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ルッキズム死ね。でも美少女にはなりたい。  作者: :)
第五章『終わるもの』

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私が私を嫌いなことに、周りは全然合わせてくれない

「カナモリが僕を殺しに来る…?」


聞き返した僕に、コア子はコクリと頷いた。


9月22日。

外は零下5度を記録していて、突風が窓を叩きつけている。

一方で、僕のいる寝室は温かい。エアコンの設定温度は25度。送風口が悲鳴を上げながらガンガン暖気を送ってくれるお陰で手足は全くかじかまない。代わりにめっちゃ乾燥するけど。


しかしまぁ、恵まれている。恵まれすぎている。今に僕達がぴったりサイズのパジャマスウエットを着用しているのも、ベッドから起き上がった直後にハーブティーを飲めたのも、全部自らの力じゃない。


開いた寝室の扉の先、リビングのこたつの天板を拭いている彼…、彼女?うーん…。


網走星あばしり せい』って言うらしい。それ以上のことは知らない。知らないけど、多分、コア子達とは親密な関係にある人のように思える。


だって、網走さんは言う。

そんな馬鹿なという顔をしている僕に、言いにくいことをハッキリと言う。


「コア子ちゃんの発言は本当よ。だって、カナカナはそういう人だもの。…決断が、出来る人だもの」


…カナカナってのが何なのかは分からないけど、少なくとも、コア子の言葉が妄言ではないらしいことは分かる。


そうか…、と思う。

大切な人が一人消えていく感覚は、心の一部が欠け落ちたような感覚となって、僕を痛いほど締め付ける。


だが、僕は心の傷をジワジワ広げる一方で、こうも思う。


妙に腑に落ちる、と。


それは、彼に殺されることに対してだろうか。僕が死ぬことに対してだろうか。彼なら何らか手段で僕を殺せるのかなと、…少し、興味さえ湧いている。


そんなことを考えているから、僕はこんなことを口にする。


「…それで、良いのかもしれないな」


「…!!」


コア子の顔が一気に引きつる。

僕の言葉が意味していることを、僕の身を案じている彼女が理解しないわけない。


「なっ…、なに…、言ってんだよ…!?」


コア子が身を乗り出す。両手をベッドについて、迫るように僕に問い質す。


「殺されるって…、その言葉の意味、分かってんのかよ…!?」


が、僕はなんだか、異常なまでに穏やかに、運命を受け入れるかのように返す。


「…僕は、殺された方が良いと思うよ。だって、」


そうだろ?


「…ッ!違っ…!だから、タカドノの件は私にも責任が…!お前一人で抱えることじゃないから…!だから…!」


「…お前、本当に優しいのな。いいよ。アイツのことを僕に黙ってたことは。もう、怒ってないから。…だから、もういいから」


「いいわけあるか!なぁ…吸血姫!お前疲れてんだよ…!色んなことが有り過ぎて…。だから、今はゆっくり休めよ…!一旦、嫌なことは全部忘れてさぁ…。いっぱい休んで、元気になって、それで…!」


「…それで、また頑張れって言うのかよ?」


「…ッ!それは…!」


「…こんな僕に、もうどうしようもない僕に、また頑張れっていうのかよ?こんな奴、生きてる価値なんてないのに、まだ生きろって言うのかよ?もう無理だよ、もう…」


「だから…!そんなこと言うなよ…!なぁ吸血姫…!一人で抱え込むなよ…!私にもその苦しさを分けてくれよ…!それで、どうしたら良いか、一緒に考えよう?だから、死にたいなんて言わないでさぁ…!自暴自棄になんかならないでさぁ…!」


「いいから!もうほっといてくれよ!ホントは僕に死なれたら困るだけのくせに!どうせその優しさだってエゴのくせに!」


そこまで言った瞬間、僕はハッとした。

今、何を口走ったんだと青ざめた。


その発言が、取り返しのつかないものであることは、間もなく知れた。

ただ呆然として、ポロポロと涙を流すコア子の顔で知れた。


あぁ、僕はまた彼女を傷つけたんだなと知った。うかつだった。うっかりだった。なんでこんなこと言ったんだ?なんでこんなことばかり言ってしまうんだ?僕達が網走さんに拾われるまでの経緯を、僕は既に聞き知っていたのに。


恐らく僕は、ようやく贖罪が出来ることへの安堵で頭がいっぱいになってしまっていたのだ。人生がゴールに辿り着いた達成感で心が満たされてしまっていたのだ。

だから、言うべきでないことを言って、勝手なことを言って、また大切な人を傷つけた。


また僕は、僕を嫌いになれる理由を生み出してしまった。後悔してるなら撤回すれば?

しかし、僕は、この選択が彼女を途方もなくズタズタに引き裂くことを分かっていても撤回できない。


「僕には…、もう…」


そうだ、


「生きる資格なんて、ないんだよ…」


傷つけた、傷つけた。

こんな僕に、それでも愛を注いでくれる人をこれ以上なく傷つけて、不幸のどん底に叩き落した。


しかし、なればこそ、僕は、僕が生きている理由が分からない。


「ごめん…、コア子…」


僕は、彼女に背を向ける。

彼女が必死に与えてくれる温もりから逃げるように身をよじる。

そして、ベッドの上でうずくまって、言う。


「お願いだから…、もう、放っておいて…」


だって、僕はもう、


みんなの優しさが、怖いんだ。



寝室の扉がパタリと閉じた。


扉の向こうからコア子が大声で泣いているのが聞こえた。


部屋に充満する暖気は僕を縛り付けて動けなくしているみたいで、窓の音は、僕のいる檻を叩いているみたいだった。

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