第十話 ― 闇を裂く船 ―
戦国最強の忍、幕末に舞う〜坂本龍馬を救ったのは、歴史から消された「大友宗麟の忍者」」だった〜
第十話 ― 闇を裂く船 ―
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第一章|脱出
江戸の川。
夜霧の中――
屋形船が音もなく滑る。
その屋根に飛び乗る三つの影。
勝海舟
岡田以蔵
そして――朧。
船はそのまま、闇へと流れ出した。
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第二章|船内
障子の内側。
灯りが揺れる。
勝が息を吐く。
> 「……助かったな」
以蔵はまだ警戒を解かない。
朧は――
壁にもたれ、だるそうに座る。
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第三章|銃
勝が興味深そうに朧を見る。
> 「あんた女なのにすごいね」
視線は拳銃へ。
> 「その銃はメリケンの物かい?」
> 「見たことがあるよ。玉は、かーとりっじ……と言うんだろ」
> 「装填が速いし連射できるんだろ」
朧は面倒くさそうに目を細める。
> 「メリケンの銃じゃないよ」
軽く回す。
> 「この国で作ったんだよ」
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第四章|衝撃
以蔵が食いつく。
> 「日ノ本で!?つくったがか!」
> 「どこでじゃ!」
朧は顔も向けない。
> 「うーん……」
一拍。
> 「言えるわけないだろバカか」
以蔵の眉がピクリと動く。
(なんじゃこの女……)
勝が前のめりになる。
> 「日ノ本でか!?そりゃ凄い!」
> 「何処の藩だ!?薩摩か!?」
朧が舌打ち。
> 「だーかーらー」
> 「言えるわけ、ねーだろー!」
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第五章|未来
勝は食い下がる。
> 「他には!?どんな物が作られている!」
> 「教えてくれ!日ノ本の未来のために!」
朧はリボルバーを分解しながら呟く。
> 「ネチネチ面倒くせーなー……」
カチッ。
カチッ。
金属音。
> 「蒸気機関とか」
勝の目が見開く。
> 「蒸気機関!?」
身を乗り出す。
> 「あるのか!?作れたのか!?蒸気機関の船を!」
朧は淡々と答える。
> 「水を潜る船だよ」
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第六章|沈黙
……沈黙。
川の音だけが響く。
勝が、ゆっくりと呟く。
> 「……潜る?」
> 「船が……水の中に?」
朧は頷きもしない。
> 「音もなく近づいて、気づいた時には終わり」
以蔵が眉をひそめる。
> 「そんなもん……戦になるがか?」
朧が初めて少し笑う。
> 「もうなってるよ」
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第七章|世界
勝が低く言う。
> 「……外国か」
朧が短く答える。
> 「あいつらはもっと先にいる」
以蔵が黙る。
> 「剣じゃ届かん場所で戦ってる」
勝が拳を握る。
> 「だから龍馬は……」
朧が続ける。
> 「そう」
> 「あんたらはやっと入口」
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第八章|現実
以蔵が低く言う。
> 「……わしは剣しか知らん」
朧は即答する。
> 「それでいい」
以蔵が顔を上げる。
> 「え?」
> 「剣はまだ必要だよ」
目線だけ向ける。
> 「でもな」
一拍。
> 「剣だけじゃ負ける」
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第九章|勝の覚悟
勝が静かに笑う。
> 「面白い」
盃を手に取る。
> 「ならば全部手に入れる」
> 「剣も、銃も、船も」
> 「この国を変えるためにな」
以蔵が呟く。
> 「……龍馬と同じこと言うちょる」
勝は笑う。
> 「あいつは面白い男だ」
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第十章|影の存在
船が揺れる。
外。
屋根の上。
気配。
誰も気づかない。
鎖が、わずかに鳴る。
ジャリ……
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終章|流れる運命
川は静かに流れる。
江戸の闇の中。
船は進む。
誰にも見えない場所へ。
その中で――
未来の話が続いていた。
第十話・改 ― 闇を裂く船、出会いの刻 ―
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第一章|静かな川
江戸の川。
夜霧。
屋形船が音もなく流れる。
その中――
向かい合う三人。
勝海舟
岡田以蔵
そして――朧。
これは、初めての出会いだった。
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第二章|違和感
勝が穏やかに話す横で――
以蔵は朧を見ていた。
(……なんじゃ、この女)
恐れがない。
殺気もない。
ただ、普通にそこにいる。
まるで――
「人斬り」を見ていないかのように。
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第三章|人斬りの過去
勝が酒を注ぐ。
> 「岡田くん。さっきの話、続きを聞かせてくれ」
以蔵は少し黙る。
そして――
> 「……斬った」
低い声。
> 「京で……何人も」
視線は落ちたまま。
> 「夜に呼び止めて」
> 「振り向いた瞬間、終わりじゃ」
沈黙。
> 「何人か……分からん」
一拍。
> 「百は超えちょる」
> 「二百……三百かもしれん」
空気が重くなる。
普通なら――恐れる。
だが。
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第四章|変わらぬ態度
朧は――
まったく変わらない。
壁にもたれたまま。
リボルバーを分解しながら言う。
> 「ふーん」
それだけ。
以蔵の眉が動く。
> 「……怖くないがか」
朧は顔も上げない。
> 「何が?」
> 「お前じゃ」
カチッ。
部品をはめる。
> 「別に」
一言。
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第五章|見抜かれた孤独
しばらく沈黙。
川の音。
その中で、朧がぽつりと言う。
> 「寂しかったんだろ」
空気が止まる。
以蔵の目が見開く。
> 「……何を言う」
朧は淡々と続ける。
> 「誰も止めなかった」
> 「誰も見てなかった」
ゆっくり顔を向ける。
> 「ただ使われて、斬って、終わり」
以蔵の拳が震える。
> 「黙れ……」
だが、否定しきれない。
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第六章|初めての言葉
朧が言う。
> 「あんたさ」
> 「人間じゃん」
その一言。
それだけで――
以蔵の呼吸が止まる。
今まで。
誰も言わなかった。
誰も見なかった。
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第七章|揺らぎ
以蔵の声が低くなる。
> 「……今さらじゃ」
> 「わしは人斬りじゃ」
朧は即答する。
> 「だから何」
沈黙。
> 「これからどうするかだろ」
視線がぶつかる。
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第八章|未来の分岐
勝が静かに言う。
> 「いいことを言う」
盃を置く。
> 「岡田くん」
> 「君はもう斬るだけの男ではない」
以蔵は何も言えない。
ただ、考えている。
初めて――
“未来”を。
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第九章|伏線(影武者)
朧がぼそっと言う。
> 「ま、そのうち捕まるけどな」
勝が目を細める。
> 「どういう意味だ」
朧は軽く肩をすくめる。
> 「その時は、助けてやるよ」
> 「影武者とか使ってさ」
以蔵が眉をひそめる。
> 「……何を言いよる」
朧はニヤッと笑う。
> 「その時になれば分かる」
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第十章|関係の始まり
船が揺れる。
川は流れる。
以蔵は静かに座る。
もう先ほどとは違う。
朧があくびをする。
> 「眠い」
以蔵が小さく呟く。
> 「……変な女じゃ」
朧は即答する。
> 「あんたもな」
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終章|未来へ
江戸の闇。
屋形船は進む。
誰にも知られず。
この夜――
「人斬り以蔵」は初めて
人として扱われた。
それが――
すべての始まりだった。




