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ルッキズム死ね。でも美少女にはなりたい。  作者: :)
第五章『終わるもの』

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たとえば誰かに報いるために(3)

高次のエネルギーにより持ち上げられた歴史なき天守閣は、間もなく、金槌のようにGBを叩き潰さんとする。

が、


「だめだめ。それじゃ弱い」


GBの放つ、テニスボール大の数発の火球で全て蒸発して消える。

金属の溶けた臭いが二条城中に立ち込める。鼻をつんざく。


だが、凪野は攻撃の手を止めず、宙に浮かびながら、京の地盤を持ち上げ、街全体に大地震を巻き起こす。地割れが起き、GBの足元も不安定になる。やがて彼は、体勢を崩す。


その瞬間、コア子は駆けた。GBめがけて、一気に。


彼女が宝物殿からかっぱらった宝具。

左腕にジャラジャラとつけた2つの腕輪。


装着者の姿を任意で消す、『タキリビメ』。

装着者に相手の背後への瞬間移動を可能にさせる、『タキツヒメ』。


とかくクラミツハに接触することだけを考えた、宝物殿内最強装備。


「『イチキシマヒメ』はどうした?その宝具は、三本揃って完成だろう?」


「あぁ、いいんだ。最後の一本は"賭けてきた"から」


そう言うコア子は、間もなくGBの手元、クラミツハの前にさしかかる。接近されたGBは、当然、彼女とクラミツハとの距離を離そうとする。


が、それこそがコア子の狙い。瞬時、彼女はタキツヒメでGBの背後にまわり、直前に後ずさった彼に対し、クラミツハとの距離を一気に縮める。


「おっと」


尤も、この程度ではGBは揺るがない。彼はひょいと横に飛んでコア子を躱す。勿論、コア子は彼を追うが、GBはまだ余裕で、右か左か、どちらかなと体を揺らし彼女を煽る。


っておい、凪野を忘れんなよ。そう言わんばかりに、彼女はGBに向けて、思い切りに下に向いた力を、つまりは強烈な重力を叩きつける。


「…!」


GBの両足が地面にめり込む。彼は体を前に曲げるか、後ろにそらすかしかできなくなる。


そこに、コア子は駆け引きを仕掛ける。


「…!!」


消えた。GBの前からコア子が消えた。

だが、その消えたとは、つまり何だ。またタキツヒメで背後に回ったのか?それともタキリビメで透明化しただけなのか?GBは選択に迫られる。前か?後ろか?相手にボールに触れられたら負けのバスケットボール。


冷や汗を垂らしたGBは…、

そんな駆け引きごと、一気に燃やし尽くす。


「!!」


あと数センチでクラミツハに触れられる、その瞬間、GBは自身を覆うように爆炎を出現させた。「危なっ!」。コア子は、寸で凪野が念力でGBから離してくれたおかげで、何とか爆炎に巻き込まれずに済んだ。


爆炎を解き、ふぅと額の汗を拭うGBの前に、コア子達はふりだしに戻る。


「まぁ、一筋縄にはいかないか」


コア子は綽々と呟く。一方で凪野は、先程のGBの手立てに焦る。ああやって全身を火炎で覆われてしまったら、クラミツハには触れようがないと慄く。


「ど、どうすんのさ伊勢居地…?」


「あ?あぁ、まぁ」


だが、凪野の動揺はコア子には伝播しない。

彼女は冷静に言う。


「奴の防御には穴がある。クラミツハを持つ左手だ。一見にはアレも炎で覆われていたが、実際のところ、あの炎は"低温"のはずだ。だって、あの骸骨を熱で溶かせば、Black Outの力が戻っちまうからな。だから、本気の炎じゃアレは覆えない。それが奴の弱点だ。凪野、もう一度奴の体を固定しろ。多少やけどくらい何てことねぇ。今度こそあのハゲを撫でてやる」


そして彼女は、迷いもなく走り出す。


「…凄い」


それが凪野の率直な感想だった。今に護身用のリボルバーも持たず、隣に最強無敵のハタ・カナモリも居ないのに、この決断の速さ。躊躇の無さ。


正直、この戦いは戦闘向きの異能を持つ自分が引っ張っていくものだと思っていた凪野は、完全に面食らっていた。


言ってもコイツ、ちゃんと先輩なんじゃん。

自分を引っ張ってくれる存在なんだと知って、安心感が沸いた。

これなら、私も迷いなく戦えるとそう思えた。


…そう、油断した。


しかし、GBは圧倒的な強者なのだ。

それこそ、ハタ・カナモリくらいしか正面戦闘が出来ないほどの、

明らかなる格上なのだ。

それは、経験や状況判断能力においても同じで、


「やべっ…、凪野!!」


次の瞬間、


GBは、コア子を躱して、凪野を潰しに駆け出した。


凪野。

たまたま機関銃を手にしただけの彼女。

まだ、拳の握り方すらままならない。


ビロンギングとしてのイロハを叩き込まれたコア子とは違う、武器が無くとも十分戦える彼女とは違う。


凪野であれば、あるいは、

サイコキネシスは強力なれど、接近戦にて体術で抑え込むなんて、楽勝。


「がっ…!」


間もなく、凪野は、悠長に怯んでいる隙にGBに地面に叩きつけられ、うつ伏せの恰好で取り押さえられた。

そして、後頭部を鷲掴みにされた。


「はなっ…、放せ…!放せッ…!」


彼女は当然ジタバタする。必死に抵抗する、テレキネシスで吹き飛ばそうとする。

が、不干渉の力は、どうやら攻撃そのものを彼の肉体へ到達させない効果があるそうで、何も効きやしない。


(クソッ…!これか…!これかッ…!戦闘前に伊勢居地が言っていた、『殴り合いでは奴に勝てない』ってヤツは…!)

(能力の次元が違うんだ…!局長みたいに、“概念”にまで触れられる能力じゃなきゃあ…!ただ物質に作用するだけのサイコキネシスじゃあ…!!)


さっきはきっと、遊びに付き合ってくれていたんだろうな。しかし、ひとたび彼が本気になってしまえば、

凪野の何も、有効じゃない。


逆に、GBの全ては何もかもが有効。身体能力の差だって、彼女の後頭部めがけて何時でも放てる火炎だって、

今に彼女の脳を直撃する太陽神の力だって。


「面白いだろ?伊勢居地コア子にもこうしてやったんだ」


GBの力。

干渉と不干渉、そして、究極の太陽エネルギーを司る『Emotional Fire』で出来ることの一つ。

『他者の身体への干渉』


凪野の力は現在、コア子を捕らえるのに役立てられていた。

凪野を助けようと駆けた彼女を念動力で捉えるのに使われていた。


コア子は完全に身動きが取れなくなっていた。

まるで子供がガマガエルを鷲掴むように、残虐に。


凪野の心に後悔が溢れる。

悔しさのあまり、コア子の表情はみるみる歪む。

GBはその顔を嗤った後、言う。


「殺しはしないさ、君だけはね。が、また歯向かわれても面倒だから、両足くらいはもぐかな」


力が、ニュムっとコア子の両太ももを摘んだ。

ギュッと肉を圧縮し、千切ろうとした。

トンボの足を毟るように簡単に。


あっけなく、


コア子の口から絶叫が漏れて、凪野の口から悲鳴があがって、


それで、





クソ。


クソクソクソクソ。


頭がフラフラする。分かる。今、僕の体には明らかに血が足りない。

いつの間にか、背中の羽根が消えている。追い詰められている。


『戦いが嫌い』って彼の性格に期待し過ぎていた。

戦いに疎い彼は、寧ろ、矜持などなく、加減などなく、情けなどなく、容赦なく、


彼の身体を前に、僕のいかなる物理的攻撃も、まるで原子と原子の間をすり抜けるように空ぶってしまい、無効に終わってしまい、

頼みの冷却さえ、彼は周辺の分子の運動を思いっ切り加速させまくって、周辺全てを大きな電子レンジにすることで、攻略してしまった。


自身の分解と再構築を行うことで自在にテレポートを行える彼の移動を目で追うことは難しく、

追いつかない意識に対して叩き込まれる手数の多さと物量は、僕に対して有効でしかない。


手足を刃に変えて攻撃するにしても、腕や脚を何十本にも増やして、または、彼自身が何人にも分身して、

周囲の寺院に超電磁砲を生やして放つにしても、多数、多方面に、

足元をマグマに変える時だって、それはまるでマントルの中心をそのまま持ってきたみたいに高温で、それでいて市民プールのように広大で、

隕石を降らすにしたって、まるでスロットで大勝ちした時みたい。


曇り空なのに灼熱という、よく分からない気候のせいで、追いつかない無意味化を、たとえば氷の壁や鎧なんかで補うことができない。そもそも氷を意に介さない攻撃なことだってある。


僕に出来る唯一の抵抗は、傷が出来る度、勝手に再生していく自分の体を呪うことくらいだった。


防戦一方。僕に反撃手段はない。


いや、嘘。


あるにはある。


今に、周囲の空気を岩に変えられ、強制的に生き埋めにされ、だけども顔と胸と膝の皿だけは露出させる、死に対して無防備極まりない僕に吸血姫は叫ぶ。


『使え!我が半身!使っていい!私はフカのことなんて、もう何も思っていないから!だから…!』


だからよぉ、お前。

誰の思い出のせいで使えねぇと思ってんだよ。


「は!?なら、前みたいに体を乗っ取りゃいいじゃねぇか!でも、してねぇじゃん!その時点で見え透いてんだよ!このえこひいき!」


叫ぶ。今に貧血でフラフラになりながら、熱に侵され意識を保つのもやっとな思いでいながら、僕は自分の内に向けて叫ぶ。


「あのなぁ偏屈コウモリ!こっちはカナモリが殺されてんだよ!僕はフカなんか殺してぇんだ!なのに…、テメェだよ!テメェのせいなんだよ!テメェが嫌なヤツのまんまだったらこんなことにはならなかったんだ!」

「責任取れよ!蚊帳の外に居ないでさぁ!こっちに来て当事者になれよ!」


しかし、彼女は何も答えない。


フカも、何も答えない。


「そろそろ、終わりにしようか」


彼もまた、そんな下らないことしか吐かない。


(テメェもだよクソが…!なんだよ…!伝えたいことがあるなら言えよ…!僕じゃあるまいし、陰キャの僕じゃあるまいし…!)


そう悶絶しても、目下の危機が生きるか死ぬかであることは変わらない。


僕めがけて、木の杭を再び携えたフカがゆっくりと歩んでいることに変わりはない…。


ヤバい。ごめん。

コア子。僕、負けるかも…。



 …



そんな状況も知らず、


「無事かな…、みんな…」


久御山町に突入した、寝屋川は呟く。


ポールボールらが復活すれば、有象無象のキャスタウェイなんざ敵じゃなかった。梅小路公園からここまで辿り着くまでに襲いかかってきたキャスタウェイは約1500体。しかし、こちらの死傷者は、0。


豪軍機甲師団と合流した寝屋川は、総合作戦本部の命令に従い、大阪防衛ラインの再構築のために高槻市内への撤退、日米英軍と再集結を目指している。っても、今は別にやることが無いから装甲車に揺られながら窓の先を見つめている。


「不安なん?」


隣に座る一乗は尋ねた。寝屋川は、彼に苦笑いで返す。


「そりゃあね」


…走行音とは一方で、彼女の周りは、何だかとても静か。いや、違うのだけれども。ただ、存在の平静。部外。蚊帳の外。その手の静けさがあるのだ。


あの子ら二人を、これからどう保護するかな。Black Outの顕現も確認された今、それは明確に難題極まっている。

…シンちゃんという抑止力は、本当に巨大だったのだなと気付かされる。彼ならば、今の彼らとも日常を過ごせるのかなと、寝屋川は自分の小ささと比べて弱気になる。本当、どうしたものか…。


そう、思い悩んだ時だった。寝屋川のスマホが鳴った。新局長からだった。日本って凄い。この状況でも4Gで電話できる。新局長、中尾のオッサンは寝屋川に緊急だと叫んだ。寝屋川は、この期に及んで緊急じゃない連絡なんてないだろと思いながら、何だと尋ねた。


「核ミサイルだ!紀伊半島沖に浮上したオハイオが京都にめがけて核ミサイルを発射した!」


「は…、はぁっ…!?」


「キャスタウェイによる侵攻と、何より吸血姫の復活にかかってのことだそうだが…!」


「ことだそうだが、じゃないよ!何やってんのさ!?そういう臆病者共を宥めることも君の仕事だろうに!?」


「っても、発射されたものは発射されたんだよ!着弾まであと3分!現場の混乱を考慮して久御山町方面軍には君にしか連絡しない!他はそのまま撤退させつつ、能力で爆発の影響を京都市内に抑え込め!」


「そうだね!そうするしかなさそうだね!黙ってろ豚!!」


叫び、そして、走行中の装甲車から飛び降りる。

そりゃあ、命令には従う。従うが、心はココにない。たとえば現実改変で核爆発の事実を消したとしても2分しか持たない。2分後には再出した爆発のエネルギーが都市を襲う。だから、それじゃ吸血姫くん等も、周辺の住民も救えない。現実改変は周辺住民の保護に使うしかない。でも、だけど、吸血姫くんを逃がさなきゃ。コア子くんと凪野くんを逃さなきゃ。何とかして情報を伝えなきゃ。一乗くんに頼む?いや、間に合わない。だから手立てがない。クソクソクソ。もっと早く伝えてくれていれば、現実改変を2回発動できる余裕があれば。


恨みが募る。募りに募る。

唐突に下車した寝屋川への、一乗の呼び声が聞こえた。


その、0.5秒後、


衝撃と共に、大地が揺れた。まるで、寝屋川の心の募りを消し飛ばすかのように。

500m先、第二京阪道路をぶち折って、


「あー、心臓無いのしんど」


宇宙空間から、アゼヲが再臨した。


ここどこじゃ?とキョロキョロした彼女と、驚愕したままの彼女は目が合った。


しばし、静止した。

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