私だけの方法
「すごい……」
デイさんの作り上げた青く輝くお皿を見て、思わずつぶやいてしまった。この仕上がりは、何度も何度も絵具を塗り重ねたことにより作られたものだ。ただ均一に塗られているのではなく、色の濃淡がうまく表れていて、深みを感じさせるものになっている。
青いお皿を見て感嘆の声をあげるとともに、どこか懐かしさも感じていた。子供のころに感じていた、なんとも言えない感覚を、あの作品は私に思い出させる。すごい作品は、人の心を動かしてしまうものなのかと実感してしまう。
解説の人も大絶賛している。観客も大騒ぎ。これだけ多くの人を魅了する作品、私にも作れるかな?
デイさんの次は、シリカが司会者に呼ばれる。彼女は一体、どんな作品を作るのだろう。
「それじゃあ始めるわ」
初めの宣言をした彼女は、赤の絵の具をふんだんにパレットへと移し、筆でそれを混ぜ、あろうことか水を入れることなく、それをそのままお皿へと塗り付ける。ああ、そんなことをしたら……
「おおっと、シリカさん。水を使わずに絵具を塗ったぁ! 塗ったところがネトネトになってしまっています! これは勝負を捨てたか?」
司会者の人も困惑している。どうしてこんな事をしたのだろう? けれど彼女の表情からは、自信が感じられる。何か、考えがあるのだろうか?
やがて、お皿のすべてが塗られると、シリカがつぶやく。
「それじゃあ決めるわ」
彼女は筆に付いた絵の具を水で洗い、濡れた筆を、粘ついているお皿に付ける。まさかこれがシリカの塗り方なの? それはちょっと無理があるんじゃないかな?
「これは一体どういうことなのか! 水をそのまま付け始めました。どうなってしまうのでしょうか!」
司会者も驚いている。
一度ベトベトに塗ったお皿を水を使って整えるなんて、かなり困難だと思う。たくさんのムラが発生してしまうし、そもそもきれいに塗ることが難しいだろうし。どうなるか楽しみだな。
「ふぁあ。」
私の口から突然あくびが出る。そして次第にだんだんと眠くなってくる。
そうか、私最近全然寝てないからなぁ。冒険に夢中になりすぎちゃったな。これからはちゃんと睡眠をとるようにしなければ。
私は夢の世界へと旅立った。
「は! おはよう!」
「おはよ~」
「ココ~ン♪」
目が覚めると、カオリンとスズネが隣にいてくれた。二人とも笑顔で迎えてくれたけれど、その表情にどこか悔しさを感じさせる。二人の分まで頑張らなくちゃ。
「完成だわ」
シリカが作品を完成させたようだ。彼女の作り上げた作品を見て、私は衝撃を受けた。
その激しさはまるで、荒れ狂う獰猛な火山のよう。すさまじい勢いで塗られていて、なおかつとても鮮やか。この完成度は、芸術作品の域まで達している。あんな無茶苦茶な塗り方で、ここまでの完成度のものを作れるなんて。
観客たちの歓喜の声が鳴りやまない。司会者に至っては、感動のあまり声を失っている。
「これが私の、とっておきの塗り方。ほかの人には決してマネできない、私だけの塗り方。クロメ、あなたはこれを越えられるのかしら?」
「越えられるかどうかじゃない。超えてみせるよ!」
「そう、頑張ってね」
「おおっと、シリカさんとクロメさん、何か訳ありのようだ! これは熱い。それではクロメさん、始めてください」
いよいよ私の番が来た。後悔しないよう、全力でやらなきゃ。
「頑張ってね、クロメ」
「コンコン!」
二人から応援される。期待に応えなくちゃ。




