Steam City ― Healing Springs(癒やしの湯)
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Steam City ― Healing Springs(癒やしの湯)
吉祥寺。
朝の鐘が静かに鳴る。
医療術師に案内され、ビリー・ザ・キッドとガーラは湯治場へ向かった。
湯けむりが境内いっぱいに立ちのぼる。
硫黄の香り。
木造の回廊。
湯が流れる音だけが静かに響いている。
ガーラが笑う。
「ここが吉祥寺の湯治場だ…」
ビリーは周囲を見回す。
「……風呂で治療?」
「そうだ…」
「温泉の力で回復力を高める…」
「別府じゃ当たり前だ…」
---
脱衣所。
フォイセ・デ・ブーメランギが豪快に笑う。
「おう!金髪のプリンス!」
左腕は包帯で固定されている。
その隣では影丸・インフェルノ。
右腕にも厚い包帯。
しかし指は少しずつ動いていた。
「おはよう、ビリー。」
影丸・フランケンシュタイン・Jrは嬉しそうだ。
「ダディと一緒にお風呂!」
夜叉丸・デスペラードは眠そうな顔。
「サイレントサンダースカイの偵察続きで…五日ぶりの湯だ……。」
鞍馬・デステロはサスケハナ戦で受けた銃創の右脚を湯に沈める。
「銃創には温泉が一番効く…」
皆がゆっくり湯へ入る。
ビリーも肩まで浸かる。
「……。」
「気持ちいい…」
思わず声が漏れた。
「胸が痛くない……。」
ガーラが頷く。
「ジャガス様の治療と温泉…」
「その両方の力だ…」
---
大きな岩を挟んだ向こう側。
木の仕切りで男女の湯が分かれている。
女性たちの笑い声が聞こえる。
珠・ア・アンジャ・グアルディアン。
聖痕のジャガス鬼姫。
朧。
三人も静かに湯治をしていた。
珠・ア・プラーガ・ヴェルメーリャの声が木の仕切り越しに聞こえる。
「ジャガス様が一緒に入ってくださると……。」
「温泉の治癒力がもっと高まるんです。」
ビリーは驚く。
「そんな力まで……。」
ガーラは笑う。
「だから別府は湯治の里なんだ…」
---
しばらく静かな時間が流れる。
湯が流れる音だけが響く。
すると木の仕切りの向こうから、
プラーガがぽつりと話し始めた。
「……ビリーさん。」
「うん?」
「傷は……。」
少し間が空く。
「もう元には戻らないそうです…」
静かな声だった。
「傷跡は残ります…」
「こんな身体じゃ……。」
「もう、お嫁さんには行けません……。」
湯治場が静まり返る。
ビリーは木の仕切りを見つめたまま答える。
「そんなことない。」
「俺も胸に傷が残る。」
「ガーラも。」
「フォイセも。」
「戦場を生きた奴は、みんな傷だらけだ。」
少し笑って続けた。
「傷があるから価値がなくなる。」
「そんな考えの人間なら、俺は信用しない。」
木の向こうでプラーガが小さく笑う。
しかし次の瞬間。
少し怒ったような声が返ってきた。
「じゃあ!」
「ビリーさんが!」
「アタシを!」
「お嫁さんにしてくれるのですか!?」
男湯。
全員が固まる。
フォイセが目を丸くする。
夜叉丸が口を押さえる。
ガーラは無言…
Jrは首を傾げる。
「ダディ、お嫁さん?」
ビリーだけが静かだった。
数秒。
考えたあと、
照れくさそうに笑う。
「ははは……。」
そして木の仕切り越しに大きな声で答えた。
「そんな嬉しいプロポーズなら!」
「喜んで受けるよ!」
「よろしく頼む、プラーガ!」
女湯。
静寂。
そして――
「……え?」
珠・ア・プラーガ・ヴェルメーリャの声が震える。
「えっ?」
「えぇぇぇぇーーっ!?」
ジャガス鬼姫は思わず微笑み、
朧は両手で口を押さえた。
プラーガは真っ赤になって湯の中へしゃがみ込む。
「ほ、本当にですか……?」
ビリーは笑った。
「男に二言はない。」
「命を懸けて守った相手だ。」
「もし君が本気なら、俺も本気だ。」
プラーガは涙を浮かべながら笑った。
「……ありがとうございます。」
男湯ではフォイセが豪快に笑う。
「ガハハハハ!」
「目覚めて二日で婚約とは!」
ガーラも肩をすくめる。
「西部のガンマンは決断が早いな!流石に早撃ちだけの事はある!」
影丸・インフェルノは湯けむりを見上げ、静かに微笑んだ。
「戦場で命をつないだ者同士だからこそ、生まれる縁もある…」
硫黄の香りと湯けむりに包まれた吉祥寺。
激戦を乗り越えた者たちの笑い声が、朝の温泉にいつまでも響いていた。
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