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ルッキズム死ね。でも美少女にはなりたい。  作者: :)
第四章『終わったもの』

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でも実際問題、銀髪の子の体毛って何色なんだろう

そもそも銀髪が地毛の人間が存在するのかどうかを知らんが。

爪を噛む。カラオケ特有の知らねぇバンドのうるっせぇ広告と、隣近所の部屋のうざったく盛り上がる声に包まれながら、


極北1年B組女子の頂点"だった"、『凪野海なぎの うみ』はガリガリ爪を噛む。


彼女の容姿は目立たない。彼女の目の前に縮こまって正座するガングロの目黒や、つけまつげ水樹らのようにギャルギャルしくなく、どころか、偏差値の高い高校に紛れても分からない程に普通だった。


長い黒髪、そこまで着崩していない制服。化粧は軽く、スマホにモバイルバッテリーは刺さっていない。


ただ一つ、胸ポケットに入った金マルだけが彼女の身分を表している。

1年B組の女子らがビビる理由を表している。

彼女のコントロール下にない伊勢居地や細田に苛立っている理由を表している。


「…ねぇ」


凪野が無造作に話しかける。

彼女とたまたま目が合った目黒が標的となる。


「いつになったら成功すんの?細田の処刑」


目黒は、「あ、え…」と言い淀んだ後、黙る。


「もういい、消えろよ」


そう吐き捨てて、凪野は自分の側近である中森と峰を連れて出ていった。

ただし、彼女は未だ爪を噛んでいた。


凪野は、クラスの秩序を乱す細田が許せなかった。入学当初から許せなかった。

だから自分の手下共を使ってアレコレと細田をイジメようと頑張ってるのに、


未だ、何も上手くいってなかった。



 …



「なんかさぁ、コア子が今度海行こうぜとか言ってんだよ。なぁ、せっかくだしタカドノも一緒に行かね?」


「えっ…!いいの…?」


「もちもち、大勢で行った方が楽しいべ」


「…あっ!じゃあシバルちゃん!俺も一緒に行ってやんよ?」


「俺も俺も!ナナハンのケツに乗せてやんよ!(親父からお下がりで貰った事故車だけど…)」


「うぇっ…、花沢に、竹中…!?」


「はっ、花沢たちだけじゃないぞ!俺だって、細田さんと一緒に走るし!」


「俺もチャリでなんとか…!」


「えっ…、えっ…、えっ…!?」


今日も細田がチヤホヤされている。


「…あーあ、また細田さんが男子たぶらかしてるよ」


「ビッチかよ、ウザ」


「ねぇー…」


教室の奥で、細田の背中を見ながら女子らが呟く。

凪野を囲んで呟く。

それはイジメの序章のようなもの。集団に風評、空気というものを作り上げる最初の段階。


が、


「ウザいなら直接言えば?」


いつの間にか集団の目の前に現れた伊勢居地がズバッとそう言う。

彼女の拳がコキッと鳴る。


「…」


女子は皆、黙るしかなくなる。


…細田をイジメるのは並大抵じゃない。

それは、先程のように伊勢居地に邪魔されるからだったり、男子が細田に首ったけで、協力的じゃないのもあるが…


何よりも、細田には、そもそも女子のグループに属す気がない。

イジメにおいて最も肝心なのは、『仲間外れにすること』だが、細田にはまるでそれが出来ない。細田は、伊勢居地とタカドノだけが友達だが、それでも毎日凄く楽しそうにしている。


だから、どうしたって細田を惨めにすることが出来ない。何を仕掛けようとも向こうが乗ってこない。暖簾に腕押し。だから、いじめにも興が乗らない。頑張れば頑張るほど、むしろ、イジメてるコッチの方が惨めになってくる。


「細田…」


陰鬱な、負け組の空気が女子らを包む。


焦る凪野は、手段を選んでいられなかった。



 …



細田なんて所詮、伊勢居地の威を借る狐。

奴さえ剥いでしまえば、あんなもの、ただ美貌を振りまくだけの木偶の坊。

何も出来やしない。


伊勢居地が花沢らを連れて校舎裏に行ったのは確認済み。


「…じゃあ、いくよ?」


ヒソヒソ話す中森と峰、そして二人を見守る凪野が、女子トイレで、細田が入った個室を囲う。

中森は雑巾汁でいっぱいのバケツを抱えている。


やることは…、決まっている。


三人は興奮していた。

彼女たちにとって、それは洗礼だった。入学初日からクラスの男子全員をたぶらかした女狐への罰だった。


わからせてやる。

わからせてやる。


気持ちが昂ぶる。


お前、空気読めてないんだよ。

お前のせいでクラスの和が乱れてんだよ。

お前の笑顔、ウザいんだよ。


そして、中森は両腕に復讐心を込めて、個室めがけてバケツを投げた。

バケツがパーティションを飛び越えた瞬間、三人はニヤリと笑んだ。数秒後の細田は、きっと、いつものタカドノみたいな情けない表情をしているだろうと、そう確信していた。


…しかし、いくら待っても音沙汰がない。細田の悲鳴はおろか、中身たっぷりのバケツを投げ込んだらするはずの、床に水が跳ねる音すらしない。


たまらず、個室を覗き込む…。


「は…」


「は?!?!?」


次の瞬間、三人の口から心臓が飛び出した。


「へ、へへ…、ど、どうも…」


…バケツも水も、萎縮する細田の頭上で止まっていた。

パーティションにくっつく形でカチコチに凍って、氷のオブジェになっていた。


その後、細田は「へっ…、へへ…、つい咄嗟に、ね…」と、背を縮めて、冷や汗をかきながら、まるで映写されたパワポの前を通り過ぎる中年サラリーマンのように、その場を後にした。


「ばっ、バケツ相手ならセーフだよな…?」


謎の心配をしていた。



 …



ならばと用意したのは細田のコラ画像だった。

ただしネタ画像ではなく、精巧に作った、洋モノAV女優との首すげ替え画像。


峰の兄貴の友達のパソコンオタクを捕まえて、三人で"サービス"してあげる代わりに作らせたものだ。


これを、教室前の廊下にでも張り出してやるわけだ。『ヤリマン』『ビッチ』『可愛い顔して誰とでも寝る女』。治安の悪い落書きを添えて。


朝イチで用意した甲斐があった。男共が、潰したバナナを塗りたくったクヌギの木に群がるカナブンのようにワラワラと集まっていく。写真を撮ってSNSで別の学校の友達に共有する者まで現れる。


間もなく登校した細田が「何…、これ…」と顔面蒼白になった。


男共が、「これ、本当なの…!?」と鼻の下を伸ばしながら細田に迫った。細田が慌てて否定するが、一度広まった噂は簡単には拭えない。レッテルとは、いつまで経っても皮膚に張り付くからレッテルなのだ。


このまま…、噂に乗じて細田を襲う男子でも現れれば…、凪野、中森、峰が勝利を確信した。


その時だった。


「いや、これ吸血姫と違ぇな」


平然と断言したのは、伊勢居地だった。


三人は、彼女の声を聞いた瞬間にギョッとした。

嫌な予感がする…。


「ちっ、違うんですかッ!?姐さん?!」


「何もかも違ぇよニワカ共。確かにこれは体型や肌の色にまで気を配って作られた、よく出来たコラ画像だが…」


伊勢居地が、画像の、騎乗位ナウな女優の股ぐらを指さして告げる。


「ココの毛の色が違ぇ」


ざわめく周囲。どよめく世界。


えっ?そうなの?銀髪が地毛なら体毛も銀のハズだろ?だから、峰の兄貴の友達にもそう作ってもらったんだが…?


「銀は銀なんだけどなぁー。この画像、黒よりの銀だろ?まるで染めたみたいな…。吸血姫のは、もっと自然な、アルビノみたいな、透明よりの銀でよぉ…」

「それに、もっとこう…、毛の太さも細めだし、縮れ方も…」


…細田のマ〇毛マエストロが講釈を垂れる。

ディテールの深堀りが行われるほどに、男共がボルテージを上げる。細田が「やめてください…」と顔を真っ赤にする。そして…


伊勢居地は、確かに凪野の方を見て、ニヤッとした。


「!?」


次の瞬間、彼女は、羞恥で死にかけていた細田のスカートの、パンツの中にガバっと手を突っ込み、プチッと"一本"、抜いて見せた。


「テメェ等目に焼き付けろ!これがテメェ等のアイドル"シバルちゃん"の縮れ毛だ!そして理解しろ!そこのクソコラとどちらが神々しいか!どちらがリアルそのものか!」


親指と人差指で摘んだソレに涙を流して跪く男共は、つまり、その場を伊勢居地が支配した証。

くそったれ女の頭の弱い陰謀を叩きのめした証。


キチガイには、キチガイを。


頭痛がしてきた凪野は、中森と峰に支えられながら、フラフラと保健室へと向かった。


「オラァッ!テメェ等オークション始めんぞ!食ってよし、植えてよしの吸血姫のお毛毛、10万から開始だ!」


歓喜、歓喜、黄色い歓声で、細田の「やめてよぉぉぉぉっ!!」という悲鳴が掻き消える。


凪野でさえ、流石に細田が可哀想だと思った。


最終的に、毛は150万で落札された。


この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません!

だから、やめようね!未成年喫煙とか、友達のマ◯毛オークションとか。

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