ロマン技
やばい、やつ……
まともじゃ……ない。
そんな風に思われていたんだ、私。ちょっとショック。だけど落ち込んでもしょうがない、聞きたいことを聞かないと。
「マリリン以外の四天王のこと、何か知ってる?」
私の質問に対して、すぐに答えてくれるケリー。
「うん。マリリンのほかに、もう一人だけ知ってるよ。そいつの名はハワイアン。」
「ハワイアン? 変わった名前だね」
「変わっているのは名前だけじゃないよ。色々とおかしいやつなんだ」
「彼の行う様々な奇行のおかげで、彼の両親は周りから白い目を向けられている。この事から彼は、『親泣かせのハワイアン』と呼ばれているんだ」
親泣かせのハワイアン……なんかダサいな。とにかく彼の場所を聞かなきゃ。
「ハワイアンは普段どこにいるの?」
「彼は、ジェットスキー団団長だから、本拠地にいるんじゃないかな?」
「ジェットスキー団?」
ジェットスキー団って一体何なんだろう?
「ジェットスキー団、ビデオを作製し、販売している団体だよ。団員達が街を走り回りながら商品を宣伝しているんだけど、その宣伝のせいでこの街の風紀が乱れてしまっているんだ……あいつら好き放題しやがって!」
困ったような、怒ったような表情をしたケリーが、ジェットスキー団について教えてくれる。
「この町の人たちは彼らのことを止めないの?」
「あいつらはなぜか、この町の警備員たちとつながっているみたいで、ビデオ宣伝の邪魔をすると牢屋にぶち込まれちゃうんだよ。本当に狂ってる!」
どうやらケリーはジェットスキー団のことを嫌っているみたいだ。確かに彼らは少しやりすぎだと思う。
「あいつらはビデオを通して、自分の存在をアピールすることに喜びを感じているんだ。危ない人たちだから、絶対にかかわらない方がいいよ」
「自分をアピールしたいのかぁ。確かに変わった人たちだね」
ジェットスキー団、なかなか手ごわそうだ。けどそこに行けばハワイアンと戦える。目指せ、ジェットスキー団本拠地!
でも今の私たちの能力で、ジェットスキー団と戦っていけるのだろうか? ちょっと心配だな。何かとっておきの技が欲しい。
「ケリー、なんか必殺技教えて」
「必殺技、ですか……」
ケリーは困惑している。そうだよね、ちょっと無茶ぶりすぎるよね。必殺技なんて教えられないよね。
「今のクロメの能力値では、取得率が結構低いと思うけど試してみますか?」
うそ、教えてくれるんだ、必殺技。
「これが、僕の必殺技です」
シュン!
ケリーが立ち上がると、突然彼の姿がぼやけ始めた。彼の姿がだんだん薄くなって……二つに増える。
ケリーが、増えた?
「「まだまだ行きますよ」」
シュ!
シュ!
シュ!
ケリーが、いっぱい?
私たちのテーブルは、たくさんのケリーに囲まれてしまった。
「「「これが僕の必殺技、『分身囲み』です。器用さと機敏さが高くないと、取得するのが困難な技になります」」」
複数のケリーたちが、口をそろえて解説してくれる。声が重なってて面白い。
「わあ! すご~い!」
「コンコン♪」
デートの邪魔をしないように大人しくしていたカオリンとスズネが、興奮のあまり声を出してしまう。分身かぁ、すごいな。
私が分身を取得できる可能性はかなり低いみたいだけど、可能性があるならチャレンジしてみたい。そう伝えると、彼は特訓について解説してくれた。どうやら一時間ほど分身の原理を教わる必要があるみたい。
「……ごめんカオリン、スズネ。しばらくは話を聞くことになるよ」
「私も分身覚えたいし、別にいいよ♪」
「コ~ン♪」
結果は………………
まさかの大成功。
「あ~あ。私には分身の才能がないみたい」
どうやらカオリンは分身を取得できなかったみたい。
「まあしょうがないよ。相性が悪かっただけ。カオリンさんはカオリンさんに合った必殺技を取得すればいいと思います」
ケリーがカオリンにフォローを入れる。カオリンは悲しそうだ。
「コン、コ~ン♪」
次はスズネが挑戦するみたい。
「スズネさんはかなり器用で、機敏さも高めのようですし、ほぼ確実に分身囲みを取得できると思いますよ」
「コォン♪」
ケリーの言葉を聞いて、スズネはどや顔を見せながらしっぽを高速で振っている。とても余裕そうだね。
「コン!」
スズネの体がぼやけてくる。彼女の姿がだんだん薄くなって…………二つに増えない。
スズネが、増えない?
スズネが煙に包まれ、甘い香りを漂わせながら少しずつ煙が晴れてくる。
「スズネ?……」
スズネがいつもと違う。強気な表情だが、どこか優しさを感じさせる顔つき。耳が少し大きくなっていて、モフモフ感もアップしている。
特に美しいと思うのは、九つもある尻尾。立派な大きさになっていて、驚くほど滑らかになっている。私の語彙力では表せないほど美しい。
茶色く美しい長髪につやつやのお肌。若干着物っぽいデザインのTシャツとスカート。スズネ、ついに人間になったの?
「わ、我が何故このような格好に? とっても恥ずかしいコン♪」
高いのにどっしりとした声で、スズネだった少女は動揺している。どうしてこんなことに。
「どうやら大失敗のようだね」
ケリーが何か納得したような顔でつぶやく。
「大失敗?」
私はケリーに聞いてみる。
「この世界では、ほぼ確実に成功するであろうことに失敗すると、大惨事が起こるんだ。今回もきっとそれだと思う。召喚獣が人間になっちゃうなんて」
そんな、スズネが人間になっちゃうなんて……まあいいや、可愛いし。
「スズネ、今日から人間始めるの?」
「始めぬ。我はこれ以降、人の姿になるつもりはないコン♪」
腕を組みながら首を横に振るスズネ。顔が揺れるたび茶色の輝く髪の毛が揺れ、とても妖美だ。
「小僧よ、我を早く元に戻すコン♪」
「もう少ししたら元に戻ると思うよ。安心してね」
「それを聞いて安心した……分身の術を取得できなかったのは残念じゃったが、あ! そろそろ元に戻るコン♪」
ポン!
あぁ、元に戻っちゃった。ちょっと残念。
「コ~ン♪」
ご機嫌になったスズネが私に抱き着いてきた。モフモフしてて可愛いな。
「いよいよクロメの番だね。頑張って♪」
「コン♪」
カオリンたちが応援してくれる。ここは成功させちゃおう!
「分身囲みの術!」
私が術を唱えると、一瞬にしてレストラン中に私があふれる。私がいっぱいだ!
「「「これが私の必殺技、『分身囲み』だよ。器用さと機敏さは高くないけど、運よく取得しちゃった♪」」」
レストラン中に私の声が響く。ちょっとうるさいかも。
「お客様、当店での過度な分身はお控えください」
「「「ごめんなさ~い」」」
「お客様! 謝る前に、分身を解除してください! 皆様の迷惑になります!」
あ~あ。怒られちゃった。
「これは驚きました。あの能力値で、これほどの数を一瞬にして出すなんて。なんという奇跡」
「クロメ、すっごい!」
「コ~ン♪」
三人ともすごく驚いている。けれど、まだ終わりじゃない。分身解除。
レストランのあちこちに散らばっていた私が、地形を無視して本来の私のもとへと集まっていく。スズネ、力を貸して。
私のお願いがスズネに伝わったよう。スズネが私に黄色いエネルギーのようなものを送ってくれる。
「一体何が起こってるんだ……」
「クロメ、どうしたんだろう」
分身が私の中に入っていき、私は黄色の光に覆われる。すると体中が不思議な感覚に包まれる。
この感じは、まるでスズネと一つになっているかのよう。しばらくこの感覚は続く。
光が、収まってきた。
光の収まりと共に、鮮やかな黄色の長髪が、私の視線に映る。金髪というよりはっきりとした黄色、私の物のようだ。
この感触は……私、スズネっぽくなっちゃったみたい。
「これは、合体でしょうか? でもスズネさんはこちらにいますし」
「クロメ、まるでスズネみたい♪ ふわふわしてる!」
やっぱりスズネっぽくなってるみたい。でもなんかいい感じだな。合体! ってなんかロマンあってかっこいいし。
「これが私のロマン技、スズネモードだよ!」
クロメの能力大幅にアップ
知能 2up 13→15
機敏 5up 10→15
器用 5up 19→24
クロメ(召喚士) HP8/8 7コイン
筋力:10
魔力:17
対話:19
知能:15
器用:24
機敏:15
装備:アイスソード(与ダメージ+5 氷属性攻撃 命中率+30%)
暖かいコート(被ダメージ-3 氷耐性30%)
スキル
召喚術 LV4 :モンスターを召喚でき、モンスターの秘めたる力を開放することができる。1度に2体までなら同時に召喚することが出来る。
気配察知LV1 :視線の範囲内で、人やモノの動きを読み取れるようになる。
分身囲みの術 :?????
スズネモード :?????
所持アイテム
ランクG
石50 砂37 土34 赤い岩13 黄色い岩48 木の棒、木の弓、汚い液体×2、万能蛇口 腐った岩
ランクF
遠心分離機
ランクE
万能鍋
ランクD
ミニマム爆弾×8 白い宝石×2
ランクC
職人の筆:持ち主とともに成長する筆




