勇者たち
「あ~暇だなぁ~」
「コ~ン……」
ベッドしかない部屋で一晩を過ごした私たちは、何もない退屈さに苦しんでいた。プロテン偵察隊からの連絡はまだない。いつになったら準備ができるのだろうか?
「スズネはモフモフで気持ちいいな~♪」
「コ~ン♪」
スズネの滑らかな背中を撫で、退屈を紛らわそうと試みるもそう上手くはいかなかった。
「……掲示板でも見るか」
「コン……」
「……あっ、カオリンが話題になってる。天使の演奏隊とか言われてるね……」
「コンコン……」
「へぇ、ゴンドラ四天王が一つになったのか~」
「コンコンコン……」
「雪国のスレは過疎ってるね……」
「……」
「そうだ! プロテン国の掲示板を見てみよう」
「……条件を果たしていないから見れないや。プロテン国でチンピラ100体倒さないといけないみたい」
「コ~ン……」
掲示板を見続けるのも飽きちゃった。掲示板は、たまに覗くくらいが丁度いいや。
「ふはぁ~はぁ」
「コォォ~ン……」
「お休みぃ、なさい……」
「コォ……」
「「「おはようございます! 心地よい朝ですね」」」
突然部屋のドアが開かれ、元気いっぱいの挨拶が聞こえる。長い髪、美しい着物、幼いながらも美しい顔をもつ少女が姿を現した.
……サクラちゃんだ。何しに私の部屋へ来たんだろう?
「あなたがプロパン国を救ってくれる英雄クロメさんですね。どうぞ、よろしくお願いします!」
「よ、よろしく……」
「コ、コン……」
英雄? 私は全然そんなのじゃないけど……
「プロパン国の闇を取り除いて、きれいな国に変えるのが私の目標です。プロパン国の平和を望む勇者同士、仲良くしましょう!」
私は勇者だったのか…… うん、違う。絶対違う。
「私は英湯でも勇者でもないよ。ただプロパン国を通過したいだけなの」
「なるほど! 千里の道も一歩からですね。憧れちゃいます」
目を輝かせ私の顔を眺めるサクラちゃん。私のどこに憧れる要素があったのか……
「クロメさん! 何だか元気がないですね。私でよければ相談に乗ってあげますよ」
相談に乗ってくれるみたい。せっかくだから話を聞いてもらおう。
……
「なるほど。そういうことですか。私なら力になれますよ!」
自信満々のサクラちゃんが、私の両手を握り、軽く揺らす。
「すご~く退屈なんですね。私が話し相手になってあげることが出来ます。見た感じ、あなたは旅人ですね。あなたの旅をいろいろと聞かせてください」
凄い。私が旅していることが分かるなんて。サクラちゃんに、私の旅の思い出を聞いてもらおう。
「なるほどなるほど。隣の雪国からこのゴンドラ国までやって来たんですね。そして一度プロパン国まで行って準備不足を感じ、ゴンドラ国まで戻ってきたということですか」
「まぁそんな感じだね。プロパン国は思ったよりおっかない所だったよ……」
「汚染兵器がたくさんありますからね。みんなその影響を受けてしまったのでしょう」
「そしてクロメさんはプロパン国を抜け、アクエリアを目指していると……伝説の職人になるために」
「そうなの。……職人の国に行くために、まさかあんな危険なところを通過する必要があるとは思わなかったけど」
「なるほどなるほど……」
目を閉じ落ち着いた表情になるサクラちゃん。しばらくの間周囲の音が鎮まる。
やがて彼女の眼が開き、言葉を発する。
「ひまひま言ってないで、漆塗りとやらのの練習をしたらどうですか! そのための道具はもう、手に入れたんですよね。クロメさんの漆塗りで、世界を塗り替えちゃいましょう!」
!? その発想はなかった。
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