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ルッキズム死ね。でも美少女にはなりたい。  作者: :)
第五章『終わるもの』

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たとえば誰かに報いるために(2)

吐く息が一気に凍る。

空はもはや絶不調であり、この日本という地の気候帯そのものが書き換わりつつある。


今に吸血姫が放つ力は今までの比ではなく、Strike Onは間違いなく発揮できる。


「なんて、ことを…」


ヴァヴァは両膝をついて絶望した。が、そんな彼には悪いが、寝屋川はすぐに立てと言う。


「君たちが歩けるようになったなら、もはやこの場を死守する必要は無いからね。すぐに撤退する」


アム・イブ=サンの手を借りて立ち上がったヴァヴァは「クソッ…!」と吐き捨てた後、一乗からの回復力強化を受け、そして、現実改変から還ってきたキャスタウェイ共との戦闘に参加した。


ヴァヴァ達の、"当然の道理"は理解する。吸血姫は今も恐怖の権化に違いない。

それは、どうしようもなくこの世界の多数派で、覆すことは容易ではない。


しかし、だからこそ、寝屋川は祈る。


(吸血姫くん、見せてくれ。その力は時に世界を救うんだってことをさ。それはきっと、君が太陽の下を歩むための大切な財産になるはずだから…!)





黄金郷北部。

地図で言うところの二条城あたり。


「おー、エニシアの奴、黄金で天守閣作ったんだ。遊び心があるなぁ」


現代の大阪城よりも趣味の悪いショーグンビルディングを見上げ感心するGB。右手には老人の骸骨。

そして、振り返れば…。


「来たね」


伊勢居地コア子と凪野海。


「よぉ、さっきぶり」


私を殺さなかったこと、後悔してねぇよな?と悪態をつくコア子。

左腕に腕輪を二本まとっている。


「宝具か。愚かにも神の名を騙る、程度のしれた玩具。…いや、クラミツハみたいなアタリもあるから一概に否定は出来ないか」


「それに、私もいるしね」


二人の会話に口を挟んだのは、凪野。

ビロンギング成り立ての手ぶら女の子だが、身に並々ならぬ力を宿している。


「…うん。やはり、見立て通り素晴らしい力を覚醒させている。惜しいな。ベルベルベルンの力がもっと深く侵食していれば、人間を捨て、私達の仲間になれていたかもしれないのに」


「あいにく、ダチに泣かれたんでね」


「…くだらないとは言わないさ。それだって尊い感情さ」


「ただ…」そう言って、GBは左手に火球を出現させる。彼の力の象徴である、ミニ太陽。


「負ける気はないけどね」


彼に応じて、彼女たちも間もなく構える。


目的は一つ。


奴から過去を奪還する。



 …



一方で、黄金郷中央。

正に西院駅があったところ。

宮殿前。


フカと、…何かよく分からない、エソテリックな女の前に降り立った僕は、まず、何よりも舌打ちをした。

フカの顔が不快だった。


「何笑ってんだテメェ」


「いや…、やっぱり蘇っちゃうんだなって思ってね」


呆れ笑い、って感じなのだろうが。

しかし、それがどうにも気に食わなかった何よりの理由は、多分、そこに、安堵が見えたからだろう。


「お前、世界滅ぼす魔王なんだろ?だったらちゃんと出迎えろよ」


「そうだね、ごめん。自覚が足りなかった」


謝る。

そしてフカは、右腕をメカニカルなサーベルに変換させる。

僕の首を跳ね飛ばすには十分な鋭利さを心にまとう。


「やろうか。誰でもない、彼女に選ばれた君」


瞬間、フカは眼前からフッと消えた。


「!?」


その事実を驚愕として認知した直後、彼は僕の背後にまるで3Dプリントされたみたいに出現した。

首筋めがけて斬撃が放たれる。対し、僕は、咄嗟に作り出した、凝縮した氷の礫を爆発させて刃を撃ち返す。


爆発は激しく、フカは、弾き飛ばされたサーベルと共に体勢をのけぞらせる。

無防備になった彼の体。そこに、僕は、


「…!」


生成した、ただの氷の槍を叩き込む。

その攻撃に、フカは驚く。

ただの物理攻撃?残念ながら彼には無効。

槍は、ホログラム映像を突いたみたいに空振るしかなかった。


フカは少し乱した呼吸を戻しながら言う。


「驚いた。てっきりStrike Onを使ってくると思ってたんだがな…!」


「…ッ!」


うるせぇよ馬鹿。


使えるわけねぇだろ、あんな力。





…それは、黄金郷に向かう間に交わした吸血姫との会話だった。

僕が、Strike Onについて尋ねたことに始まる。


『Strike Onは無意味を司る力だ』


「…え?は?なに?」


意味不明だった。


「哲学?」


『違うわ』


「じゃあ何なんだよ。具体的に言えや」


『…たとえば、この力なら、相手の能力を無意味に出来る』


「あぁ、あれね。他には?」


『…痛みを無意味にもできる』


「へぇ、それもStrike Onの力だったんだ?」


『あぁ、この力の低次の部分だ…』


「ふぅん。で?」


『…え?』


「いや、で?他には?」


『いや、その…』


「?なんだよ?歯切れ悪いな?実は結構不便な能力なのか?」


『いや、そうではないさ…。私の力は謳われる通り、他の追随を許さない力さ…』


「うん、で?どこらへんがそうなの?じゃあ、たとえば、この力を相手に食らわせたらどうなんの?相手が無意味になんの?」


『…』


「…あれ?」


…いや、えっ?

あれ?

"相手を無意味にする"って、なんだ…?


『…無意味とは、つまり、存在の否定だ』


「存在の否定…?つまり、存在を消すってことか…?」


『まぁ…、結果的には、そうだな…』


「消す…。それって、つまり、どういうことだよ…?消すってことは、これをフカに当てるってことは、じゃあ、アイツはどうなるんだ…?」


『…』


「なぁ…、なぁ…!消えちゃうって、アイツが消えちゃうって何なんだよ…!?消えるってことは、消えるってことは、つまり、アイツの姿も、意思も、全部…!」


『…“独裁スイッチ”みたいに簡単なことさ』


能力に発動条件はない。

ただ、念じるだけでいい。


いかなる法則、概念、特性、情報も、ましてや宇宙そのものさえも無意味だと切り捨ててしまえるこの力にとって、たかが一匹の異形の命なんて些末なもの。


触れ合う余地も、対話する余地もなく、あっけなく終わる。


…そうだ、だから、この力はBlack Outに並ぶ、

もう1つの『無かったことにしてしまえる力』


世界を否定してしまう暴力性は、無慈悲なまでに理不尽で、


だから、こんなにも冷たくて、凍えてしまいそうなのだ。





…空中にタングステンの足場を形成しながら飛び石のように飛翔し、フカは僕の頭上に到達する。そして、“鋭利な右脚”で僕を真っ二つにしようとかかってくる。対し、僕は斬撃を無意味化して難なく両手で受け止める。そして、そのまま、僕の手のひらから刃、フカの右脚、胴体へ向けて原子すらも運動を停止する超低温を流し込み、彼を絶対零度の餌食にしようとする。


が、フカは怯まない。彼は凍結部とそうでない部分の境界にある細胞を即座に分解し、躊躇なく右脚を切り捨てる。次いで空気中の粒子を操作して欠損部を再構築する。


『Rage Your Dream(夢に死ね)』


全ての分子、原子、ハドロン、素粒子を自在に操る彼の力において、彼の残機とは、つまりこの宇宙そのものであり、脚の一本や二本など損失のうちに入らない。


また、攻撃手段は直接攻撃以外にも有り得る。


「!!」


刃での一閃がいなされるというのなら、今度は手数で。

次の瞬間、フカは僕の足元に何十本もの槍を生成させた。


(…!無意味化ッ…!)


が、認識がどうも間に合わない。

僕は間もなく、下からグサグサに串刺しになる。


「くッ…!」


血が吹き出る。痛みはない。

だが動けないので、僕は首を引きちぎり、古い体を捨て去り、肉体を再生する。

そして何事もなかったかのように元に戻る。


が、この一連こそが、フカの狙い。


『…やはり、彼は明らかに君に再生能力を強要することでの"失血"を狙っている。遡及的にとはいえ、"あの忌々しい血"を飲まされたことは本当に不味かったな…』


だから、長期戦はダメだと彼女は言う。それには同意。

しかし、だけど、どうやって奴にダメージを喰らわせる?

あのDr.マンハッタン野郎を、どうすれば捉えられる?


『…Strike Onなら、問答無用で可能だよ。だから、使え。あの力なら、異能を無効化しながら彼に迫れる』


「…だから、使わねぇって」


『わがままを言うな。使え。じゃなきゃ君が死んでしまうぞ?』


「うるっせぇなテメー!いいよ!その提案しか出来ねぇなら黙ってろ!」


『…だが、今の状況で力の出し惜しみなんて贅沢、出来るわけが…』


うるせぇ。

うるせぇんだよもう。


誰のために迷ってると思ってんだ。


なぁ、吸血姫。

フカ。


お前等のせいだぞ。今に僕が死にかけてるのは。

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