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ルッキズム死ね。でも美少女にはなりたい。  作者: :)
第四章『終わったもの』

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友達が欲しい!

友達最高~

学校生活も数週間経てばソコソコ馴染む。

コア子は相変わらずヤンキー共の頂点として君臨していた。


「ところで、何で姐さんはシバルちゃんのことをキュウケツキって呼んでんスか?」


「あ?吸血姫は吸血姫だからに決まってんだろ」


「ふぅん?よく分かんないっスけど良い渾名っねぇ。俺もそう呼んでいいっスか?」


「良いわねけぇだろ。吸血姫は私の吸血姫だ。テメェ等はシバルとかいう謎偽名でも噛み締めとけよ」


「えぇー?…えっ、偽名?」


…せっかくの体育の時間、それも楽しい楽しい1000メートル走が科目なのに(←死ね死ね死ね)、全然授業に参加しないじゃんアイツ。不良数人と校庭の隅で一緒にウンコ座りしてる。でも律儀に体操服に着替えてはいる。なんだその微妙な配慮は。


「はぁ…」


一方で"アイツ"は黙々と授業に取り組んでるというのに…。


"アイツ"、そう、日光デバフのある僕ですら走り終えている中で未だにグラウンド3周目も終えていない"アイツ"。


同じクラスの陰キャデブ。質の悪いヤンキー三人(和田、高山、美園って名前らしい。どうでもいい)に虐められ、女子に至っては誰からも蔑まれている"アイツ"。


高殿涼タカドノ リョウ』って言うらしい。


最近は特に女子からの虐めが酷くて、この前なんか女子トイレでオナニーを強要されていた(らしい。噂で聞いた)。


…本当、よく学校に来れるよな。

何がアイツを突き動かしてるんだ?

分からない、だから気になる。

どうしてアイツの心はあんなに強いんだ?

それとももう死んでるのか?

ゾンビだから学校までフラフラ来ちゃうのか?


…それにしてもみっともない走りだな。贅肉プルプル震えてるし、フォームは駆け足の鳩みたいだし。


頑張ってるよなぁ…。


「…」


気づいたら、僕は今日も、タカドノのことをじーっと見つめていた。



 …



「ねぇねぇ姐さん、シバルちゃん、これからフケて、ボウリングでもしに行きません?」


5限の技術の授業の前に花沢が話しかけてきた。

オドオドする僕を余所にコア子が返す。


「あぁ?馬鹿かテメェ、ヤダよそんなの」


「エッ、ボーリング嫌いっスか?」


「フケたくねぇって言ってんだよ。カナモリが無理して入れてくれたんだ。授業、真面目に受ける気なくても、顔だけは出すぜ」


「…真面目、っスね」


「テメェ等だってカーチャンに金払って貰ってんだろ。出ろよ授業」


「…ッス」


コンピューター室にB組の男子がほぼ揃っているのを見て、技術教師のハゲ松が腰を抜かした。遂に皆が真面目になったのかと嬉し泣きしたこの学校唯一の良心、ハゲ松は早速、授業課題としてパワーポイントで自己紹介を作ろうと皆に伝えた。


直後、コア子が「自己を矯正する機関で自己紹介しろとかよく言うよ」と言って、どっかに行った。次いで花沢を筆頭とした舎弟たちもどっかに行き、釣られて弱小の不良たちと女子もどっかに行ったので、結局、コンピューター室には僕とタカドノだけが残った。ハゲ松は泣いた。


黙々と作業した。僕とタカドノは背中合わせの席だった。途中、僕は何度もチラチラ振り返り、タカドノのパワポを盗み見ようとした。けど、あのデブ、背中が広すぎて画面が全部隠れていた。


最終的に、アイツのパワポは授業後半の制作物発表タイムで全部見られた。


それにしても声が小さい。もっとハキハキ喋ったらいいのに。あ、でもデザインはいいね。なんか熟れた感じがあって好印象。アレかな?パソコン使った授業だけ無双するタイプの陰キャかな?僕もだよ、えへへ。


「…」


にしても、…へぇ、タカドノの奴、アニメ鑑賞が趣味なんだ。あーあ、めっちゃ画像貼ってんじゃん。やばぁ。大好きなのは伝わるけど、ちょっと素直過ぎない?他の奴に見られたらどうするつもりだよ。お前を虐める奴にとって、こんなのただのネタ提供だぞ。そういうとこだぞ。お前がイジメられる理由。


「はぁ…」


…あ。


あのアニメ…。


タカドノも好きなんだ…、ふぅん…。


…趣味、スタバ巡りとか書いちゃったな僕。


トールとグランデ、どっちがデカいのかも分かってないのに。


「…」


僕の発表の声も小さかった。



 …



その後も、僕はタカドノのことをずっと目で追っていた。頑張ってるなぁとか。可哀想にとか思いながら。ずっと、ずっと、それで…。


「…おい」


いくらか経った日の2限の国語の時間、未だに常用漢字の学習から授業が始まるヤベー空間。当たり前みたいに隣の席にいるコア子が話しかけてきた(ちなみに僕達の席はど真ん中の最後列)。


「えー…、この時、主人公の小吉は草原で寝転びながら何を思ったのか…」


「はーい、長浜明日香でシコりたかったんだと思いまーす」


「ギャハハ」


アホ共の会話がうるさい。だからコア子も小声で話したりなんかしない。授業中なのに余裕で平時の声量。


「お前、あのデブのことが好きなのか?」


「…へっ?」


ドキッとした。


「だって、今もアイツのこと見てただろ?」


コア子は、僕達から見て左前方の、窓際の席に鎮座するデカい背中を指す。

アレがタカドノであることを死ぬほど知ってる僕は、「う、まぁ…」と若干降参気味に答える。


「で、どうなんだよ?好きなのか?」


「好きって…、いやぁ、うーん…」


いや、好きって訳じゃないけど…、うん、好きって訳ではないと思うんだけど…。でも…。

僕は肯定も否定もせず、ただ首を捻った。


「親近感は、ある…」


それは、捻り出した言葉だった。コア子は、僕とタカドノを交互に見た後、「あぁ、なるほど」と納得した。


「じゃあ成りたいのは友達か」


友達かぁ…。


「そう…、なのかなぁ…」


「なら、見てるだけじゃなくて話しかければ?」


「えぇ?うーん…」


そうは言ってもなぁ…。


思い出せないんだよなぁ、友達の作り方。


というか、好意ってどのタイミングで言葉にしたらいいのか分からないよな。告白みたいにしたらいいのか?面と向かって?なんだそれ、武士かよ。…いや、こういう冷笑が良くないんだろうが。でも、今更これを直すことなんて出来なくて、


気づけば僕は、自分の趣味すら素直に答えられなくなってしまった。


そう思うと、毎日懲りずに僕に告白してくる男共って凄いよな。花沢にしても、光岡先輩にしても、その言葉を口にする度にコア子に半殺しにされてるのに、それを差し引いても本当に凄いよ。


面と向かって「好き」って言うなんて、僕にはもう、無理じゃないかしら…。


「…何黙ってんだコラ。好きだから友達になりたいですって言うだけの話じゃねぇか。ビビってんじゃねぇよ。女かコラ」


「い、いやぁ、ってもなぁコア子?そんなド直球に好きって言うのって、その…、結構ハードル高くない…?」


「…は?いや、お前、私には躊躇なく言ってくれただろ?」


「は?え?いつ?」


「え?ほら、この前行った銭湯で…」


「…言ったっけ?」


「…はぁ!?」


間もなく、コア子は異様にキレた。


「お前、もしかして自分のことを不器用な人間か何かかと勘違いしてんじゃねぇか?クソが、お前なんか別に大したことねぇよ。本当に不器用な奴ってのは、カナモリみたいないつ話しかけても『あぁ』としか答えねぇ字足らず野郎のことを言うんだ。アレに比べたらお前は十分コミュ力があるじゃねぇか」

「深く考えてんじゃねぇよ。お前のその謎矜持なんてその場その場で出たり引っ込んだりする薄っぺらなものでしかねぇんだよ。お前は単に嫌われたくないだけだ。相手に嫌われないと分かったタイミングでしか相手に歩み寄る言葉を口に出せねぇ、自分が傷つかないようにすることばかり考えてる自己中野郎だ。何を一丁前に困り顔かましてんだ。殺すぞ」


言葉の雨が槍のように突き刺さる。


「い、言い過ぎじゃない…?」


「言い過ぎじゃねぇよ」


「えぇ…?」


「むしろ、もっと言いたいくらいだよ。私の世界で一番大事な友達が、幸せを前に尻込みしてるんだから」


それだけ言ったら、コア子は突然ガタッと席を立った。かと思えば、僕の机の下にゴソゴソと入り、ヌッと、机と椅子の間から、僕の両太ももを割って顔を出した。


僕は、袋の中のカンガルーの子どもを覗くようにコア子を見る。

…この話の流れで何をする気だコイツ?

コア子は、両頬を僕の脚肉に挟まれながらモゴモゴ話し出す。


「答えろ」


「…はい?」


「私は、お前の一番の友達か?」


何だその質問。急だなおい。でも、答えはすぐ出せるよ。


「そりゃあ…、そうだろ。波長も合うし、何より同じ屋根の下で暮らしてるんだし」


「変に理由をつけたがるのはお前の悪い癖だな。まぁいいや。じゃあ私のこと好きって言え」


「えっ」


「えっ、じゃねぇ。お前にとって私は一番なんだろ?なら言えよ」


コア子は僕をジッと見つめて言葉を待つ。

…眼力が凄い。

耐えきれなくなった僕は、コア子から顔を背けながら、ボソッと呟く。


「すっ、好きだよ…」


「ちゃんと面と向かって言え」


「ッ!すっ、すっ、好き…、だよ…」


「世界一好きか?」


「えぇッ!?」


「いちいち戸惑うな!心の声をそのまま言葉にしろ!」


「好…きだよ!好き!世界一大好きだよ!クソが!これで満足か!?」


やけくそ気味に伝える。判定は…

間もなく、コア子は満足そうな、本当に満足そうなニンマリ顔を見せた。


直後、コア子は机の下から飛び出し、僕の腕を掴んで引っ張った。


「なら、手伝ってやるよ」


…へっ?


「はっ?えっ?何を?!」


しかしコア子は説明なんかせずに連れて行く。

僕をタカドノの前に連れて行く。


ノートに黙々と『死にたい』と書き殴っていたタカドノは、少しして、正面に僕達がいることに気がついて顔を上げる。


「おいタカドノ!」


コア子が大声で呼びかける。クラスが一瞬で静まって、全員の視線がこちらに集まる。


「吸血姫の奴さ、お前のことが気になるんだってよ!友達になりたいんだってよ!良かったなデブ!だから、テメェもテメェで…」


コア子が僕の背後に周り、スッと僕の腰回りに手をかける。

スカートのウエストをガッと掴む。


おい待て、何だ、何を企んでる…?


「この好意、素直に受け止めやがれ!!」


叫ぶと同時に、コア子は僕のスカートを一気にずり下ろした。

それはまるで、いたずらで友達の体操着のズボンを下ろすみたいに。


僕のスカートは、綺麗にくるぶしの高さまで落ちた。


水色の、どうせ誰にも見られないからいいやと思って、テンションを上げるためだけに履いていた、ゴリゴリに透け透けで、ぴっちりしていて割れ目がぱっくり浮かび上がるエロエロランジェリーが、カッターシャツで上半分は隠れたけど、肝心の下半分は剥き出しのままタカドノの目の前で露わになった。


「なっ…、はっ…!?」


僕も、タカドノも、クラスの皆も、教師でさえ、突如広がった花園に目を白黒させる。


僕は慌てて両手でそれを隠す…


つもりだった、


が、


何を血迷ったのか、僕の両手は恥部を覆う寸前で止まった。


血迷った。


そう、血迷ったんだ。

僕はふと思ったんだ。


パンツを見られることに比べたら、

タカドノに話しかけることくらい、

何ともないじゃないかと。


コア子の狙いはこれか?と。


振り返る。

ニヤけんなクソが。


分かったよ。


やってやるよ。僕だって、お前みたいに、

思ってることを、そのまま口に…


そして僕は、晒した恥部なんてまるで知らないって顔をしながら、それでも止められない羞恥心に顔を真っ赤にしながら、タカドノに伝えた。


「も、モブサイコ二期、楽しみだよね…!」


しかし、肝心のタカドノは、他の大多数と同じように、「!?」みたいな顔して口をあんぐり開けたまま固まっていた。


唖然呆然、みんなが当然。

2限終了のチャイムが鳴った。


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