悪人はだれ?
青く輝く巨大な光が、ゆっくりと こちらに向かってくる。
「さ、寒い」
「一体どうなっているの?」
「コ~ン……」
私達は困惑した。
「これで、……すべてが終わる」
トンボ少女が儚げにつぶやく。その様子は、なんだかとても寂しそうだった。
今まで、寂しい思いをしていたのかもしれない。
あれ? なんだか少しだけ、青い光が小さくなっているような。もしかしたら彼女は……
「本当に、すべてが終わってほしいと思っているの?」
「ああ、そうだぜ!」
「すべてが終わってしまったら、もう、この国を無茶苦茶にすることが出来なくなっちゃうよ! それでも、良いの?」
「そ、それは……」
「あなたは、この国を滅ぼしたいんじゃない。この国を滅茶苦茶にしたい。そうなんじゃないの?」
「……」
少女は黙り込んでしまった。
「見て、クロメ。光が、どんどん小さくなっていくよ♪」
「コ~ン♪」
「うん!」
先ほどまでよりも小さくなった、青く輝く光が、ゆっくりとこちらに向かってくる。
「……」
「そうだよ」
「滅茶苦茶にしたいんだよ」
「でもっ」
「私は捕まった。降参するくらいなら……」
「すべて消すしかない!」
彼女の叫びと共に、再び光が大きくなる。距離も近くなってきた。そして寒さが強まってくる。
彼女は、降参することを恐れている? 自分が降参するより、死ぬ方がましだっていうの?
そんなの間違ってるよ!
「降参したっていいじゃん! 生きている限り、悪さをするチャンスなんて、いくらでもあるよ」
「!?」
「生きてなきゃ、悪さはできないよ。そのためにも、あの光を止めなくちゃ」
「……無理だよ。あの技を一度発動させると、彗星を小さくすることはできても、もう完全には消せなくなっちゃう。国の破滅は防げても、私たちはもう……」
「小さくするだけで十分だよ。後は私たちが何とかしてあれを止める! だからお願い、あれを小さくして!」
「……」
彼女の目に、再び涙が浮かぶ。
「なんで、どうしてっ、クロメはっ! こんな私のっ! 悪さをっ! 許容してくれるの?」
「私はあなたを道連れにしようとした! それに、あなたの記憶を奪った。ただ私が楽しむためだけに! それなのに! あなたは、まっすぐな目で、私のことをしっかりと考えてくれる。どうしてなの……」
純粋な表情で私のことを見つめながら、かすれた声で叫ぶ少女。
「私は、悪い人だから。闇魔法を使いこなすほどにね♪」
「!?」
「悪を受け入れ、悪いことを行う。それが、闇属性魔法の使い手としての役目。だから私とあなたはもう友達!」
「クロメ……」
今の私が闇魔法を使えるということは、きっと昔の私はワルだったのだろう。社会の陰で、こっそりと生きていたに違いない。
だから理解者が必要だ。自分の中のワルを受け入れてくれる人が。私にとっても、彼女にとっても。
「ぷっ、くすくすっ」
あれ? 私、今笑われた?
「ぷはっはっは~! はは! クロメ、いつまでその設定引きずってるのっ! あんたが悪い人なわけないじゃん♪」
「私は悪だよっ。悪人だよ! だって闇魔法使えたし」
少女の瞳にはまだ涙が残っている。けれど、その涙にも負けないほど輝く笑顔が私の心を照らす。凄く笑顔がまぶしい。この子、こんなに可愛かったんだ。
「いいやっ、あんたは絶対いい人。顔を見れば一目でわかっちゃうよ。まっすぐ生きてそう」
「私ってそんな顔してるかなぁ~」
「してる! めっちゃしてる♪」
「そっか。じゃあ私は、良い人だったのかな?」
「うん♪ 絶対いい人だったよ!」
青い光が照らす神秘的な夜空の中、二人の少女は友達になった。クロメは闇魔法を解き、幼き少女を抱きしめる。彼女の狂気と悲しみを受け止めるように。やがて箒の魔力が尽き、3人と1匹はともにキュウリにまたがり、青い光と対決することになる。
「クロメ、どうやってあれを止める?」
風少女が、私に解決策を尋ねる。
「う~ん、どうしよっか~」
私は考えを巡らせる。
「クロメっ、あれを見て!」
エメラルドが遠くを指さす。
ホワンホワンホワン……
!!! 何であれが、こんなところに!




