表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルッキズム死ね。でも美少女にはなりたい。  作者: :)
第四章『終わったもの』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/76

愛に溢れるからこそ辛い

誰も愛さなければ、誰かのことで悩んだりしなくて済むのに。

それを許さないんだから、人間はどうもやりづらい。

秦要護の人生に青春はなかった。


父親のギャンブル依存症のせいで悲惨な家計だった、筆箱一つすら買ってもらえず、裸の鉛筆をそのまま小学校に持っていく生活だった幼少期の彼は、最終的に、借金取りからの夜逃げのせいで居住地を転々とする羽目になり、遂には学校にさえマトモに通えなくなった。

そして、中学卒業間際、彼の父親は遂に蒸発した。ここまで付いてきた家族も、莫大な借金も、全部置いて無責任に消えた。そのため彼は、以降、借金苦と生活苦の解消のために、それでも愛したパートナーに捨てられたショックで心神を喪失してしまった、無気力になり、自暴自棄になり、トイレにさえ自分の力で行けなくなってしまった母親を抱えながら働かなければならなくなった。


侍衛係所属のビロンギングになったキッカケは、16歳のある日、道路工事のバイト上がりにたまたま遭遇したキャスタウェイを、新手の暴漢だと勘違いして叩きのめしたことだった。


その頃の彼は異能を持っていなかった。

だが、天性の身体能力は彼にそんなものを必要とさせなかった。


彼は、瞬く間に大成した。

借金は25の頃に完済した。30手前にはしょぼいけれども母の生まれ故郷にマンションを一部屋買えた。その頃には、母は笑顔を取り戻せど、もう車椅子でなければ生活できない程に筋肉が落ち、やせ細り、病弱になっていたが、親子二人、幸せな日々を過ごしていた。


そして現在、この部屋に彼の母はいない。


ただ、あの頃の写真が一枚、写真立てに入って、リビングのタンスの上にポツリと置かれているだけ。

折り畳まれた車椅子は、一生玄関前に立てかけられたまま。

誰の故郷でもなくなった、空っぽになったこの家は、色も温もりも、消え逝く残り香のように失っていくしかない。


…はずだった。


夕暮れ時、

突っ立っていると、ポスッと、背中に小さな塊が抱きつく感覚があった。


「ふへっ、おいカナモリ」


…振り向かなくても分かる。


コア子だ。


昼前に吉祥寺らへんを彷徨いてくると言った彼女が帰ってきたのだ。

彼女はニコニコな笑顔で秦に話す。


「見て見て、じゃん!吸血姫と一緒にピアス開けたんだー」


耳たぶから小さく垂れるチェーンピアスを見せびらかすコア子に、秦はポロッと言う。


「あぁ」


「『あぁ』、じゃねぇだろ!?『かっこいい!』とか『おしゃれ!』とか言えよ!もっとオーバーリアクション気味に褒めろよ!」


「…じゃあ、おしゃれだな」


「回答例をそのまま口に出してんじゃねぇ!ちゃんと自分の言葉で褒めろよクソが!」


多分、何と答えていようがブチギレていたであろうコア子は、秦の顔面にド太い銀弾を撃ち込んだ後、プリプリ怒りながら洗面台へ向かった。


秦は銀弾を摘みながら、そんな彼女の、…元気で、健康で、まだまだ小さな背中をぼんやりと眺めていた。


彼は悩んでいた。


コア子が問題児過ぎるからではない。


母と入れ替わるようにして共に暮らし始めた彼女と…、そして吸血姫に、二人の保護者として自分に何が出来るのか、分からなかったからだ。


季節は梅雨入り前、桜は既に散り尽くしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ