暴力こそが最良の対話
だから言葉の暴力って気持ちいいんだと思います。
…嘘だろ?2010年代も後半だぞ?
何で未だに、剃り込み入れた化石モンキー共が溜まったドブ池高校が都内にあるんだよ?
いや、おかげで髪色も、お揃いのピアスもとやかく言われなかったから良かったんだけどさぁ…。
騒がしい教室に入った瞬間、僕が真っ先に凝視したのは、質の低そうなヤンキー二人に取り押さえられ、一人に笑いながらみぞおちを蹴られた、カースト最底辺っぽいブサデブ男だった。
「エグッ!(笑)」「ガチ痛いって今のは(笑)」という嗤いとノリは、担任教師の登場によりゆっくりと消える。
意外にも、欠席者も遅刻者も居なかった。担任の中山曰く、美人二人が転校してくることを、皆がどこかからキャッチしたかららしい。美人って言われて素直に照れた。照れた僕を、中山が鼻の下伸ばして視姦していることに少しして気がついて、この学校マジでやべぇなと顔が真っ青になった。
で、今。
僕の周りに、クラスのヤンキー総勢20人が集結していた。ちゃんと席に座っているのは、先程の陰キャデブ1人と、面白くなさそうな顔している女子9人だけ。(女子は、意外とこっちは現代風。スケバンとかいない。茶髪だったり、化粧してたり、仕草に露骨な小動物感があったり、売女臭かったりするだけ)
「すゲーッ!ロシア人だよ初めて見た!」
「シバルちゃんっていうのっ!?ちょっ、ちょっと変な名前~…」
「馬鹿かテメェ!?天使にピッタリのネーミングだろボケッ!俺ぁ自分の娘にもシバルって名付けるって決めたね!」
「俺ッ!甘津ツカサって言うんだ!よろしくっ!」
「あっコラ!抜け駆けしてアイサツしてんじゃねぇよブッ殺すぞ!」
「やるかテメェ!ボコボコにして教卓の上でウンコさせてやるよ!」
騒ぐ、騒ぐ。
中山のボケは仲裁に入ることもせず、静々と担任机に座っている。
肝心の僕は怖くて動けない。興奮した男子男子。大勢。自分よりも圧倒的にガタイが良い。それも発情している。組み伏せられたら勝てないと本能が警告する。いや実際はそんなことないんだろうけど。しかし、それでも怖い。ヤンキーって存在がそもそも怖い。足がすくむ。力が抜ける。
…だが、この状況でも我が道を征けるのが伊勢居地コア子。
彼女はヤンキーの一人の顔面を蹴り上げると共に叫んだ。
「近づくんじゃねぇチンコ共!吸血姫は私のモノだ!テメェ等雑魚が掠め取っていいタマじゃねぇんだよッ!」
見ると、コア子はワナワナして、学生鞄に右手を突っ込んでいた。
…中に隠し持っている『アレ』を知っている僕は、慌ててコア子を宥めた。
「ちょっ、コア子…!流石にそれは…!」
「…わーってるよ。ちょっと頭に血がノボっただけだ」
コア子は、学生鞄を床に置いた後、据わった目でヤンキー共を睨む。
「そもそも、こんな奴等に本気なんて必要ねぇからな。オラかかってこいよ。私に勝てたら、私も吸血姫もテメェ等のオナホになってやる」
「自己紹介の次は、力の序列を教えてやる」と煽るコア子に、ヤンキー共が拳を握る。
女が相手。殴るのは憚られる。普通ならば。
しかし、仲間が一人、既に蹴り飛ばされている以上、そうはいかない。
「チビ…、女だからって手加減してもらえると思うなよ?」
「テメェ等こそ手ぇ抜くんじゃねぇぞ?20vs1でも戦力釣り合ってねぇんだから」
…後で知った。僕達の一年B組には、極北の一年をシメている、X区一年最強の花沢遊吉がいるということを。
しかし、同時に僕は知らなかった。たった一人のコア子相手に、喧嘩街道真っしぐらのヤンキー20人くらいじゃ、到底歯が立たないことを。
ヤンキーの中には格闘技に長けている者もいた。武道に長けている者もいた。
しかしコア子は戦いに長けていた。
蹂躙はあっという間だった。
「カス共が。一生ヤンマガのグラビアでオナってろ」
教卓の傍に出来たヤンキー共の死屍累々を前に、中山がションベンをダバダバ漏らしていた。




