トンボの大群が舞う
「あ~っはっはっは~! この精霊トンボは、人肉を食べる特別製なんだよぉ。それに数も多いしな。大人しく、トンボのエサにでもなるがいいやぁ、はっはっは~」
キュウリに乗った女の子が笑う。
「このトンボたちを退けなきゃ。風よ、トンボたちを吹き飛ばせ!」
私が動くよりも早く、風少女の魔法がトンボに襲い掛かる。
激しい風の音と共に、トンボたちは下に吹き飛ばされ、この場にトンボがいなくなる。だが……
「はぁ、厄介なトンボはいなくなったね。けど、今の魔法でだいぶ魔力を消費しちゃった……」
彼女のため息が聞こえる。
だが、これに対して緑髪が異議を唱える。
「本当に、そうなのかな?」
「どういう、ことなの?」
「こういうことだ。再び姿を現せ、精霊トンボよ!」
…………
最悪。再びトンボの群れが出現し、音もなく私たちに近づいてくる。
「そ、そんな」
「コ~ン……」
「は~っはっは!」
緑髪が笑い、風少女とキツネさんがため息をつく。
「残念だったなぁ、私のトンボは、何度でも召喚できる。もし怖いのなら、また風の魔法で吹き飛ばしちゃってもいいんだぜぇ。 まあ~、魔力に余裕があればの話だがな。はっはっは~」
「くっ……」
「コォン……」
今回は、前方はもちろん、左右や後ろから、そして下からもトンボが近づいてくる。四方八方をトンボに囲まれる形になった。
今度は、私の魔法でどうにかしなきゃ!
でも、魔法ってどうやって出せばいいのだろうか? 以前、どんな魔法を使っていたのかも思い出せない。ただ、魔法を使ったことがある事だけしか覚えていない。
風少女は風の魔法を、緑髪少女はトンボの魔法を、それぞれ使っている。トンボの方はよく分からないが、風魔法は何となくイメージできる。
風少女の陽気で自由な感じが、風魔法にピッタリだ。それじゃ、私は?
自分の特徴は、自分ではよく分からないよ。
色々考えているうちに、いつの間にかトンボの大群がこちらに来ている。そして、それを風少女が魔法で吹き飛ばそうとする。
「風よ、トンボたちを……」
「ちょっと待って!」
魔法を中断させる。彼女の魔力は残しておく必要があるので、ここは私がどうにかするしかない。
「クロメ♪ 何か思いついたの?」
「ううん。何にも。けど、試してみたいことがあるの」
自分の特徴かぁ。やっぱりよく分からない。それなら? 特徴が分からないなら……
そうだ! 名前だ。 自分の名前が属性のヒントになっているはず!
自分の名前は、クロメ。
クロ、くろ、黒……
黒……黒……黒は暗い……
暗いは暗闇……
暗闇は…………闇!
私は、闇属性だ。闇使いの、エキスパートだ。たぶん。
「私は、もしかしたら悪なのかもしれません」
「クロメ? どうしたの?」
「私の体の中から、ダークパワーっぽい何かを感じます」
「ねえっ! 大丈夫?」
「私の中の闇よ! 生命の力を吸い取りし捕らえの物質を生み出せ!」
「「ダーク・ウエブ」」
私の魔法が、蜘蛛の巣状の巨大な糸を空中に張り付ける。白くて太くて、ねばねばしているが、糸全体が黒いオーラに包まれている。
「は~っはっは! どこを狙ってるんだぁ、クロメさんよぉ!」
私の魔法は、少しトンボから離れた位置に張り付いている。だが、決して狙いを間違えたわけではない。
……
……
……
「な、なんだと! トンボたちよ、言う事を聞くのだ!」
トンボの集団が、私の仕掛けた糸のところへと向かう。
……
……
……
糸に触れたトンボは、途端に身動きが取れなくなる。ねばねばとした糸が、トンボの自由を奪っているのだ。そして、トンボたちの元気がどんどん無くなってきているのが見てわかる。
「お前、私のトンボに何をしたんだよ!」
「私の闇魔法には、闇の力により対象を捕縛し、そのエネルギーを奪い続ける力がある」
「じゃあ、なんでトンボたちは引き寄せられたんだよ!」
「……闇魔法に、甘い香りを加えてみました」
「くそ、おのれい……」
「今だよクロメ!」
風少女が攻撃のタイミングを教えてくれる。
「私の中の闇よ! 生命の力を吸い取りし捕らえの物質を生み出せ!」
「「ダーク・ウエブ」」
緑髪少女が、蜘蛛の巣状の巨大な糸に捕らわれる。
「おのれ、おのれ、おのれぇ……」




