影の守護者・転生編 第二章「乙原の里 ― 影の国」
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戦国最強の忍、幕末に舞う〜坂本龍馬を救ったのは、歴史から消された「大友宗麟の忍者」」だった〜
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影の守護者・転生編
第二章「乙原の里 ― 影の国」
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潮の香りが、強くなった。
船がゆっくりと岸へ近づく。
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眼前に広がるのは――
別府湾。
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朝焼けが海を染める。
漁船がいくつも浮かび、
網を引く掛け声が響いていた。
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「着いたぞ」
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キキが静かに告げる。
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港に降り立つ。
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そこはただの漁村ではなかった。
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「……気配が多いのう」
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岡田以蔵が呟く。
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「分かるか」
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キキがわずかに笑う。
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「ここにも“忍び”がいる」
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「海忍だ」
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漁師たちは無骨に見える。
だがその動きは、無駄がない。
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網を引く腕。
舟を操る足。
視線の配り方。
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すべてが――戦える者のそれだった。
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「この漁村も大友忍軍だ。」
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「毎日、山と海で物資と情報を交換する」
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以蔵は黙って頷く。
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「行くぞ」
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山へ向かう。
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道はすぐに傾斜を増し、
砂利道から土の山道へと変わる。
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水の音。
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振り向くと――
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白い滝が落ちていた。
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乙原の滝。
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「……見事じゃ」
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「ここは修験道の修行場でもある」
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山伏たちが、水に打たれている。
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だが、その中に混じる“視線”。
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「他藩の忍びも来る」
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「ここで修行し、情報を落としていく」
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キキは淡々と続ける。
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「そして――肉を食う」
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「……は?」
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「牛肉だ」
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「温泉もある」
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「他では味わえない」
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以蔵は呆れたように笑う。
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「……修行か、それは」
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「両方だ」
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山道をさらに進む。
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その奥――
牛の群れ。
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ゆっくりと草を食む。
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「……牛じゃと」
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「ポルトガルとオランダの文化だ」
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「肉、ミルク、チーズ」
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「全部ここで作る」
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「ここは修験の場でもあり、交流の場でもある」
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山伏の中に紛れる忍びたち。
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「他藩の者も来る」
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「そして肉を食い、温泉に浸かり、情報を落とす」
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「……変わった修行じゃのう」
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「効率的だ」
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さらに進む。
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段々畑。
牛の群れ。
鶏の鳴き声。
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「ここは自給自足だ」
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「野菜、米、肉、乳」
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「戦うためには、生きねばならん」
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その時――
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ゴロゴロ……と低い音。
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以蔵が振り向く。
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山の斜面に――
細長い“鉄の道”。
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「……なんじゃあれは」
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木と鉄で組まれた軌道。
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その上を、台車が滑るように降りてくる。
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積まれているのは――鉱石。
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「採掘場からの搬送路だ」
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「レール……と呼んでいる」
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「山の奥で掘ったものを、ここへ運ぶ」
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「金、銀、銅、そして鉄」
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以蔵の目が細くなる。
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「……この山、宝の山じゃのう」
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「その通りだ」
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やがて――
炎の世界へ辿り着く。
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溶鉱炉。
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斜面を利用した巨大構造。
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炎が唸り、鉄が溶ける。
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だが――それだけではない。
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黄金色の光。
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白銀の輝き。
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赤銅の鈍い光。
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「金、銀、銅の精錬もここで行う」
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「これが――資金源だ」
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職人たちが無言で作業する。
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貨幣。
延べ棒。
細工品。
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すべてが“戦うための力”へと変わる。
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さらに奥。
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歯車が回る。
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異国の技術。
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「蒸気機関、兵器、工業部品」
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「すべてここで生み出す」
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以蔵は呟く。
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「……国が一つ、ここにあるようじゃ」
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「この石――」
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キキが拾い上げる。
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平たい石。
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「別府石」
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「鉄を含んでいる」
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炉の中で赤く溶ける鉄。
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それを叩く職人。
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刀。
槍。
鉄兜。
鎧。
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さらに――
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鎖鎌。
手裏剣。
釘。
ハンマー。
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だが、それだけではない。
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奥には――
異様な工房。
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歯車。
シャフト。
ネジ。
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そして――
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巨大な砲。
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「……大筒か?」
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「違う」
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「アームストロング砲だ」
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以蔵の理解を超えていた。
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「オランダ、ポルトガルから帰った者たちが作った」
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「蒸気機関も船も、潜る船も」
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以蔵の目が細まる。
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「……世が変わるわけじゃ」
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キキは何も言わない。
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さらに進む。
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やがて――
それは現れた。
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断崖。
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その中腹に――
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巨大な寺。
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吉祥寺。
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石壁。
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城のように積まれた
別府石の防壁。
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里の外周にも、同じ壁。
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完全な――山城。
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「ここが中枢だ」
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門をくぐる。
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中庭。
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道場。
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宿舎。
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多くの人間が、規律正しく動く。
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「独身者はここで共同生活だ」
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「寺侍の名残だな」
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奥から香り。
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料理の匂い。
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「御膳だ」
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巨大な台所。
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鍋が並び、火が踊る。
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朝、昼、晩、夜食。
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修行者も、忍びも、全員を賄う。
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「……すげぇのう」
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以蔵が呟く。
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風が、止まる。
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岡田以蔵は無意識に足を止めた。
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隣に立つ女――
ただの忍ではない。
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「……ここは、“外”ではない」
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静かな声。
だが、空気を支配する力がある。
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女がゆっくりと振り返る。
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「名を名乗っておこう」
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一歩、前へ。
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「加藤・ジャガス・鬼姫」
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その名が落ちた瞬間――
空気が張り詰める。
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「この乙原の里を束ねる者だ」
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以蔵の喉がわずかに鳴る。
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(……格が違う)
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「そして――」
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ほんのわずかに目を細める。
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「忍びとしての名は、“聖痕のジャガス”」
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その響きは、ただの異名ではない。
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傷を背負い、なお立つ者の名。
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「この里に入る者は、すべて私が名を与える」
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「過去を捨て、“役割”として生きるための名だ」
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視線が、突き刺さる。
沈黙。
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その目が、まっすぐ以蔵を射抜く。
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「岡田以蔵」
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風が止む。
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「この里には、“加藤”と“須賀”しかいない」
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「加藤は戦闘と技術」
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「須賀は修験と情報」
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「どちらも忍びだ」
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一歩、近づく。
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「皆、忍びとなる時に」
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静かに言う。
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「忍び名を持つ」
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「異国の言葉も使う」
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「ここは、日本であり、日本ではない」
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沈黙。
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「お前もだ」
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鬼姫の声が重くなる。
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「今日から――」
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一拍。
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「受難のカルヴァ」
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空気が震える。
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以蔵の目が見開く。
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「……カルヴァ……」
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「受難を背負い、生きる者」
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「遠い異国の地で張り付けにされ、処刑され一度死に。再び蘇った男。
その一度処刑された場所の名がゴルゴダ(カルヴァ)の丘だ」
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沈黙。
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長い沈黙。
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やがて――
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以蔵は、ゆっくりと頷く。
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「……ええ名じゃ」
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拳を握る。
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「その名、背負うちゃる」
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顔を上げる。
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その目は、もう過去を見ていない。
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「わしは――」
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「受難のカルヴァ」
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低く、強く。
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「影として生きる」
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風が吹く。
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遠く――
鶴見岳の頂が光る。
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その頂からは――
瀬戸内海、由布院、府内、宇佐、国東まで見渡せる。
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狼煙が上がれば、すべてが動く。
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この里は――
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国を裏から守る“影”。
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そして今――
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一人の剣士が、“守護者”へと転生した。
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――続く
この技のリアルな動きはYouTubeで公開中!
「大友宗麟の忍者」
・「手裏剣の有効性についての検証」
・「アニメーションで見る豊後国・乙原の里・隠れ里の説明」
・大友宗麟の忍者の末裔が現代のスポーツ・アーチェリーや陸上競技で応用
・陸上競技ハードル走での忍術トレーニング
・陸上競技100メートル走での忍者ダッシュ!方法の説明!
などなど…
https://www.youtube.com/@%E5%BF%8D%E8%80%85%E3%81%AE%E3%81%8B%E3%81%A8%E3%81%86%E3%81%95%E3%82%93




