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ルッキズム死ね。でも美少女にはなりたい。  作者: :)
第四章『終わったもの』

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敵がいなきゃそりゃ人生楽しいだろうね

コア子が花沢に勝ったという話は、瞬く間に学校中に広まった。

一年はおろか、花沢より弱い二年、三年の男子まで、コア子に道を開けるようになった。

おかげで僕達は気兼ね無く廊下を歩けるようになったわけだが…。


「正直、狙った展開だったよ。アイツ等が吸血姫に絡んできて、私がそれを叩きのめすってのは。おかげでほら、私達が世界の中心になった、平和な学園生活が手に入った」


「まぁ…、結果的にはそうなんだろうけどさぁ…」


中間休みの時間。僕達はちょうど、学食に向かっている最中だった。


「前にカナモリには話したが、ヤンキーなんかよりも普通の学生の方が何倍も恐ろしいんだよ。笑顔の裏で悪意を孕んで、ヒソヒソ、コソコソと他者を貶める。皆、優等生みたいな面してるから誰が敵かも分からない。ソレに比べりゃ、暴力が秩序のヤンキーの方が分かりやすくてよっぽど良い。誰がヤベー奴なのかも格好見りゃ一目瞭然だからな」


「そ、そんなものかな…?」


「そんなものだよ。…後は女子だけだな。吸血姫の登場でピリついたカップルも結構あるだろうし、早めに対処しなくちゃならねぇんだよなぁ。うーん、とりあえず奴等各々をユスれるネタでも集めるか?」


頼もしいなコイツ。


「ちょっとトイレ…」


「んぁ?おぉ」


コア子の返事を背で受け、僕はスッとトイレに入る。小便器には目もくれず、個室に直進する。スカートを捲って便器に座るのも、先にトイレットペーパーを便器に落としてピチャピチャ音がしないように排尿するのも、しっかり拭いてるのに黄ばむパンツにゲンナリするのも、全部慣れたものだ。


「はぁ…」


パンツの内側に入ったスカートを直しながら思う。

コア子には申し訳ないよなぁ、って。

だって、今にコア子の手を煩わせている原因は、全部僕じゃないか。なのに、僕は怖くて震えているだけで、自分のケツを拭く術も知らない。


情けなさ過ぎるだろ、僕。


…守られてるだけで良いのか?


「…ン?」


ガチャッと個室を出る。すると"何故か"、目の前に、ニヤけたまま固まった、股間にテントを作ったアイパーが5人いた。


「ンンッ…?」


…女子トイレだよなココ?


キョロキョロする。視界に入るのは馴染み深い光景だ。クセェ小便器と、汚い床と、ハンドソープが飛び散った手洗い場と…。


…あぁそうか。無意識に入っちゃったんだな。


「男子トイレじゃねぇかココっ!!?」


大慌てでトイレから飛び出す。肩で息する。

待ってくれていたコア子が腹抱えて爆笑している。


「お前っ…!分かってたなら止めろよっ!!」


「いやぁ~スマンスマン!でも、完全に漫画みたいで面白くてしょうがなくて…!」


転げ回るコア子の他所で、周囲の男子が僕を指差す。「もしかして、結構エッチ?」と噂する。女子が「サイテー」と軽蔑の目を向ける。


恥ずかしいったらありゃしなかった。


その後も波乱万丈だった。


学食に着くや否や、


周囲の輩共から貢ぎ物の菓子パンを献上されまくったり、


花沢をシメたと聞いてやってきた、極北を仕切っている三年の光岡先輩がコア子に絡んで来たり、


一瞬でボコボコにされた光岡先輩による一味唐辛子もりもりきつねうどんを鼻から食べるチャレンジが開催されることになったり、


それを見て皆でつい笑っちゃったり、


そんな中で、鼻にうどんを突っ込んだ先輩に「銀髪の子!その笑顔に一目惚れした!付き合ってくれ!」と告白されたり、


「お、俺も!」と釣られた輩共がこぞって僕へ告白大会をはじめたり、


最終的に、何故か全員で殺し合いをして勝った奴が付き合えることになって、


学食中の男児による学年混同大乱闘が始まって、


呆れたコア子といっしょに学食をコッソリ脱出したりして、


もう、滅茶苦茶だった。


でも、楽しかった。

学校生活でこんなに笑ったのは初めてじゃないかしら。


前までスカスカな青春送ってたもんなぁ、僕。


この顔のおかげだろうか。


教室に帰ると、朝にも虐められていた陰キャデブが、今度は女子数人に囲まれ、半裸にさせられ、腰振りダンスをさせられ、その様子をスマホで撮影されていた。


「ほーら、もっと真剣にやらないと本当にアップしちゃうよ?」


「キャハハハハ!ナギちゃん鬼畜すぎ!!」


今に嗤われているソイツの鼻のデカさ、小デブさ、木偶の坊さは、微妙にかつての僕に似ていた。


僕は、自分の顔に触れて、たまたま手に入れただけの、与えられただけのそれを感じて、けど、だからって何が出来るわけでもなくて、どうしようもない気持ちになった。


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