に気に入られて「俺とも契約しよう」と言われたときはハクトとコクロが激おこだった。


「まぁカーバンクル様は何も言いませんよね、あの方が一番自由人ですし。フェニックス様には丁重にご報告の言葉だけ送らせていただきます」


直接出向くとまたハクトとコクロと喧嘩になりかねないので、お手紙か何かでご報告させてもらおう。


「そうしてやっておくれ。さて、これで儂の用事は終わったが、そういえば例の件はどうなっておるかのぉ」


例の件、以前蒼喗様にお願いされたことがあるのだがなかなかちょうどいい人物が見つからない。


「今日一緒に来た者たちに適任者がいればと思ったんですけど、我々に全く近づいてこない辺りダメだったみたいですね」


蒼喗様の依頼は蒼喗様の加護を与えた魔獣の使い手を探すこと。魔獣と契約できるのは魔獣使いだけではない。魔獣使いは魔獣や獣に好かれる体質の者がなる職業であり、特殊なスキルなどは必要ない。お互いが認め合い合意するのであれば契約自体はそれほど難しいものではない。しかし、人と魔獣では相性が合う方が珍しい。ヒスイとは偶然相性が良かったのか自然と契約をしてしまったが、そんなことは稀だという。人と魔獣とでは価値観も違うため、なかなか契約まで至る人は少ないのだと聞いた。


「そっちの2人の童は好かれやすいスキルを持っているようじゃが、おそらくスキルが強すぎるのじゃな」


ロビンもハイネも霊獣の加護という上位の魔獣に好かれやすい加護を持っている。しかし霊獣とは魔獣の中でも上位に当たる位なのだが、蒼喗様が加護を与えた魔獣は生まれて3年のまだまだ弱い部類なのだという。上位の位に好かれるからといって下位の種族に好かれるとは限らない。むしろ萎縮してしまって近づきがたくなっている可能性もあるのだという。実際フェンリルを連れてる俺にも近づかないようだし、精霊を使役しているシンラにもおびえて近づいてこないようだ。


「じゃあここにいる人たちはダメってことですか」


「そうじゃのうぉ。なるべく早くあやつの相手を見つけてやらねば儂の加護に潰されてしまうやもしれんしのぉ」


そもそもなぜ契約者を探しているのかというと、蒼喗様が寝ぼけてその辺にいた魔獣に加護を与えてしまったのだという。リヴァイアサンの加護は強力すぎて生まれて数年の魔獣では体が持たないらしい。そこで人と契約して従魔になればスキルの負担も軽減できるので、契約者を探しているのだという。人の寿命ぐらいの年月が経てば加護に負けないくらいには成長できるだろうとのこと。


「元々臆病な性格のうえに、希少な儂の加護持ちじゃかならのぉ。下手な輩には預けられんから隼人君にいい子がいないか探してもらっておるんじゃ」


実際店に来た冒険者やギルドで会う人たちを誘ってみようと思うのだが、リヴァイアサンの加護なんてある程度の実力を兼ね備えた人じゃないと扱えない。しかも悪用しないような人で、魔獣を大切にしてくれるような人、海に住む魔獣なので水属性の適正持ち、おまけに魔獣に好かれやすい人なんてなかなか見つからない。


「申し訳ありません蒼喗様、引き続き探してみます」


「うむ、頼んだぞ。儂の方でも探したのはやまやまなんじゃが人と関わりがない儂らでは難しいんじゃよ」


そりゃいきなりリヴァイアサンと遭遇しようものなら人生終わったと思うよね。


「それじゃあ報告も済みましたしお暇いたしましょう。アモス様を呼んでまいりますわ」


ハクトが神殿を探索してるアモスさんを探しに行ってくれた。そういえばアモスさんはどうなんだろう?水の適正があるか分からないけど人柄的には申し分ない。でも魔物との適正があるならすでに従魔と契約しているだろう。あんな優良物件が未だにフリーってことは適正はないんだろうな。残念。


アモスさんを待つ間蒼喗様がお土産に魚介類をいっぱい持たせてくれた。その代わりたまにでいいので料理を届けてほしいと言っている。ハクトかコクロならここまで転移できるだろうから2匹に相談してくれと伝えておいた。


「主様!!大変ですわ!!!」


いきなりハクトが叫びながら戻ってくるので身構えたが隣で歩いているアモスさんは特に変わった表情をしていない。


「どうしたんよ。別に変わったことはないように思うけど」


魔力感知で確認しても敵らしき者はいない。そもそも聖獣の前で不敬をする者なんていないだろう。


「あ、アモス様に不届き者が!!!」


アモスさん自身も不思議そうな顔をしているが首元で何かが動いているように見える。


「もしかしてこいつのことか?」


アモスさんの首元(正確には服から)顔を出したのは青い毛並みの子猫だった。


「これってシーキャットですか!臆病な魔獣で滅多に人前に現れないって聞きましたけど」


シンラが言うのであればかなり希少な魔獣なのだろう。修行の旅で各地を巡っており色々な魔獣にも出くわしているみたいだし。


「ああ、散策してたときに見つけてな。飯の匂いにでもしたのか懐かれちまってな」


相変わらずさわやかな笑顔で言っているアモスさんの顔をじっと見つめているシーキャット。少々ほほが赤くなっているところをみると、これではまるで・・・・・


「そうですわ!この猫アモス様に恋してしまったようなんですの!!正真正銘の泥棒猫ですわ!」


確かに猫には猫なのだが、魔獣と人とでは恋愛とかそんなことあるわけない。


「そもそもアモスさんは誰とも付き合ってないだろ。確かに男女問わず人気あるけど、みんなのアモスさんって協定まで結ばれて抜け駆けしようものなら粛清が待ってるらしいし」


ユーディリアではアモスファンクラブという非公開ファンクラブも存在しており、暗黙のルールとして「アモスさんはみんなのもの」というのがあるらしい。アモスさんに告白などしようものなら会員たちから粛清されるらしく、アモスさんは未だに彼女がいない。(ちなみにファンクラブの会員の半分は男性)


「そのルールを破ってこの猫はアモス様と従魔の契約までしてしまったのです!」


「それって駄目なことなんですか?さっきの話だとお互いが納得すれば従魔契約はそれほど難しいものじゃないと聞きましたけど」


「ハイネ様、この場合従魔側に下心がありすぎるのが問題なのです。この雄猫あわよくば人化の術を覚えてアモス様と番になるなんてことも考えてますのよ!!」


「ちょっと待て!そいつ雄なの?ケモ耳少年とアモスさんのカップリングもありなんじゃ」


「私はそんなのは認めませんわ!!別種族ということでしたらいいのですが、魔獣と人ではくくりが違いすぎます!!そんなものに真の愛はありません!」


俺的には妄想が広がって大いに喜ばしいところなんだけど、ハクトにはダメらしい。


「そもそも私蒼喗様の加護持ちがこんな尻軽猫とは知りませんでした!アモス様ほどの優良物件をこんな尻軽猫に委ねるなど言語道断ですわ!!」


かなりご乱心のハクトちゃん。でもまさか蒼喗様の加護持ちがアモスさんを選んじゃったのは予想外。


「あれ?でもアモスさんって水の適正ってありましたっけ?」


「おお、特別強いってわけじゃないが適正はあるぞ。最も土のが適正値が高いからそっちメインに使ってるけどな」


「それなら蒼喗様の依頼も一件落着ってことでいいじゃないか。アモスさんも従魔契約を受け入れたってことはその子の面倒は見てくれるってことだろ」


「ああ、俺としても相棒がいるのは心強いし。どうやら珍しいスキルも持ってるってことみたいだから問題はない」


その珍しいスキルってのがリヴァイアサンの加護だとは知らないんだろうな。


「あの、アモスさんその珍しい加護ってリヴァイアサンの加護なんだけど」


「え?!マジ!!」


流石のアモスさんもこれには驚きで固まってしまった。聖獣の加護は従魔契約でアモスさんにもその影響がある。直接蒼喗様と契約したわけではないので全ての力を引き出せるわけではないのだが、聖獣の加護ともなれば生半可な加護よりも強力な力が使えるだろう。


「これは愉快じゃ。そこの青年、アモスと言うたか。儂から直接加護をやれないのは残念じゃが誠実な男のようじゃし、そやつが認めたならば全く持って問題はなかろう」


蒼喗様も珍しく上機嫌。おいしい料理が食べられて当初の問題も片付いたとなれば嬉しいのは当然か。


「私は認めませんわよ!アモス様は他の殿方とのカップリングが最高でしたのにこの猫がいては邪魔されかねませんわ。何より主様との絡みが減って」


「はい、ハクトそこまで!!」


これ以上口走ると俺の教育が無茶苦茶悪い様になってしまう。何より俺とアモスさんのカップリングは無だとあれほど言っているでしょうが!


「じゃが契約が中途半端じゃのう。おそらくハクトが邪魔しておるのじゃろう。隼人君、すまんがハクトとコクロを入れ替えて邪魔できぬようにしてもらえんかのぅ」


こいつそんなことしてたのか!もちろん承諾して抗議しているハクトを無視してハクトを家に戻して代わりにコクロを召喚する。


「感覚共有で見てたけどよぉ。あいつ本当にどうしようもねーな。半身として情けねーよ」


いつもは冷静で礼儀正しいハクトちゃん。ちょっと沼にはまりすぎてるね。でも仕方ない腐った沼に足を踏み入れたら最後落ちるのは一瞬なのだから。


「そんなことより、おいジジイ!主の料理をたらふく食いやがって、こちとら最近は生肉しか食ってねーのに、俺はそっちの方が許せねー!!」


うちの可愛い子たちは欲望に忠実なところは本当に変わらない。


「まぁまぁ、後でコクロにも海の幸たっぷりの定食を作ってやるから落ち着けって。でも家を出るとき1か月分の飯を作って置いといたはずだけど」


俺たちがサウスランドに旅立つ前コクロが飯を作り置きしていけというので、滞在期間より多い1か月(家を空ける期間は予定では3週間ぐらい)分の料理を置いてきたはず。もちろん状態維持させる付与を全てに施した。結構疲れた覚えがある。


「いや、それは・・・・」


急に威勢がなくなってしまった。何か後ろ暗いことがあるのだろう。


「とにかく一度家に戻ろう、いつまでもここにいるわけにもいかないし。それでは蒼喗様我々は戻ります」


「うむ、いつでも遊びにきていいからのぉ」


本当に聖獣にしてはフランクでマイペースな方だ。コクロに転移魔法陣を展開してもらい無事家へと帰ることができた。



お読みいただきありがとうございます。


少しでも面白かった、続きが気になる方は高評価コメントよろしくお願いします。

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