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ルッキズム死ね。でも美少女にはなりたい。  作者: :)
第四章『終わったもの』

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約束を守れるようになる。それが大人になるってことだから。

「んお…」


寝ゲロしまくりの爆睡から目を覚ましたコア子がムクリと起き上がった。


「お、起きましたか姐さん。見てくださいホラ、花火大会もクライマックスっスよ」


花沢が境内の木々で隠れまくった海岸沿いを指差す。


「…何も見えねぇじゃん。ってかうるっせぇので頭ガンガンしてウゼェ…」


コア子は自分の傍に置いてあった唐揚げと三ツ矢サイダーを一瞥して、全部私の好きなものだー…、と嬉しくなった後、三ツ矢サイダーを手に取り、蓋を開け、飲んだ。ゲップをして、手についたペットボトルの結露で顔をゴシゴシ拭った後、改めて花沢に尋ねた。


「…つーか、お前らココで花火見てたのか?タカドノに隠しスポットを案内してもらう予定だったろ?どこだよタカドノ。あと吸血姫」


「あぁ、タカドノならシバルちゃんと一緒に隠しスポットに行きましたよ?」


「…二人でか?」


「?はい…」


「二人きりでか!?」


「そ、そうっスけど…」


間もなく、コア子は暴れた。


「そうっスけど?じゃねぇんだよ鼻クソ!やべぇ…!“監視”に穴開けちまった…!アイツ等、今ゴロ変なことになってねぇだろうな…!?」


「へ、変なこと…?(…そうさせるために二人きりにしたって言ったら、殺されるんだろうなー…)」


「クソッ!どこだタカドノ!吸血姫…!ッテメェ等なにボサッと突っ立ってやがる!今スグ二人を探しに行けボケ!」


花沢と竹中以外のヤンキー共が慌てて捜索に走り出す。

同時に、自身も能力を発動して周辺を探す。


が、


「…いねぇ」


5分、10分経っても見つからない。


「…なぁ、タカドノが言ってた隠しスポットって、そんなに遠い所じゃないハズだよな?」


「え?えぇ、まぁ、具体的にどこかは知らないですけど、ココから歩いて行ける距離だとは思いますが…」


「…なら、何で見つからないんだよ!?私は既に半径5km圏内を隈なく探した!観光地や、人気のない路地はおろか、山の中さえ畜生共の目を借りて探し回った!なのに…、なのに、見つからないってのは…!」


つまり、完全な想定外が起きていることを指す。


「隣町に行ったのか…?!だとしても何で…?!動機が分からない!この場合に有り得るのは…、有り得るのは…!」

「…!」


いた。


見つけた。

半径10km圏内に捜索範囲を広げて、ようやく。


見つけた二人の姿は、悲惨そのものだった。


吸血姫は、ガランとしたアパートの一室らしき部屋に閉じ込められていて、

浴衣を剥がれ、結わえた髪は解かれて、

両腕を男二人に押さえられ、もう一人に股を広げられ、


視線の先には、ガムテープで口も体もグルグル巻きにされた、血まみれ、ボコボコのタカドノがいた。



 …



三人の男たちは、端的に言えばヤンキーだった。

けど、花沢らと決定的に違うのは、そこに品性みたいなものがない。

容赦みたいなものがない。

いかにもレイプ魔って感じ。


僕のことをただの穴だと思ってる。

取り扱っている。


股ぐらに顔面を潜り込ませる男に嫌悪感を走らせる。

両サイドにいる、僕を挟む残りの二人が僕の手を手綱みたいに引っ張って、あまつさえ、テカったチンポを僕に押し付ける。

勝ち誇った顔で、場を支配してるって顔で、男たちは腕力の限りを尽くして僕を貪る。


…全部、弱い力だ。

吸血姫の体からしたら、こんなの羽虫のさざめきだ。小鳥の抗議だ。こんなもので僕の自由が遮られることはなく、僕は、何なら指一本も動かさず現状を一瞬で鎮圧できる力を持っている。


なら、何故動けない?

怖いから?

抵抗したら、タカドノが更にサンドバッグにされるから?


それもある。

それもあるけど。


僕は、違うと言いたかったんだ。

かつての僕と、ついさっき、僕を絶望のドン底に落としやがった、僕とタカドノの関係を全部ぶち壊しやがった、僕という、過去とは。

お前とは違うって、言いたかったんだ。


僕はもう、愚かじゃないんだ。僕は今までの物語で色んな人に出会って、色んな経験をして、喜びも、悲しみも、いっぱい感じて、成長したんだ。


コア子が大事で、カナモリが大事で、本町さんが大事で、凪野さんが大事で、タカドノが大事で、

この生活が、

この人生が、

大事なんだ。

大事なんだ。守りたいんだ。守るんだ。僕は壊したりなんかしないんだ。アイツとは違って。愚かで、醜くて、何も努力しないくせに憎むことばっかりは得意なアイツとは、決して、違う生き物なんだ。


何度も反芻した、局長の言葉が脳裏によぎる。


『2つだ。2つの約束を守ると誓ってくれ。…これだけが、君が今の日常を守れる条件だから』


そうだ。僕はこの力を人に向けるなんて馬鹿な真似はしない。

かつての僕なら自分可愛さに走ったかもしれない。

でも、今の僕は違う。あんな僕とは違う。自分勝手なことはしない。


僕は皆に支えられて、少しずつだけど、変わったんだ。

強くなったんだ。だから、

僕は、守るんだ。


守るんだ。


守るんだ。


守るんだ。


守るんだ。


守るんだ。


守るんだ。


守るんだ。


僕が大好きな今を、この現実を。


「さて、結構ほぐれてきたし…、そろそろ本番、イっちゃいますかぁ!」


「…ッ!やだっ…!やめっ…!」


まも


るんだ



 …



「…ックソが!クソがクソがクソがクソがクソがクソがクソがァァァァァッ!!」


コア子が自分の髪をブチブチ引き抜きながら叫ぶ。


(吸血姫の現状は分かった!だが居場所が分からねぇ…!)


…それは唯一と言っても良い彼女の力の弱点だった。


確かに、コア子の力は、あらゆる生物の知覚を傍受することが可能な、諜報系最強の異能だ。だが、ゼロベースからの捜索ではいくつかの欠点があった。


一つに、範囲指定を基にした面的な知覚情報のキャッチはローラーではなく無造作に行われる。


二つに、傍受の対象となる生物が知覚している情報以上のことは得られない。


以上を踏まえると、この力で完全に未知な場所を特定するには、得られる情報から地道に推理していく必要がある。


だが、しかし、今にコア子がレイプ魔の男共を通して見ているものは、大部分が吸血姫の肢体。チラチラと映る部屋の情報は乏しくて、しかも、特徴がない。良い感じに変な間取りをしていれば、もしくは象徴となり得る建材や家具が使われていれば良かったが、ただの1R。カーテンも閉まっていて、外の景色も分からない。


特定が出来ない。


しかし、だからと言って地団駄を踏むコア子ではない。

彼女は、花沢からスマホを奪った後、彼と、竹中に命じた。


「…お前ら!そのご自慢の単車で爆音をフカしながら、ココから半径5km以上10km以内の道路を、時速10km以下で隈なく蛇行運転しろ!急いでやれ!早く!」


花沢らにはよく分からない命令だったが、彼女の鬼気迫る表情に駆られ間もなく動き始めた。他のヤンキー等にも電話して、皆でそうするように動き始めた。


コア子の考えは、つまり、外で騒ぎを起こして、レイプ魔共に自主的に外の様子を確認させようという、そういうものだった。


時間を要するものだった。

しかし、現状、それ以外に良い方法は思いつかなかった。


単車の爆音が次々とコア子の元を去っていく。それと同時に、彼女はレイプ魔三人の視界傍受に集中する。

決して、決して、何気なく開いたカーテンの先の景色を見逃さないように。


だが


しかし、


その努力は、


つまり


「クソっ…、誰か…、窓を見ろよ…!吸血姫なんて見てないでさぁ…」

「やめろ…、やめろ…!吸血姫のっ…、そんなところ見るな…、さわっ、るなっ…!肌に…、汚い手で…!黄色い舌で…!」

「やめろっ…、やめろよぉっ…!吸血姫は…、私の吸血姫なんだぞ…!私の、一番…、大事な…、友達…!」

「あっ…、あぁっ…、あぁっ…!」


見たくもない光景も、目に焼きつけなきゃいけないことを意味して…。


「…!」


絶望は何十分も続いた。

しかし、その時は確かに訪れた。


調子が悪そうなナナハンの音が、レイプ魔の耳に入った。


「…なんだ?うるっせぇなぁ。ガキがはしゃいでんのか?」


何気なく、カーテンは開いた。


「…!見えた!」


同時に、コア子は視界を景色に映っていた歩行者に移す。更に別の歩行者に移す。鳥に移す。虫に移す。

そうして芋づる式に得ていった情報を組み立てて、吸血姫の監禁場所を完全に突き止める。


「…七生1丁目、ローズコーポ402号室!」


即座に、花沢のスマホでカナモリに電話する。瞬間移動でやって来たカナモリに掴まって、間もなく、402号室の前に辿り着く。


扉を蹴破る。


そして目撃した、寿命尽きかけの蛍光灯で照らされた室内の、全裸の男共が群がる、


その少女


今に、髪がぐちゃぐちゃで、皮脂で汚れていて、体を死んだ蛙みたいにくたばらせていて、床に白濁と赤が混ざった液をどろりと垂らしている。


尊厳を、何もかも踏み躙られた少女


「あ…、見て、よ…、コア子…」

「僕…、ちゃんとみんなを守ったよ…?」


壊れた笑顔で、そう言った。


この日、コア子は2人ほど殺した。


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