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聖国のギルド

聖国はノルドー領の隣にあるため、移動は半日ほどで済んだ。聖国は大きな門からぐるりと城壁が立ち並び、奥に見える巨大な岩壁に創造神ロキを模した象が彫られている。


「あれが聖国名物の神の岩壁か。ここからでもかなりの大きさだよな」


聖国は一つの大きな町に住人たちが住む独立国家。町の奥にはこれまたでかい教会がそびえたっている。


「それにしても厄介な結界を張っておるものじゃのぉ」


足元に小さなキツネが2本の尻尾をゆらゆらと揺らしながら怪訝そうな顔をしている。九尾のトウカは体の大きさをある程度自由に変えれるらしい、だが小さくなればなるほど尻尾の本数が減り、使用できる魔力も減ってしまうのだとか。現在は世間一般では害がない程度にまで小さくなってもらい聖国の人たちを驚かせないようにしている。


「この結界って確か悪意ある者を弾くとかそんな感じだったよな。隼人ってこういう結界も張れるのか?」


「何をもって悪意と捉えるか微妙だから俺だと多分無理だな。この結界は犯罪の数、つまり記録されている犯罪数によって入ることを制限してるみたいだな」


町に入るための身分証には必ず犯罪歴などが記載されている。この犯罪歴は各町に配備されている魔道具によって犯罪者かどうかを判断するのだとか。


「でも魔道具での判定って結構あやふやなんだよなぁ。あれってどんな軽い犯罪でも反応するから食い逃げとかいじめとかだけでも反応して調べるのに滅茶苦茶苦労するって言ってたな」


「俺も一回だけ仕事で別の町に行った時に反応されました。罪状が殺人ってことだったんですけど、盗賊集団を壊滅させたときに何人か殺してたみたいで、それを調べるのに二日も軟禁されました」


あの時はギルマスや王様が動いて大変だったなぁ。


「凛のやつが魔道具を改良してからはあんまりそういった判定は出ないみたいだが、それでもゼロじゃないらしいぜ」


便利なのだがそれに頼りすぎるのもと言った感じだろうか。ギルマスなんかは相手の動きとか仕草で犯罪者かどうか分かるとか言ってたけど、ああいう玄人の感覚ってのは分かりません。


「とにかく町に入りましょう。ここで喋っていても時間の無駄ですわね」


「にゃ~ん!!」


門まで近づくと長い列が見えてくる。町に入るための検問なのだが、聖国は観光地としても有名らしく入場者の数は帝都の次に多いらしい。俺たちも最後尾に並ぶと後ろにどんどん人が増えていっている。


「帝都よりも多いんじゃないのか?」


「多分入口が一か所しかないからだろうね。帝都には4か所門があるから」


聖国へ入るための門は一か所しかなく、さらに検査がかなり時間を掛けているようで入るだけでも一苦労らしい。


「面倒ですわね。ちょっと横の所を壊して入ることはできませんの?」


「そうじゃのぉ。これぐらいの門なら飛び越えるという手もありそうですなぁ」


「にゃにゃにゃ~ん」


従魔の皆さんはこういった人間特有のルールは毛嫌いしている。コクロなぞここにいたら確実に城壁を壊しているだろう。


「まぁまぁ、これも穏便に済ますためのルールなんだからもう少し我慢してくれ」


仕方ないのでアイテムボックスから暇つぶしの本と昼寝用の布団を敷いたバスケットを取り出す。


「二人ともこっちに入ってゆっくりしてるといいよ。オケアノスも入るか?」


「にゃ~」


オケアノスはアモスさんから離れる気が無いようで定位置であるアモスさんの肩に器用に座っている。トウカはバスケットに入って昼寝、ハクトは出した本をバスケットの中で読み始めている。時間にして2時間ほど経過してようやく門を通ることが出来た。


「疲れた~」


アモスさんがぐったりとした声を出している。確かに2時間も並ばされるとは思わなかった。それに門番に俺たちのギルドカードを見せたら「こいつら本物か?」みたいな顔をされてしまった。俺はともかくアモスさんは屈強なAランク冒険者らしく見えるはずなんだけどなぁ。


「最近アノスがいるからかナメられるんだよ」


「あぁ、確かにシーキャットは愛玩動物としても人気だからね」


オケアノスの見た目は可愛らしいシーキャット。通常個体としてはそこまで強くない魔獣だ。だけどリヴァイアサンの加護があるため上位魔獣にも引けを取らない強さを持っている。


「愛玩動物をちらつかせながら歩いてる上級冒険者はいないからな。それで門番やら受付やらで大分ナメられるんだよ。まぁ、ギルドでならこれまでの達成クエストとかを見れば大体納得されるから問題ないけどな!!」


これまで受けてきたクエストや達成したかどうかは全てギルドカードで記録されている。Aランク冒険者の中でも上位の冒険者であるアモスさんもクエスト達成数は尋常じゃない数だろう。中には伝説級のクエストなどもあるかもしれない。


「俺のクエスト履歴みるとみんな微妙な顔するからなぁ」


「そりゃ、ここ数年は凍結クエストしか受けてないくせして、それが全部極秘扱い。一般の受付が閲覧できる部分だけ見ると最高難易度のクエストと最低難易度のクエストが並ぶんだもんな。あれは笑った!」


いつのころからかギルドで受けるクエストが極秘扱いのものばかりになっていた。当時はそんなことは知らずギルマスが持ってくるクエストをこなすだけだったので、なんの疑問も持たなかった。それでいつの間にかSランク冒険者に認定されてたもんだから、低ランククエストからいきなり高難易度クエストを達成している履歴ができてしまった。あれは全部ギルマスが悪い。受付のお姉さんにめっちゃ怪しまれた。


「主殿も大変な苦労をしてるのぉ。そういえば童をテイムしたことをギルドとやらに報告にいくのではなかったのか?」


「そうだった!!」


入るのに時間が掛かりすぎてすっかり忘れていた。魔物や霊獣を従魔にしたときはギルドで登録することが義務付けられている。登録をしないと町にいるときに野生の魔物と勘違いされて討伐対象になったりするらしいので登録は必須なのだ。


「だけど九尾なんて従魔にしたとかまた噂になるのは嫌だなぁ」


珍しい魔物や霊獣を従魔にすると当然だが目立つ。特に力をもった霊獣はその姿を見ることすら珍しい。その中でも九尾は上位に位置する霊獣であるため、ギルドで絶対にひと悶着あるだろう。


「今更だよなぁ。すでにグラトニースライムとフェンリルを従魔にしてんだから、九尾ぐらいなら特に驚かねぇだろ」


「そうじゃのぉ。童もそのお二方に比べればひ弱な霊獣じゃからなぁ」


その美貌と魔力で一国を壊滅させる力を持つと言われている霊獣がなにをおっしゃるのでしょうか!!


とにかく面倒事が起こることは確定しているので対策は必須だ。それに最適なアイテムを装備しないと。


「おお!主殿はなかなか洒落た面を持っておるのぉ」


いつもお世話になってる幻影の面はキツネがデザインされている。それに何か共感するものがあったのだろうか。


「そういえばその幻影の面って妖狐の素材が使われてるって聞いたことがあるような」


「え?!それってまさかトウカの仲間とかを素材にしちゃってたりするの?」


恐る恐る聞いてみるがトウカはケラケラと笑っている。


「そんなに心配せずともよい。確かに童たちの眷属を使って作られておるようじゃが、その面はかなり古いもののようじゃ。すでに加工されて誰の素材なのかもわからぬものに感情などわかぬよ。それに霊獣や魔物は近しい家族でないかぎり基本傍観じゃ。眷属や同種といっても挑んでくる者もおるし、ミルキーフォックスなどは童たちも狩って食っておるしな」


どうやら同種ということでもそれなりに関係は無いらしい。だけど逆に近しい者を襲ったりしたときは異常なまでに怒るらしい。


「上位の者であればあるほど近しい家族と呼べるものは少なくなる。下位のものはそもそも知性が無いものも多く、繁殖力も高いからのぉ」


もしかしたらこの幻影の面も元の素材は人間と友好的な関係を持っていた妖狐だったのかもしれないとトウカは言っていた。


「でもその面のせいで隼人の容姿が大変なことになってるから最近は使わなかったんじゃないのか?」


「確かにこの面って見た人の理想を移すらしいからなんか滅茶苦茶な噂が出ちゃったけど、素顔を知られないってのは以外と便利なことが増えるんだよ。この前の村でも俺の顔が知られてなかったから相手も油断してたわけだしね」


ペルマナと結託していたクルタミラの冒険者ギルドでの事件を思い出す。そういえばアモスさんが言ってたけど、ギルマスが奴隷落ちしたらしい。シンラが冒険者ギルド本部に抗議したようで大がかりな捜査があったようだ。そしたら不正な証拠がたんまり出て来てギルマスとそれに加担した職員や冒険者も一緒に捕まって相応の罰があったようだ。


「主様早くギルドに参りましょう。本日の宿も見つけなければいけませんし、そろそろ時間がヤバいですわ」


ちょっと長話をしてしまったことに気づいて急いで冒険者ギルドに向かう。

ギルドはちょうど空いている時間だったようですんなりと受付に行くことができた。九尾を従魔にしたことを大変驚かれ「嘘を付いても罪に問われますよ!」と信じてくれなかったが、ギルドカードを提示すると青い顔をして平謝りされた。


「あ、あの、隼人さんはギルドの凍結依頼を処理してくれると聞いたのですが、ギルマスにお会いしていただけませんか?」


「申し訳ないのですが、今回聖国に来たのも極秘の仕事でして」


「本当に5つ、いえ、3つだけでもいいので処理をお願いできませんでしょうか!」


なぜこの受付嬢はこんなにも必死になるのだろうか?


「なぁ、さすがに必死すぎないか?いくら凍結依頼が溜まってるからと言ってもギルド側には特に問題はないだろ。依頼主も無理を承知で依頼を出していることは説明してるんだろ?」


アモスさんの言う通り凍結依頼はその高難易度、報酬などから事前に受付をするさいに依頼達成まで時間が掛かることや、受けてくれる冒険者がいない可能性があると説明して、それでもいいと承諾を受けて受理されるものだ。


「いえ、その、それは・・・・」


「何か問題でもあったのか?」


受付嬢が言いよどんでいると奥からマッチョの巨漢が現れる。装備を付けていないところを見ると職員、だがその魔力量や筋肉から上級冒険者相当だと伺える。


「ギルマス!実はSランク冒険者の隼人さんがいらっしゃったので凍結依頼を処理していただけないかと」


受付嬢の説明で理解したのかギルマスと呼ばれた男が俺たちを2階の執務室に案内した。


「すまんな、ウチの職員が無理を言っていたようだ。俺は聖国支部のギルマスをしているカーレだ。セブングリードの噂はこっちまで届いてるぞ」


基本はパーティーを組んで活動しているがそれぞれが上級冒険者のためよほどのことがないかぎり一緒の依頼を受けることはないのだが、どんな噂が流れているのだろう?


俺たちもかるく自己紹介をしてカーレが凍結依頼について説明をしてくれた。


「あの職員が必死になってたのは凍結依頼を通常依頼として受けてしまったからなんだ」


「そんなことがあり得るのか?」


「普通ならあり得ないことだ。だが、俺が緊急討伐でギルドにいない間に副ギルマスがやらかしやがった」


カーレの顔がどっと疲れたように変わる。


「凍結依頼扱いにするには依頼の審査として3人の承認が必要だ。最初に受け付けた職員、その上司、最後にギルマスである俺。この3人の2人以上が凍結依頼扱いだと判断したものが凍結依頼となる。凍結扱いされる依頼なんてそもそも受理しないことの方が多いんだが、俺が留守の間に任せた副ギルマスが全部の依頼に受諾するサインをしやがった」


「あの、こういっては何なんですがその副ギルマスってそんな無謀なことをした理由ってなんなんですか?自分が自滅するとは思わなかったんでしょうか?」


俺の質問でまたもカーレが頭を抱えた。


「ウチの副ギルマスははっきり言って馬鹿で無能だ!高貴な身分だかなんだかしらんが、金の力で副ギルマスになって自尊心が高いくせに仕事ができない無能。覚える気概がないのか仕事もほとんど部下任せ。ギルドにいることの方が少ない無能なんだ」


「そんな奴を副ギルマスにするとかギルド本部は正気だったのか?」


「アモスの言う通り、本部でも腐ってる権力者たちが金に目がくらんで副ギルマスに任命した奴だ。俺も何度か本部に抗議をしたが、あいつの身元が問題でな」


「身元ですか?」


「枢機卿の孫なんだそうだ。四男だそうだが枢機卿からの直々のお願いだったことと、多額の寄付金があったらしい。そこまでして教会の人間が一支部の冒険者ギルドに入りたい理由は検討がつかんが、そんな理由で取り合ってくれなかったんだ。実質ギルドの仕事はほとんど本人は関わっていなかったから俺も無視していたんだが、俺が留守の間にかぎってギルドで好き放題やりやがった!!」


最後の方はほとんど怒りと愚痴が混ざったような感じだったが、真鍮をお察しします。


「それでその馬鹿・・・失礼、副ギルマスの処遇はどうなったんです?」


「今は自宅謹慎中だ。やらかしたことも確認書類に勝手にサインするだけだったんで、仕事は増えたがほとんどどうにかなったんだが、凍結依頼に関してだけはどうすることもできなかった。依頼者に謝罪と説明に言ったんだが、ギルドが一度許可した依頼を引き下げるのかと怒鳴られた。凍結依頼の対象となることを覚悟で依頼してきた人がほとんどで、それが一般依頼として受理されたことでかなり安堵していたところにこの謝罪だからな。今聖国で冒険者ギルドの評判はだいぶ落ちてしまったよ。だからこそ信用を取り戻そうと凍結依頼をなんとか冒険者たちに受けてもらおうとしてるんだが、なかなか上手くは行かない」


「そりゃ、それで受けてくれたら凍結依頼になる意味が無いからな」


「だからこそ、凍結依頼を次々受けている万能を呼ぶことも協議されたんだが、何分距離がある上に、お前は帝都からほとんど出ないと聞いていたからな」


チラッと俺を見ているが、俺は基本引きこもり体質。外に出なくていいならいくらでも家の中で過ごせるタイプだ。Sランクになる条件で出頭命令なども無視していいと言われてるのでもちろん依頼があっても無視したでしょう!


「隼人できるなら凍結依頼受けてやらないか?ギルマスも困ってるみたいだし、俺に手伝えることは手伝うからよ」


アモスさんのお人よしがここで発動してしまった。アモスさんって結構ギルドに対しては恩があるとかで無理な依頼でも率先して引き受ける傾向にある。その反面、ギルドの不祥事なんかは過敏に反応しているところもあって、この前のクルタミラでもかなり率先して事の終息に協力していた。


「アモスさんがそこまで言うのであれば強力してあげたいけど、今はあんまり余裕ないし」


聖国に向かったというコーネリアのことも調べなくてはならないし、聖国にいると言われている聖獣のことも調べなくてはならない。


「それでしたら私が事前に調べて根回しをしておきますわ。こちらにいる聖獣もここまで近づけば気配でなんとなく分かりましたし、あれならきっと喜んで協力してくれるはずですわ」


ハクトの態度でどの聖獣がいるのか見当がついた。おそらくあの方・・・・・・


「それでいいなら任せる。あんまり大っぴらに動くなよ。聖国で聖獣がいること自体異常なんだから」


「分かってますわ。トウカは主様たちをお願いします。お二人の行動は逐一観察して後ほど報告してくださいませ」


「承りました。それにしても主様とアモスさんの行動とはそんなにも大切なものなのかえ?」


いや、俺に聞かれても知らないよ!!そもそもハクトはトウカになんてお願いをしてるんだ!!!


「あなたもお二人をよく観察していればいずれ分かるときが来ますわ。時間があれば私がゆっくりと説明をして差し上げますのに、今それができないのが口惜しいですわね」


「いいから、早くその根回しとやらに行ってくれ!!」


本当に残念そうな表情を浮かべてハクトは窓からぴょんと出ていった。


「ほ、本当に聖獣を従魔にしてるんだな。それどころか従魔というより友人のような感じだな」


「テイマーってそういうものじゃないんですか?帝都のテイマーたちは従魔とこんな感じでしたよ」


「聖国だと従魔はかなり嫌われているからな。聖国が称える創造神ロキと聖獣の不仲は知ってるだろ。魔獣や霊獣なんかはどちらかというと聖獣よりだからな。テイマーが聖国に来ると従魔たちが可哀そうに見えるくらい態度が悪くなる。あんたらも気を付けてくれ。まぁそちらのシーキャットも含め、只者じゃないのは分かるから心配はしてないが」


オケアノスの強さを感じられるならやはりカーレは只者ではないのだろう。


「それで凍結依頼を受けるのは構わないが、ハクトの根回しが終わるまでで勘弁してもらえると助かります」


「ああ、こちらも無理を言っていることは重々処置している。出来るところまでで構わない」


そう言ってカーレは8枚の依頼書をテーブルに広げた。軽く内容を見た限り確かに凍結依頼にされてもおかしくない内容だった。


「本当にこれを通常依頼で受けたのか?!こっちなんて内容の割に報酬が安すぎる。こんなの外のボードに貼ったら文句言われるだろ!!」


「こっちも酷いな。内容は凍結依頼になるだろうに急務の判が押されてる。珍しい薬草で群生地が無いから栽培もできないような奴だよこれ。きっとギルマスたちに相談するために急務って書いたんだろうけどそのまま受け取って確定印を押すとかありえん・・・・アモスさん、この中で優先順位を付けたいから並べていってもらっていい、アモスさんの判断でいいから」


依頼書に書かれた薬草はある病気の特効薬として使われるものだ。俺はあまり詳しくないが、昔同じような依頼を帝都で受けたことがある。今回はその時よりもさらに報酬が低いうえに急務の判が押されているため3日以内という制限まで付けられている。おそらくこれが一番最初に取り掛からないといけないものだ。こういった優先順位の高いものからとりかかるために帝都のギルマスたちは「上からやっていってくれ」と言ってくれるので助かっているが、こうもバラバラだと全部読んで優先順位をつけるだけでも一苦労だ。


「すまんな、俺も昨日戻ってきたばかりでさっきまで出来る限りの対応をしていたもんで依頼内容を全部読んでるわけじゃないんだ」


「仕方ないとは思いますけど、その阿保・・・・コホン、副ギルマスを絞めたくなりましたね。ギルマス、ここに小さな鉢植えとかあります?」


「あ、ああ、あるがそんなもんどうするんだ?」

カーレさんが用意してくれたのは両手で持てるほどの小さな鉢植えだった。


「今からやることは他言無用でお願いしますよ。緊急事態なんで」


俺はアイテムボックスから目的の種を取り出すと鉢に植えると水を掛けて付与魔法を重ねる。付与するのは『成長加速』『温度管理』『品質向上』の3つ。一遍に重ねることはできないので一つずつ付与魔法を重ねていく。鉢植えから緑の新芽が出ればあとは勝手に成長してくれる。結果として入手難易度Sランクの薬草栽培が終わる。


「量としてはこれぐらいあれば問題ないはず。ギルマス、こちらで問題ないようでしたら受理をお願いします」


未だに目の前のことを理解できないギルマスは口を空けて動かなくなってしまった。確かに規格外のことをしている自覚はあるのだが、急かしているのに反応してくれないのはちょっとイラっとしてしまった。


「アモスさん、取り合えず次を片付けましょう。優先順位の高い奴ください」


コンクパールの採取・・・・手持ちがあるのでそれを納品

盗賊団の残した暗号解読・・・・普通に読めます

お店を大きくするための手伝い・・・・西城に紹介状を書いて終了

憲兵隊の裏切り者を探し出す・・・・トウカが美女に変身して裏切り者悩殺

聖国出入口の増築・・・・・今ある出入口を複写で写し取って離れた城壁に転写

西の森に住まう主の討伐・・・・・アモスさんと出かけて4時間で終了

無くした魔力のペンダント捜索・・・・・魔力探査ですぐに発見


「はい、これで終了!!思ってたほど難易度の高い依頼が無くて安心したけど流石に面倒だった!!」


ギルマスの部屋に呼ばれてから12時間ぶっ続けで依頼をこなしてしまった。ちょっと手伝うだけのはずだったのだが、受理をしてもらおうとギルマスのところにいくと毎回口を空けて固まってしまうので、次へ次へとやっていったらこんな時間になっていた。


「アモスさんも突き合わせて悪かったね」


「いや、俺が言い出したことだしな。それに難易度の高い依頼をあっという間に完遂していく隼人はやっぱすげぇよな!同じパーティーとして誇らしいぜ!!」


ガッハッハと笑いながら大分恥ずかしいことをサラッと口にしているアモスさん。ちょっと恥ずかしい・・・・


「うむ、これがハクト様がおっしゃっていたデレと天然いうやつかのぉ。なぜ主殿は恥ずかしがっておるのか童には分からぬが、確かにお二方には良い絆があるようじゃな」


「にゃにゃにゃ~ん!!」


オケアノスが「そんなことで調子に乗るな!!」と言っているような気がする。


「・・・・・・・・・・・・・・」


「なぁ、ギルマスが全く現実に戻ってこないんだがどうする?」


「そうだな。腹も減ったし、今日は飯食って寝ちまって明日くればいいんじゃねーか。明日にはちゃんと戻ってきてるだろ」


とりあえず全依頼を完遂したことをメモ書きして宿に向かう。宿の厨房を借りてサクッと食べれる物を作ると疲れていたのかあっという間に眠ってしまった。


お読みいただきありがとうございます。


少しでも面白かった、続きが気になる方は高評価コメントよろしくお願いします。

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