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万能の実力

「さて、引き受けたはいいがどうしたもんかね」


魔力の高まりを見るに尻尾が九本揃ったら儀式が完成して触媒である九尾の狐も取り込まれてしまうだろう。それまでにハクトが本体を見つけて助け出してもらわなくてならない。

さらに助け出した後も残ったこっちの化け物が自壊する可能性があるため、無暗に火力で消し去るのも危ない。


「先のことを考えてみたけどもしかして今がピンチかも」


目の前の化け物は俺が施した拘束を抜け障壁を紙をちぎるように破壊している。まったくこの障壁も結構強固に作られてるんだぞ。


氷柱付与エンチャント


巨大な氷柱を化け物周辺に展開して足止めを試みたが粉々に砕かれる。化け物が大きく息を吸い込むのが見えて咄嗟に防御する。


「氷壁、鉄壁、付与エンチャント


鉄と氷の壁を幾重にも重ねて防御する。ドラゴンブレスさえ防いだこの壁も残り数枚が残されるだけで残りは跡形もなく消し飛ばされた。


「ガチでヤバいな。あんなのまともに受けたらひとたまりもないぞ」


近づけば爪や尻尾で障壁が砕かれ、離れれば強力なブレスを撃たれてしまう。


「なによりブレスはヤバいな。黒い炎とかこの周辺にも被害が出そうだ」


怪物から放たれたブレスは黒い炎であり、飛び散った火の子は普通の水では消えなかった。聖属性を含んだ聖水と呼ばれるものしか消せるものがなく、俺も作り出せるが生成には時間が掛かる。


「これなら近くで防ぐ方が幾分かマシか」


魔導士として敵に近づくのは本末転倒だが、ブレスを完全に防ぐ術がない以上被害を抑えるために近づくしかなった。


「春、夏、付与エンチャント


春の息吹と夏の光源で接近戦に必要な付与は掛けた。接近戦に持ち込み可能な限り攻撃を捌く。しかし接近戦をあまり得意としていない俺としては防戦一方。いや、防御に徹していても相手の攻撃を捌ききれないものがいくつかある。上から襲い掛かる爪の斬撃を棍で受け止めることは出来るが、振り下ろした際にかまいたちのように飛んでくる斬撃は止められない。着ている服(防具)が優秀なため、致命傷を受けることはないが、いつまでも受け続ければ自動回復が追い付かなくなる。


「(デバフの効果も無し。魔法防御が固すぎる、ほとんどの魔法に対して耐性があって傷を付けられない。唯一攻撃が通っていると思われる氷も足止めが精一杯)」


6種(地水火風光闇)全ての属性で攻撃してみた際に明らかに避けたのが水、正確には氷の属性だった。だが直撃しても多少スピードが緩む程度で致命傷を与えられずにいる。


「これ以上威力を上げるとこの一帯が危険だし、相手はお構いなしに攻撃してくるから避けるに避けられないとか無理ゲーもいいとこだ」


相手からの攻撃事態は割と単純なため、避けようと思えば避けられる。だが、周辺への被害を考えると攻撃を避けるのは得策じゃない。一応結界は張っているが相手からの攻撃数発で壊されかねない。隔離結界などの強力な結界で周辺を覆えればいいのだが、結界を生成するには時間が足りなすぎる。だが、手段は他にもある。あと2か所にこれを設置できれば。


拘束付与エンチャント


幾重にも怪物を縛る鎖、時間稼ぎにしかならないと分かっているが仕掛けをするには十分。


「六点結界、付与エンチャント


魔石を六芒星の頂点の位置に設置して使用する高等結界術、それが六点結界。本来は術式を施した魔石を媒介とするのだが、俺は普通の魔石でなんとか発動している。もちろん正式に発動させた六点結界よりは弱いが中心地に相手を閉じ込められれば中から脱出することはまず不可能だろう。普通なら。


「こいつ六点結界ですら壊す気かよ!魔石の方が耐えられないとかマジか!!」


設置した魔石にヒビが入り始めている。内部で暴れる怪物の攻撃に対してあの大きさの魔石では不十分だったようだ。


「この魔石だって結構いいもんなんだがな。雹槍付与エンチャント


結界から出る前に少しでもダメージを与えるため氷の槍を無数に放ったが怪物を貫くことはできず、浅い傷を作るのが精々だった。ところが突然怪物の動きが止まる。


「なんだ?あの膨大な魔力が小さくなって・・・・もしかしてハクトの奴が九尾を助けたのか?」


どうにかなったと安堵した瞬間、怪物本体が急に赤くなっていく。


「あれ?これってもしかして自壊とかのヤバいやつ?」


慌てて六点結界を解除して隔離結界の準備をする。隔離結界ならば内部で何があっても結界の外には影響はない。ただし、自壊の威力が結界の強度を上回って外まで漏れ出せばこの辺り一帯はただでは済まない。


「久しぶりに本気を出してみるか」


周囲を見回して誰もいないことを確認するとアイテムボックスから一冊の本を取り出し、いつもは恥ずかしいと言っている詠唱を唱え始める。


「異界を統べる王の名において、我が求める幽世の門」


詠唱自体に意味があるわけではないのだが、魔法はより強固なイメージと魔力によって効果が変わる。隔離結界は現代のバーチャル空間をイメージして作ったものの、その強度自体はそこまで高くない。つまり本来の魔法効果と俺のイメージが完全に一致していないため、魔法事態の効果が半減してしまっている状態だ。ここで詠唱が効果を発揮する。詠唱はその魔法効果の詳細を言葉に変えたもの、唱えることでよりイメージが強固となり効果が倍増する。だがあくまでもイメージの助けとなるだけであって、イメージが明確なものになれば詠唱は必要ない。それが何故か今の時代詠唱することが一般的で詠唱を必要としない魔法は希少とさえ言われている。俺から言わせれば恥ずかしい詠唱は人前で使いたくない。だって詠唱が書かれている本を読んだがそのほとんどが、中二病MAXの内容ばかりだったからだ。ちょっとカッコいいと思うけど、人前でやるのはいまだに抵抗がある。


「門より来たる四点の柱、幽世の礎となりこの世を断絶する壁となれ。隔離結界」


大部分の詠唱を省略したがこれ以上は時間が掛かりすぎる。だが4節の詠唱でも効果は十分。隔離結界が発動して怪物を結界内に閉じ込める。内部での様子を知ることは出来ないが結界が一瞬揺らめいたときおそらく内部で自壊が発動して大爆発でも起こったのだろう。だが、詠唱によってより強固なものとなった結界にはヒビ一つ入ることは無かった。


「主様お見事でございます!」


茂みから現れたハクトから拍手が送られる。前足を器用に使って拍手をする姿は可愛い以外の何物でもない。


「そうだろそうだろ、もっと褒めてもいいんだぞ!ついでにそのモフモフを堪能させてもらえればもっと嬉しいが」


「そんなことより」


俺の至福をそんなこと呼ばわりされてしまった。コクロと違ってハクトはガードが堅いんだよなぁ。


「無事私の方も九尾を救うことが出来ましたわ。今は魔力がだいぶ弱ってしまって休ませておりますが、主様に一言お礼を申したいとのことです。後日ご挨拶に来るそうですわ」


「律儀なんだな。俺としてはハクトの大切な友人を救えてホッとしてるよ」


「友人・・・・・そうですわね。私たちにとってあの子は・・・・・」


何か言いたげだったハクトだったが言葉を飲み込む。


「それより早くアモスさんと合流しよう。結構時間を食っちまったからアモスさんも待ちくたびれてるかもしれない」


俺とハクトは急いでアモスさんが取ってくれている宿屋へ向かう。


アモス視点


隼人の様子がおかしいと宿の手配をしてすぐに後を追った。アノスに魔力気配遮断というスキルがあるため基本はアノスに追ってもらって目的地を突き止めたらアノスに戻ってきてもらって二人でその場所に向かう。アノスの魔力気配遮断は俺と触れ合っていれば効果が発揮されるらしく隼人が俺たちに気づいた様子はない。

俺たちが隼人を見つけたときには数人の黒ローブを着た集団と対峙しているところだった。流石に何を話しているかまでは聞こえなかったが、戦闘を始めているということは敵だったのだろう。


「(なんで俺に相談しないで一人で)」


「にゃ~ん・・・」


隼人の性格からして俺たちを巻き込まないように一人で片付けるつもりなのだろう。水くさいと思ってしまう反面、黒ローブ集団を次々捕まえていく隼人の実力をみて思ってしまう。


「(俺の助けなんて必要ないってことなのか・・・)」


巷では万能と呼ばれる隼人の実力はSランク最弱などと言われているが俺としては真逆、現Sランク、いやこの大陸で最強の冒険者だと思っている。最弱職である付与魔導士なことに加え、地味なクエストばかりを受注してこなしていることが原因だと言われているが、隼人が受けているクエストはどの冒険者にもこなせない高難易度のものや何年もクエスト成功者がいないいわゆる凍結クエストと呼ばれるものだ。そんなクエストをすんなり成功させている隼人の評価はギルド上層部や一部の冒険者は理解しているが、広くは色々なクエストを節操なしに受ける「万能」という認識になってしまっている。


「(本気で戦えば俺はおろか、残りのSランク3人掛かりでも倒すのは無理だろうな)」


黒ローブ集団は明らかに実力者ぞろい、それなのに次々と殺さずに意識を奪い拘束している隼人をどうして弱いと呼ばれるのか。正直そんな奴らはどうでもいい。自分含めちゃんと隼人を評価している人がいるのだから。


「って、この魔力はやべぇだろ!!」


突然残った黒ローブの姿が変わって物凄い魔力を放出し始める。不思議なことにこの辺り以外に影響は出ていないようだが、この前戦ったペルマナの何倍もの魔力を感じる。


「(さすがに俺も加勢した方が・・・・・)」


そんなことを思ったのが間違いだった。隼人はフェンリルであるハクトの力すら借りず、あの化け物相手に一歩も引かない攻防を繰り広げている。盾職である自分ですら受けることが難しいであろう強力な爪や尻尾の攻撃、それに加え全てを焼き尽くすであろう黒い炎ですら氷と鉄の壁を作り出し防ぎきっている。そんな完璧な防御をこなしつつ、弱点であろう氷の魔法で怪物に次々と傷を作っている。


「(俺では防ぐのがやっと、いや、防ぎきれないだろうな)」


本職である自分よりも高い防御能力、魔術師顔負けの魔法の威力と種類。さらには高等結界魔法まで戦闘をしている最中に発動させている。力の差を、これがSランク冒険者なのだと言われているのかと錯覚してしまう。


実際アモスは次期Sランク冒険者候補筆頭とまで言われている。クエストの成功率やオケアノスというリヴァイアサンの加護を持つ魔物と契約して戦力が増したことで期待の星とまで呼ばれていた。そこまでおごっているつもりはないが、自分がAランク冒険者の中でも上位にいることは理解している。自分の実力をしっかりと把握することも立派な資質だ。それでも目の前で戦うSランク冒険者をみると自分もまだまだだなと思ってしまう。


「アノス、戻るぞ」


むしろ自分が行けば足手まといになりかねない。そう思いゆっくりと宿屋に戻った。


隼人は何事もなかったように宿に戻るといつものように美味い飯を作ってくれる。


「(やっぱり隼人にはかなわねぇな)おかわり!!」




と本人が知らない所で隼人の評価がどんどん上がっていっており。BL展開的にとても美味しいシチュエーションが本人あずかり知らぬところで繰り広げられていた。


「なんだかアモス様からただならぬ気配、いえもったいない気配を感じましたが・・・・・気のせいでしょうか?」


唯一それに感づきそうな白いワンコも今回ばかりはアモスの胸の内に気付かなかったようだ。


お読みいただきありがとうございます。


少しでも面白かった、続きが気になる方は高評価コメントよろしくお願いします。

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