何か思い出せそうな
自信が持てなくて夢を諦めていたカオリン。そんな彼女に私から言えることは一つだけ。
「なら、本当にマーチングバンドに入りたいと思うなら、そうすればいい。ミカンちゃんは確かに素敵だけれど、カオリンも全然負けてないと思う。ひたすらマーチングバンドに打ち込むカオリンの姿は、きっとミカンちゃんにも劣らず魅力的だよ。あなたは、彼女の隣で十分やっていける」
私の言葉を聞いたカオリンは、晴れた表情に。
「そっか。私でも、ミカンちゃんの隣にいられるんだ♪」
私たちは、左右に見える機械たちを見学しながら長い通路を進んで行く。私の言葉を聞いて、カオリンはマーチングバンドに加わる決心をした。四天王をすべて倒したらそのあとミカンちゃんに弟子入りするつもりらしい。これでカオリンの問題は片付いたけれど、私の問題はまだ片付いていない。
漆塗りの方法が全然分からないのだ。小さいころに漆の作品を作った記憶があるが、それはずいぶんと昔のこと。思い出せそうで思い出せない漆塗りの方法。
右側を見てみると、機械の力によりほぼ全自動で木器が作られているのが見える。作られた木器は、色を塗られることなくどこかへ流されていく。
もしかしたら手作業で色が塗られているのかもしれない。手作業で木器に色が塗られる工程を見学できれば、漆塗りの仕方を思い出せるかも。そんな淡い期待を持ちながら、長い通路を渡り終えた私たちは木器の流された場所へと向かう。
木器の流された場所の近くにやって来た私たち。そこに一つの扉があることを確認し、中へと進む。
わあ! 人だ、人がいっぱい。そしてその手には……筆と木器だ!
学校の教室のような場所で、何か会議のようなことを行いながら食器に色を塗っている集団がこの部屋の中にいる。そんな彼らを高い位置から見学する私たち。彼らからは私が見えないが、私たちは彼らの声を聴くことが出来る。
やった! 色塗りは手作業でやっているみたいだ。これを見れば、漆塗りの仕方を思い出せるかもしれない。
「おい、クリーボ。例の資料は出来上がっているな?」
教卓のような場所で、坊主頭の男性が机に座る男性に声をかける。彼の手には緑に塗られている木器と緑の絵の具のついた筆。皆が座りながら作業をしているのにもかかわらず、彼一人だけは立ちながら作業をしている。
彼の色塗りは、ほかの人と比べてみると格段にレベルが高い。きっちりとした色塗りがとても見事。恐らくこの集団のリーダーなのだろう。そして、そのリーダーに指名された人が立ち上がる。
「ええ。バッチリです」
中年なのにも関わらずおかっぱ頭の男性が、持ってきた資料を周りの人たちに見せびらかす。恐らく彼がクリーボなのだろう。彼はリーダー男性に劣らずレベルの高い作品を作り上げている。
二人の見事な木器作品を見ていると、不思議な感覚になる。何か、思い出せそうな気がする。
「これで我々の悲願が達成される。数年前からの地道な計画が、間もなく実行されるのだ」
何かを成し遂げた表情で、リーダーの男性が計画名を黒板に記す。
「非リア遊園地、建築計画!」




