完成
私は、何も塗られていないお皿と、絵具、筆の3つのみに意識を集中させ、他の情報をすべてカットする。作業中は気を散らすことが許されない。
色を塗ることだけを考える。何度も筆を動かし、思い描いたイメージどうりに動かす。そうしていくうちに、少しずつ完成に近づいていく。
練習しているときに、きれいに色を塗れないこと悩んでいた時、デイさんが私に、職人の心構えについて語ってくれたのだ。
難しいことを考えずに、楽しんで作品を作ることが大切だと。
楽しんで作品を作る、簡単そうで難しい。作業に集中しようとしていると、楽しんでいる余裕がないのだ。けれど私は楽しみながら作品を作りたいと思った。そうすれば、私はいい作品を作れる、そんな気がする。
「おおっとクロメさん、なんとすべての色をお皿に塗ろうとしています。このままじゃあぐちゃぐちゃな色になってしまう!」
「本当に、そうかしら?」
「シリカさん! いつの間に私の隣に? というか一体どういうことでしょうか」
「彼女のあの表情、何かあると思わないかしら?」
「さあ? 私にはよくわかりませんけれど」
「そう。まあいいわ。見てなさい」
シリカと司会者が何かを話している? 少し気が散ってしまったけれど、手を休めず作業を続けた。
私は作品の色をどうするかで、すごく悩んだ。どの色を使えばいい作品を作れるか、色々考えていると、突然いい考えが思い浮かんだのだ。
黒くしちゃおう! そうすればムラが目立たなくなる。
黒の絵の具がなかったので、赤、青、黄色、すべての絵の具を使って黒を作ることになった。かなり難しかったけれど、何とかきれいな黒にすることが出来たのだった。
「これはすごい。クロメさん、三色を絶妙に配合させて、完全な黒を作り出した!」
「やっぱりね。そう来ると思ったわ」
「シリカさん、まさかこうなる事を読んでいたのですか?」
「ええ。もちろん」
何でシリカと司会者が一緒に話しているんだろう?
まあいっか。気にしてても仕方ないし。
私は思うがままに筆を動かし、やがてお皿は黒一色に輝く。私の作品がついに完成した。
「クロメさんの作品が完成しました。勢いを感じさせながらもきれいな出来となっております」
「わああああああああ」」
観客たちが何か騒いでいる。ちょっと騒がしいな。そっか、私で最後だったね。一体誰が一番になるんだろう?
「Bグループのすべての作品がそろいました。これから一番を決めたいと思います」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「いええええええいいいいいいいいいいいいい!」
一番がこれから決まるのか。
「Bグループのトップは……」
Bグループの、トップは……
「……さんです!」




