対抗策
「喜べ、私が邪魔しに来てやったぞ」
四本の割りばしをつけた巨大なキュウリに乗りながら、不気味な笑みを浮かべる緑髪の女の子が、奇妙なことをつぶやきながら笑い続ける。
嘘でしょ、このタイミングで妨害? かなりのピンチだ。
ただでさえ船に追いつけない状況で、もうじき箒が動かなくなってしまう。それに、安全に地面に降りるためには風の少女の魔力を残しておく必要があるので、魔力を温存しつつ緑髪を退ける必要がある。……正直八方塞がりかも。
今の私たちの戦力は、魔力を温存しなければならない風少女に、もうじき動かなくなってしまうこの箒、そして、戦い方も忘れてしまった私と、黄色いキツネさん。……あとは私たちの周りで、妙な存在感を出しながら浮遊しているこの泥の塊。
これでどうやって戦えばいいのか。
色々考えているうちに、風少女と緑髪少女の会話が始まる。
「エメラルド、私達の邪魔をしないでよ!」
「そういうわけにはいかないぜ。ちょ~っとくらい楽しませてくれよぉ」
「あなたを楽しませて、何の得があるの!」
「私が楽しい思いをするのだ!」
「もう、あんた最悪!」
少女と緑髪の二人が口論を続ける。
「わははははは! それは何なんだぜ? その泥の塊はよぉ! お前たちの周りをプカプカ浮遊していてすっごく愉快だな!」
「私にも分からないよ! 一体これは何なの?」
「お前にも分からないのかよ。ぷはははは! ミステリアスな泥の塊、プハハっ! 最高じゃないか!」
「そういうあなただって! 何なのその乗り物! なんでキュウリなんかに乗ってるの?」
「これはキュウリなどではない! 神聖なる精霊馬だ。間違えないでもらいたい!」
「精霊馬って……ただキュウリに割りばしがついてるだけじゃない!」
「それを精霊馬というのだ、しっかりと覚えるんだな。ところでお前、大丈夫なのか?」
「大丈夫なのか、ってどういうことなの?」
「箒の魔力が、残り僅かなんだろ? それにクロメとやらの記憶も取り返さないとまずいんだろ? こんなところで口論していて大丈夫なのか?」
「あっマズイかも」
すっかり二人の口論に夢中になっていた。こんなところで止まっている暇はない。
この状況をどうにかしないと。箒が動かなくなるまでに、風少女の魔力消費を最小限に抑えつつ緑髪を退けないと。とにかく速攻でなんとかする必要がある。でも、どうやって?
「クロメ、二人であいつをやっつけるよ!」
「どうやって戦えばいいの?」
「私が箒を操縦してあの子の攻撃を避けるから、クロメは魔力を玉に変えて、それを放って攻撃して。そして、ここぞというタイミングで強力な魔法を使ってとどめを刺すの」
「それは、何となくダメな気がする。別の方法はないかな?」
私は、彼女に別の方法を勧める。
「別の方法ねぇ……あ、そうだ!」
「いい方法、あった?」
「うん! あの子を頑張って捕まえて、髪の毛にこっそりとミニマム爆弾を仕込むの。そして、空からポイする。これで万事解決じゃない?」
「…………だめだよ!!」
私たちは、うまく作戦がまとまらない。いろいろと話しているうちに、緑髪少女が話に割り込んでくる。
「お前たちが来ないのなら、私から行くぜ!」
「精霊トンボよ、暴れてやれ!」
緑髪少女がトンボの大軍を召喚する。ざっと見て百匹くらいだろうか、とにかく数が多い。それらのうちの一部がこちらに向かってきて怖い。
「きゃあっ! このトンボ、私の肌をかじって……」
ガブッ
私の肌も、かじられた。両手と右耳を、かじられた。
ドバ、ドバ……
うわあ!! 血だ、血が出てる……
「風よ、トンボを吹き飛ばせ!」
ホワァ~
風少女の魔法でトンボたちが吹き飛ぶ。はあ、助かったぁ。けど、今ので彼女の貴重な残りの魔力が……
…………
トンボたちを撃墜したはいいものの、残りのトンボたちが音もなくこちらにやって来る。まだこんなにいるっていうの?
「あ~っはっはっは~! この精霊トンボは、人肉を食べる特別製なんだよぉ。それに数も多いしな。大人しく、トンボのエサにでもなるがいいやぁ、はっはっは~」
こんなところで、負けるわけにはいかない。何とかして、この状況を突破しなくては。
思えば私って、記憶を失ってから風少女に頼ってばっかりだったな。私はただ座っていただけ。彼女がせっかく考えた作戦も否定してばっかだし、なんだか情けない。
私も、何か力になれるかな? この状況を突破できる何かさえあれば……
とりあえずなにか、魔法を放とう。
……私って、どんな魔法使えたっけ?




