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「忍の里編」 第一幕:―静かな火種―


戦国最強の忍、幕末に舞う〜坂本龍馬を救ったのは、歴史から消された「大友宗麟の忍者」岡田以蔵」だった〜


「忍の里編」 第一幕:―静かな火種―





-

 囲炉裏の火が、ぱちりと音を立てた。


 吉祥寺、忍の里――乙原の里。


囲炉裏の間


 正直に言うと、わし――坂本龍馬は、ちくと場違いな気分じゃった。


「……なんとも、静かすぎるのう」


 そう呟いた瞬間。


「静かな場所ほど、よく死ぬ」


 隣で腕を組んどる男――岡田以蔵が、ぼそりと言う。


「物騒じゃのう、おんしゃあは」


「事実だ」


 相変わらず愛想がない。


 だが、その言葉が冗談じゃないことくらい、この里に入った時点で嫌というほど分かっとる。


 ……見えんだけで、何人おるんじゃろうな。


 気配だけなら、何十人分もある。


 その時だった。


「揃った」


 背筋に、氷を流し込まれたような感覚。


 振り向くと――


 いつの間にか、そこに立っとる女。


 聖痕のジャガス鬼姫。


「相変わらず、気配がないのう……」


「消しているだけ」


 さらりと言うあたりが、余計に怖い。


 鬼姫はわしらを一瞥すると、背後に目を向けた。


「出て来なさい」


 その一言で――空気が変わった。


 ざわり、と。


 見えんはずの“何か”が動く。


 そして。


 一人目が、現れた。



---


■水の少女


 足元の吉祥寺の水路の水が、すっと揺れた。


 そこから現れたのは、水色の着物着た金色の髪をした少女。


「雫・ア・アンジャ・グアルディアン」


 鬼姫が名を告げる。


「……よろしく」


 小さく頭を下げるその仕草は、どこか普通の娘のようにも見える。


 だが――


「この子、水に触れれば全部分かる」


「全部?」


「敵の位置も、呼吸も、嘘もだ」


「……ほう」


 わしは思わず感心する。


 すると少女は、少し困ったように笑った。


「そんな大げさじゃないです」


「いやいや、十分すごいぜよ」


 素直にそう言うと、彼女は少しだけ嬉しそうに目を伏せた。



---


■猿の軍勢


「次」


 鬼姫が言った瞬間。


「よっ!」


 屋根から飛び降りてきた毛皮を着た男が一人。


 その背後で、無数の影が跳ねる。


「朔太郎・オ・エスクード・デ・ペロ!」


 にっと笑うその男の周りには――猿、猿、猿。


「……えらい数じゃのう」


「200匹。全部、俺の仲間だ」


 指を鳴らすと、猿たちが一斉に動く。


 整列。


 統制。


 ……軍隊じゃ。


「すごいのう、これは」


「だろ? 索敵も防御も全部こいつら任せ!」


 楽しそうに笑う姿は、妙に人懐っこい。


 さっきの緊張が、少しだけ和らいだ気がした。



---


■鉄の男


「次」


 重い音がした。


 ゆっくりと現れたのは、大柄な男。


黒の道着に袴「別府鉄馬・フォイセ・デ・ブーメランギ」


 鎖が、かすかに鳴る。


 手にした奇妙な武器――鎌と鎖。


「軌道で殺す」


 短い言葉。


 だが、その意味は重い。


「防ぐほど、当たる」


「……ほう、理屈で斬るタイプか」


 以蔵が興味深そうに笑う。


 鉄馬はわずかに頷くだけ。


 だが、その目はしっかりとこちらを見とる。


 ――敵ではない、と判断しとる目じゃ。



---


■赤い静寂


「珠・ア・プラーガ・ヴェルメーリャ」


赤い着物を着た美しい女。


 その名が告げられた瞬間。


 足元が、赤く動いた。


「……っ」


 思わず一歩引く。


 蟻じゃ。


 無数の、赤い蟻。


「大丈夫。仲間は刺さない。外国から持ってきた」


 静かな声の少女。


 その周囲だけ、異様な空気。


「……頼もしいのう」


「……うん」


 短く頷く。


 それだけなのに、不思議と安心感があった。



---


■最後の影


 そして。


 最後の一人は――


「……いつからおった?」


 気づいた時には、すぐ横に立っとった。


「炉・ア・ガーラ・デ・フェーロ」


茶色の道着に袴。


 鬼姫が言う。


 男は無言。


 ただ、拳を軽く握る。


 その隙間から、鉄の光が見えた。


「十字手裏剣……か?」


「投げない」


 初めて、声を聞いた。


「手に隠して近づき刺す。斬る。暗殺剣だ」


 

 無駄がない。


 ……恐ろしいほどに。


 以蔵が笑う。


「いいじゃねぇか」


 炉は何も言わん。


 だが、ほんのわずかに視線を向けた。


 それだけで――通じとる。



---


■鬼姫の言葉


 五人が揃った。


 鬼姫が、ゆっくりと前に出る。


「これが大友忍軍の新たな五忍」


「坂本龍馬殿の護衛です。」


 護衛、か。


 わしは思わず笑った。


「ずいぶんと豪勢じゃのう」


「当然です」


 鬼姫の目が、わしを射抜く。


「あなたは――狙われている」


「新撰組、見廻組、そして外の勢力」


「すべてが敵になる」


 しん、と静まる空気。


 だが――


「上等じゃ」


 わしは、前に出る。


「わしは死なんぜよ」


 五人の視線が集まる。


「この国を、変えるまではのう」


 一瞬の沈黙。


 そして。


「……いいね、それ」


 朔太郎が笑った。


「面白そうだ」


 鉄馬が頷く。


「合理的だ」


「……守る」


 雫が小さく言う。


「……任せて」


 珠も続く。


 炉は何も言わん。


 だが――一歩、前に出た。


 それで十分じゃ。



朧が言った。


「それじゃ。ウチで、お酒飲もうか。」



坂本龍馬「おー…以蔵の新居でか…いきたいぜよ!」



つづく

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