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ルッキズム死ね。でも美少女にはなりたい。  作者: :)
第五章『終わるもの』

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転回

健康的な褐色肌の一方で、神の生贄にでも選ばれそうな儚さと危うさを見目に備えた"真のムイスカ人"エニスタの力『ELDORADO』は見渡す限りの地に黄金郷を創出する力。

血の通わないビル、家屋、そして生物、死物を塗り替え生み出される荘厳な寺院。湯水のように溢れる財宝。理想郷。人類は瞠目する。


しかし、エルドラドは理想とは程遠い狂気の楽園である。建立された寺院より間もなく現れたのは、人類への復讐心を燃やす人外。人外。人外。

『そこに至ることを望んだ者を召喚する』魔力によって世界中から呼び寄せられたキャスタウェイ、総勢400万体。


革命の開始が10月3日の京都であったことは不幸中の幸いだった。

なにせ、キャスタウェイ共に下された命令は、ただひたすらな破壊、略奪。意思のままに生きること。暴力のままに生きること。

この世界に反対すること。


しかし、京都に人っ子一人いなかったおかげで、直ちに虐殺が始まることは無かった。今のところ、彼らの侵攻は、対吸血姫戦に参加しなかったビロンギングと、日米英豪軍による京都市包囲ラインにより抑えられていた。


だが、近代化により神と共に殺され、忘れ去られていた者達の怒りは激しく、少しずつ、少しずつ、世界を犯しつつあった。




…その様子を、ちょうど比叡山から見下ろしていた凪野は愕然としていた。


「なん…、これ…」


昨晩、友達を殺されたくない一心で、人類の敵になることを決心して、野宿覚悟で山ガールみたいな恰好をして寮を飛び出した、深夜、早朝にかけて東京からココまで飛んできた、彼女はてっきり、伊勢居地のお父さんと戦うんだと思っていた。


だが実際にあったのは、碁盤の目のちょっと南西側に生み出された御所よりも広いケバい輝きをした建物群と、特に京都駅以南に見える硝煙。そして聞こえる爆発音。


全然意味が分からなかった。

何がどうなってるの…?そう思った直後、本町紫野名義で契約してもらっている凪野のiPhoneがバーっとなった。


局長(元)だった。


「凪野くん!近くにいるんだね!?」


「えっ!?あえっ!?バレてるっ!?」


「そりゃあ、監視対象である君のスマホにはバックドアが設置されてるから…、いや、今はそんなことどうでもいい!」


凪野に端的に伝えられたのは、寝屋川らの現状だった。キャスタウェイの侵攻の波により陸の孤島と化してしまった梅小路公園を伊勢居地コア子捜索隊32名(うち13名は既に殉職)と共に何とか死守しているという危機的状況だった。


そして、命令だった。


「とにかく援護がほしい!ただし、君一人ではなく、恐らく本町家本家に居るであろう紫野くんと一緒に来てほしい!だから先ずは本町家本家に向かってくれ!」


間もなく、LINEで目的地の住所が送られた。

凪野は当然、すぐに向かった。テレキネシスで自分を浮かし、飛ぶ。


半分が消し炭になった邸を目にした時、凪野の脳に最悪の可能性がよぎった。


「紫野さん…!」


庭に降り立った直後、火事場泥棒に来ていた数人のキャスタウェイが襲いかかってきた。が、「邪魔!」と、あっと言う間に彼らの首を雑巾のように絞る。


残った邸中を探す。が、本町の姿は無い。既に逃げたのか?ホッとしてもいいのか?そう思った直後、凪野はあまりにも先が見えない下り階段を見つけた。


すぐに駆け下りた。そうして到達した、一面に広がる透明の湖のような地、つまり宝物殿。


異臭を放つ焼死体が一つ。


「ッ―!」


慌てて駆け寄る。肉が溶け、骨までもが黒焦げになっているその死体。だが、辛うじて焼き尽くされていない右肩から上、僅かに皮膚が残った顔の右半分で、それが本町紫野の遺体だと分かる。


「そんな…、なんで…、そんな…」


凪野の胸から巨大な悲しみが込み上げる。しゃくり上げ、震える唇から嗚咽が漏れようとした。

その時だった、彼女は、自分のものじゃない声が、宝物殿の中の方から小さくだが聞こえることに気付いた。


遺体をそっと置いて、音の方へ向かった。重い扉を開ける。


するとそこには、うずくまる伊勢居地コア子がいた。脱力していて、でも手足をモゾモゾさせていて、


絶望そのものって感じの彼女がいた。





「生かしたのか?その、用済みになった伊勢居地コア子は?」


黄金郷の中央、エニシアの計らいによって造られた宮殿の王座に鎮座するフカは頭蓋骨一個を携えて戻ってきたGBに尋ねた。


「まぁ、怖いからね。死の淵に追い詰められた彼女が、クラミツハを超越して力を取り戻してしまう可能性が。だからこうして、彼女は生かしたままクラミツハを手元に確保している状態が一番安全なのさ」


「なるほど…。じゃあ、これでBlack Outは封殺完了って訳か」


「まぁね。…それで?君の方こそ大丈夫かい?」


「なにが」


「吸血姫とハタ・カナモリの死体の処理だよ。やってきたんだろ?」


「…まぁ、ね」


「ふふっ、そうか。ならば、僕達に対抗し得る全ての可能性は全て摘み終えたってことだ。後は、暴徒共が世界を蝕んでいく様を眺めているだけ。心地良いな?」


「そうだね…」


フカは、王座に深々と沈み込み、耽ける。自分の家とは比べ物にならない程に豪華な宮殿、そして椅子。傍には計画の完全達成を喜ぶGBと、エニスタ。


吸血姫も、ハタ・カナモリも死に、アバシリ・セイも黄金に沈んで消え、アゼヲも多分死んでいる。世界中から集結した、吸血姫に対抗し得る程の猛者は梅小路公園で満身創痍でいて、今は寝屋川冬香が彼らの身を守っているが、いずれ彼女も力尽きて、蹂躙される。たとえ、何とか危機的状況を脱出されたとしても、あの程度の相手なら、少なくともGBやエニスタは苦戦しない。


これで終わり。全部終わり。

これ以上はもはやなく、後は現出された理想郷を享受するだけ。


…これが、彼の夢の果てであることに違いない。どうしても彼女に送りたかったプレゼントに違いないのだ。

だのに、彼は、どうしても不安になって呟いてしまう。


「ホントにこれでいいのかなぁ…」




そんな、彼の不安に応えるように、

イレギュラーは、水面下で根を広げていた。


それは、ちょうど寝屋川が自身の能力で2分間だけ眼前のキャスタウェイを消滅させた時だった。肝心のフカ達にはGBの『不干渉』により効きやしない、ほんの一瞬の時間稼ぎにしかならない慰めを行った時だった。


「ひッ…!えっ、あっ、ネヤガワ…、さん…!」


真っ黒なグローブをもっと真っ黒な血で汚し、息切れする寝屋川の前にルェイが姿を現した。


ただし、彼女は、


「ルェイくん…!?なんで、それ…!?」


「なっ、なんか落ちてて…!それで…!」


何故か、吸血姫の遺体を抱えていた。

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