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ルッキズム死ね。でも美少女にはなりたい。  作者: :)
第四章『終わったもの』

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美人なら下卑ても許される

むしろそれはキャラになる。

学校生活2日目。


「おいコア子、いい加減起きろ。今日も学校だぞ」


「えぇ…?まだぁ…、やだぁ…」


あと10分で家を出ないと電車に乗り遅れるので、僕はコア子を起こすことを諦めた。

未だ爆睡なうの生活リズム崩壊女を、秦と協力してせっせと身支度させ、一介の女子高生に加工していく。


「…じゃあ、行ってくるから」


そして、僕はコア子を背におぶり、立ったままローファーに足を通した。


「あ…、おい待て」


秦の低い声に、僕は反射的にビクッとした。

…いや、しばらく一緒に過ごして、コイツが本当に優しい人だってのはよく分かってる。

分かってるけど、それでもコイツの人相と声色は怖い。


「な、何…?」


少し震えながら声に応じる。

すると、秦は僕にランチクロスで丁寧に包まれた弁当箱を二つ差し出して言った。


「…毎日学食でも、それはそれで青春を謳歌できて構わないんだが、でも、栄養が偏るのはちょっと、な…。あぁ、でも、野菜中心の、あんまり美味しくない弁当だから、食べたくなきゃそのままでも良いぞ…?それに、友達付き合いもあるだろうし、その…」


…こんなに強面で、ガッシリした体つきの大人なのに、秦の声は弱気に小さくなっていく。


いじらしい。


そんな彼に、僕は不覚にもクスッと笑ってしまった。


「…ありがとう。食べるよ」


受け取った時、秦はらしからぬ、パァッとした笑みを見せた。

が、表情筋が硬いせいか、すぐに元の強面に戻った。


けど、温かさはちゃんと受け取った。


「いってきます」


「いってらっしゃい」



 …



通学中。


「ゲーッヘッへ!俺こそが日本最強から世界最強へと成る妖怪!河童の水胞子様だ!俺の力、『Dancing』でテメェなんざあの世に送tベボバッ!」


「…10トントラックのつもり♪」


学校近くの狭い路地から姿を表したモブの雑魚が、空から舞い降りた本町さんによって頭からペチャンコに踏み潰されて死んだ。


「よっ、吸血姫ちゃん」


私服だった。今日は非番らしい。名家のお嬢様らしからぬスポーツブランドのナイロンジャケットとショートパンツを着ていた。

まぁ、今この瞬間に返り血まみれになったんだけども…。


…いや、そんなことよりも。


(えっ、胸でっか)


本町さんの戦闘服って、結構シルエットが隠れるから気づかなかった。

けど、今こうして、体のラインがモロに出る格好を目の当たりにして思う。


本町さん、胸デカ過ぎじゃね?


H?K?もしかしてそれ以上ある?グラドルかよ。よく見たら尻もデカいし。足もムッチムチだし。いやまぁ、筋肉なんだろうけどさぁ。でも、その体でお嬢様名乗るのは無理でしょ。わきまえろよ。


「ほえー…」


ぼーぜんとする僕に、本町さんが小首を傾げた。直後、


「…今コイツ、本町のおっぱい見てたぞ」


いつの間にか起きてたコア子が、僕の背からボソッと言った。

僕は慌ててコア子を地面に叩き落とした。


「なっ…、何を言うんだ貴様は!?」


「だって本当のことじゃーん」


僕は弁明したくて本町さんの方を向く。でも、事実をどう弁明したら良いか分からなくて、しどろもどろになる。

やべぇ、完全にチンコじゃん。男子高校生じゃん。嫌われた。優しい本町さんに嫌われた。この人にだけは絶対嫌われたくなかったのに。


…しかし、本町さんは僕を嫌いなんかしなかった。

彼女はただ、お姉さんみたいにクスクス笑って、僕に呆れた素振りを見せるだけだった。


「まぁ…、男の子だし仕方ないっスよ」


…えっ?それだけ?そう思ってソワソワしたが、本当にそれだけだった。お咎めすらないなんて…。


いや、いやいやいや。


おかしいやん。僕の精神面が金玉であることを知ってるなら尚の事。

え?なんで?なんでなん?キモい男子が、確かに貴女をエロい目で見てたんよ?嫌悪感無いん?いや、無い訳がない。僕は、誰かから性的な目を向けられる恐怖をよく知っている。だから、分かる。この状況の女子は必ず男に気味悪さを抱く。なのに


「吸血姫ちゃんもこれくらい大きく育つと良いっスねー。あっ、でも、アンデッドだからこれ以上成長はしないのかな?」


…モヤモヤする。


顔か?やっぱり顔なのか?


三人で学校までの歩みを再開する。


「で?何でテメェがココにいるんだよ?」


再び僕の背中に収まったコア子が本町さんに尋ねる。起きたなら降りろ。


「制服姿の二人を見たかったのと、まぁ…、報告っスよ」


「報告?」


「そうっス。実は、当局の調査により、吸血姫ちゃんを狙うキャスタウェイの中に、少し妙な奴がいることが明らかになったんス。『フカ』っていう奴なんスけど…」


『フカ』


紐解けば、それは僕達にメッケルダウンを送り込んだ正体であった。


『フカ』


どうやら彼は吸血姫の元部下であり、現在は、世界中からキャスタウェイを集めて独自の軍隊を組織しているようだった。


吸血姫殺害だけでなく、その後の人類殲滅も考えているようだった。


「ふぅん、人類殲滅ねぇ。そりゃあ野心家なこった」


我ながら感想軽っと思った。だって、急に人類殲滅とか言われても現実味無いし…。


『そうか、フカが…』


…あ?


「なんか言った?」


『ん…?あ、いや、何も…』


…怪しいなテメー。


「そういやフカって、テメェの部下なんだよな?なら、何か知ってるはずだよな?」


急な僕の"独り言"に、コア子と本町さんが反応した。が、彼女たちは間もなく意図を理解し、黙った。

僕は二人の察しの良さに感謝しながら問う。


「教えろよ。知ってること全部」


『し、知ってること…?いやぁ、そんなもの無いよ…?だってほら、私って、ガーネットのことすら忘れちゃうくらいだし…?』


「隠し事下手過ぎん?なぁ言えよ。言え。僕達の命が関わってることだぞ?言わないメリットがどこにあんだよ」


『…それでも』


「あ?」


『それでも、言わない…。ごめん…。彼のことだけは、絶対…』


僕は舌打ちをした。

今の吸血姫とのやり取りを二人に報告したら、二人も舌打ちをした。


「まぁ…、フカの調査はこちらで進めておくから心配ないっスよ、吸血姫ちゃん。あ、コア子ちゃんには手伝ってほしいっス」


「あ?それ正式な依頼か?」


「特別情報局からの正式な依頼っス。多分、今頃、先輩の方に交渉チームが向かってるはずっスから」


「ふぅん、まぁ分かった」


「あ、あともう一つ、お願いがあるっス」


「?なに?」


「それがその、ちょっと耳貸してもらえるっスか?」


「えぇー?」


コア子は悪態をついたが、本町さんの言う通りにした。名残惜しそうに僕の背中から降りて、トトっと彼女の下に寄った。

本町さんからコショコショ話を聞いたコア子は、間もなく眉をひそめた。


「えぇ?やだよそれ。やりたくない。つかカナモリにも言ってんだよ。やるなって」


「いや…、私だってこんなこと頼みたくないけど、局長直々の依頼なんスよ!失礼なのは承知でお願いっス!ここは私の顔を立てると思って!」


「やーだー!」


「お願い!」


「やー!」


二人は、本格的にもつれ始めた。口論から、やがて頬のつねり合いに。


「…」


揉めた原因が分からない以上、間に割り込んでも仕方がないので、僕はぼんやり道端でも眺める。


「あー…」


…あ?


ふと見つけた。


(昨日の陰キャデブ…)


道のはじっこをトボトボ歩いていた。

しかし、彼は確かに学校に向かっていた。丁寧にアイロンがけされてシワ一つ無い制服に身を包んで、遅刻しない時間に。


…すげぇなアイツ。あんな無茶苦茶にいじめられるくらいなら、学校なんか行かなきゃいいのに。


それとも、登校拒否する勇気が出ないのかな。

それなら…、凄く気持ちが分かる。なんか、自分の命がかかっている時でも、誰かに迷惑かけるかもって考えたら動けなくなるんだよな。


怖いんだよな、他人からの評価が。


そこまで考えた直後だった。

あと50mほどに見えていた校門から、ヤンキー数十人(花沢、光岡もいる)がゾロゾロと顔を出し、僕達の方へ駆けてきた。

な、なんだ!?と驚いたのも束の間、彼らは整列し、校門までの花道を作り、そして、馬鹿デカい声で挨拶した。


「「「「おはようございます!!!姐さん!!シバルちゃん!!!」」」」


「うるさっ」


それは、その光景を目の当たりにしたコア子の第一声だった。

次いで、本町さんが「入学初日に何やったんスか貴女…」とコア子に突っ込んだ。


花道をおずおず歩く。

ふと気付いたが、ヤンキー共の目はこぞって本町さんの方に集中していた。返り血が原因だった。しかし、奴等は「うわぁ…」と引く一方で、本町さんの豊満ボディを舐め回すように見ていた。正に男子高校生らしい、いやらしい目つきだった。


間もなく、本町さんは嫌悪感に満ちた表情を示した。


やっぱり顔か。そう思った。

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