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マニアとの遭遇



 私、漆塗りの練習をしなければいけなかったんだ。 ……プロパン国の恐ろしさに気を取られていてすっかり頭から抜けてたよ。道具もあるんだし、練習しなきゃね。


「私、私は、大切なことを忘れていたみたい。そう、私は漆職人を目指すんだ。思い出させてくれて、ありがとうサクラちゃん」

「当然のことをしただけです。正義の心を、たっぷりと漆に込めましょう!」

「コ~ン♪」


 

 プロパン国の王女らしいけど、彼女はやっぱり優しい。思いやりのある子だな。そんなことを考えていると、質素な音と共に部屋のドアが開かれた。



 パタン


 中から現れたのは、黒服黒メガネの知的な男性。何となくだけど、とても凄そうな人に感じる。そんな彼は、私たちに対してお知らせをする。


「これから、ゲーム大会だ。参加したければ三階に来い。お前たちの参加を歓迎するぞ」



 彼の口から放たれた言葉は、私を大いに困惑させた。ゲーム大会? プロパンの脅威からゴンドラを守るための重要なこの組織で、そんなことを行ってもいいのだろうか? 遊んでないで、仕事をしなきゃいけないんじゃ……


「成績に応じて景品も用意している。君たちの力を、見せてもらおう」


 私の疑問は解決することなく男性は立ち去ってしまう。



「ゲーム大会、ですか…… プロパン国では絶対に成立しない催し物ですね。興味が湧いてきます。クロメさん、是非一緒に参加しましょう!」


 サクラちゃんからは強い参加の意思を感じる。イベントに参加したい、そんなオーラが彼女からあふれているのだ。そんな彼女に水を差すようなことなどできない。私は黙って彼女の手を取り、彼女と共に三階に向かう。



人々の声が混じり合う騒がしい大会会場。老若男女問わず、様々な人が三階の広場に集まっている。みんなは受付のようなところで何かを受け取っている。


「あそこで何かを貰えるみたいですよ。私達も行きましょう!」


 ルンルン気分のサクラちゃんは、スキップで列に突入する。凄くニコニコだ。……私も一緒に並ぼう。


 多すぎず少なすぎず、程よい人が並んでいる列に私たち二人は並ぶのだった。列の最後尾には二人組の男性が。そわそわしながら緊張した表情を浮かべているようだ。



「あの、みんなは何を受け取っているのでしょうか?」


 前に並んでいる男性の二人組に対して尋ねる。すると、大人しく並んでいた二人は生き生きしながら説明を始める。その様子は、まるで水を得た魚のようだった。


「第四弾の拡張パック『星座の輝き』さ」

「いち早く体験することが出来るなんて、ワクワクが止まらねぇぜ」


 ??? 彼らは何を言っているのだろうか?」


「星座の輝き……夜景写真の事ですか?」


 サクラちゃんの発言に、二人の男性はあきれ顔になってしまう。


「おいおい知らないのかよぉ。最新流行のカードゲーム、『デフホダハ・カブヒデ』だぜ」

「お嬢さんたちは時代遅れだなぁ~」


 彼らの煽りに少し苛ついてしまうが、彼らは説明を続けてくれるようなので黙って話を聞くことにする。


「数年前に突如現れた謎のカードゲーム。第一弾第二弾の時はほとんどの人がその存在を知らなかったんだ。けど、それは第二弾の時までの話。第三弾で、異常の出世を遂げる。ほとんどの人が知る国民的なカードゲームになったんだ」

「もうそろそろでカブヒデの第四弾拡張パックが発売される。そのためのカード調整として、このイベントで試作品を使った戦いが行われるのさ。本当にワクワクが止まらねぇ」


 まるで呼吸をするかのようなスムーズな言葉さばきでデフホダハ・カブヒデの歴史を語る男たち。そこで、気になったことを聞いてみる。


「どうして第三弾で急に人気になったの?」


「第一弾と第二弾は、『進化』が戦いのカギを握るゲームだった。うまく『進化』を行うことにより、不利な場面から逆転することが出来たのが第二弾環境までの話。なんと、第三弾ではほとんど『進化』に関するカードが作られなかった。その代わりに作られた第三弾の目玉が『転生』という要素。『進化』よりも爽快感のあるプレイングが可能になったのさ」

「『転生』という概念がこの国の人たちの心に響いたようで、そこからカブヒデが爆発的に広まるようになったという事だぜ」


 私が質問してから、ほとんど間を置かずに男たちが解説してくれる。異世界転生の説話には、人を引き付ける何かがあるのだろう。


「なんだかよく分からないけど、凄く面白そうですね。何せ、国民的ゲームらしいですから。私の国のゲームはろくでもないものしかないので、この国でまともなゲームをするのはすごく楽しみです」


 プロパン国で行われるゲームか……あまり想像したくないな。



「あなたもゲームの参加者ですね。では、こちらを受け取ってください」


 受付の女性が、十枚のカードパックと本の様なものを私達にそれぞれ配ってくれる。


「一パック七枚入りとなります。それらを全て開け、その中から三十枚のデッキを作ることになります。イベント開始まで少々時間がかかりますので、カードパックの中身を確認しながら待機していてください」



 七十枚のカードの中から、デッキを作るの? ……私に、出来るかな?

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