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ルッキズム死ね。でも美少女にはなりたい。  作者: :)
第三章 『始まったもの』

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能力戦(終)

決意は、いつだって脅威に立ち向かわせる。


コア子の足を一歩、一歩と進ませる。


気迫に押され、後ずさっていたメッケルダウンは、遂に壁際に追い詰められる。

焦る彼。だが絶体絶命だとは思わない。


「みっ、MIKADOォッ!もういい!交渉は決裂した!もったいないが、そのチビガキを遠慮なく食み殺せッ!」


そう、彼にはMIKADOがいる。


コア子の銃が、その口径の関係上、両手で構えなければマトモに撃てない一方。

見敵必殺、彼女の体内という、彼女の命に最も近い距離からぶち殺しが出来るMIKADOは依然、場を支配している。


「そうだMIKADO!その人間も、吸血姫も殺してしまえ!そして、俺達の方へ『夜』を加速させろォッッ!!」


コア子の腹から飛び出ていたMIKADOは、負傷した口部の再生を終了する。

それと同時に、命に従い、大敵の首元に再び食らいつく。牙が、頸動脈をもう一度捉える。


が、


「どうした…、どうしたMIKADO!お前は食らいついたんだ!後はその生命を噛み散らすだけだろう!それなのに、何故、何故…!」

「何故ッ!急に動きを止めるッ!そんな命令は下してないのだがッ!」


ピクピクと痙攣したMIKADOは、やがて口を放してしまい、コア子の腹からだらんと垂れ下がる。

唖然とするメッケルダウン。そんな彼に、コア子は嘲笑うように伝える。


「そりゃあ、お前ぇ…、ココに来る前にしこたま"打ってきた"からなぁ…」


彼女が肩掛けのナイロンバッグから取り出したのは、一本の注射器。


「そっ、それは…!」


メッケルダウンが指さした、その答えは。


「ヘロインだッ!!本来なら痛み止めとして少量だけ利用するものだが…」

「この寄生虫が私の肉を食みながら成長すると見て、私は考えた!まるで生物濃縮のように、私が取り込んだ毒物を血肉越しに捕食者へ伝えてやろうとな!」

「規定量の十二倍!私が打った量は致死量だ!おかげで脳みそがシェイクになって、今にも廃人になってしまいそうだし、股もユルユルになって、路上で三度も"ぶちまけ"ちまったが…、私の体は完全な毒に成れた!テメェのクソMIKADOをブチ殺してやるためのなァ!!」


血みどろ、ボロボロ。内臓を滅茶苦茶に食い散らかされ、どてっ腹に穴を開けられ、潰れた気管から辛うじて息をして、その上でシャブ中になって、コア子の体は、満身創痍すら超えて瀕死極まりない。


しかし、コア子は怯まない。怖気づきもしない。


彼女はピンと伸ばした両腕でリボルバーを構える。メッケルダウンの脳天を確かに狙う。


「うわっ…、わっ…、うわぁぁぁぁぁっ!」


コア子の狂気。覚悟という狂気。目の前に迫る死。自分の死。


それらに怯え散らかしたメッケルダウンは、必死のパッチになってコア子に飛びかかった。


それは良手。いくら自分が肺や腹を撃ち抜かれた怪我人と言えど、自分より更に重症で、しかも小さな女の子に、接近戦で負けるはずがない。


彼は呆気なくコア子の手からリボルバーを払い落とし、更には彼女の細い首を両手で締め上げることが出来た。


立場反転。メッケルダウンはコア子を逆に壁に押し付けた。そして、雑巾を絞るように彼女の首を絞り、ギリギリと彼女を死に追いやった。


大人の力と子どもの首。ボキ、ポキと喉と首の骨が砕ける音がする。容赦のない、あまりにも酷い光景。


しかし、彼女は伊勢居地コア子。

超一流のビロンギング。

この程度で万事休すタマではない。


メッケルダウンとゼロ距離になったのは、彼女にとって、寧ろチャンスだった。


彼女は、前に手を伸ばした。そして、血走った目をしたメッケルダウンの側頭部をガシッと掴んだ。


「…!」


同時に、彼女は、制限され尽くした『Black Out』の力、つまり、誇り高き『Station to Station』のもう一つの能力を発動させる。


『他者の脳に、自分の知覚情報を流し込む』


もちろん、ただの知覚情報じゃない。『Station to Station』を全開に発動させた上での知覚情報だ。

その情報量は膨大。人間は、ただでさえ目2つ、耳2つから入ってくる情報量ですら処理に苦労するのに、それが10倍、100倍となってはどうだ。

普段からそういう処理をしまくって慣れているコア子の一方で、そんな経験を一度もしたことがない、したことあるはずがないメッケルダウンが、いきなりそれだけの情報量を食らったら、どうだ。


「がッ…、あッ…、へぇッ…!?」


メッケルダウンの脳は、直ちにパンクした。彼の顔面は脳が障害を起こしたかのように麻痺した。彼の全身から力が抜け、当然、両手も緩んだ。


コア子は、その一瞬を決して逃さない。彼女は即座にリボルバーを拾い上げ、彼と適度な距離を取った後、真っ直ぐ立って、脇を締めて、安定した体勢で殺意を構えた。


今度は、外さない。


持ち前の回復力で混乱からすぐに意識を取り戻したメッケルダウンは、今に引き金を引こうとするコア子を前に、叫んだ。


「MIKADOォォォォッ!!僕を覇者たらしめるMIKADOォォォッ!!僕に今必要なのはお前の持つパワーだァッ!!目を覚ませッッッ!!そして今こそ、今こそ僕をMIKADOへと導いてくれェェェッ!!!」


しかし、その想いは届かない。


MIKADOは目を覚まさない。


…だが、彼の相棒は既に成し遂げていた。


最後の最後、コア子が、重い引き金を引くために力を込めた瞬間、彼女の体は限界に達した。


彼女は、口から大量の血を撒き散らしながら、腹から歯型まみれの臓物を飛び散らせながらぶっ倒れた。


「…へ?」


あの土壇場が、打って変わってシンとした。


「勝っ…、た…?」


メッケルダウンは、死体そのもののようなコア子をぽかんと見つめて呟く。

MIKADOが、役目を果たした顔をしてくたばる。


「勝った…」

「勝った…、勝った…!勝った…!」

「勝った!勝った!勝った!勝った!勝った!勝った!勝った!勝った!!」

「そうだ!お前はいつも貪欲に勝ちにいく、僕の最高のヒーローだ!今回も、やってくれたんだ!」

「やはり僕とお前でMIKADOだ!僕達こそ、『夜』を支配すべき頂点だ!」


興奮。絶叫。安堵の涙。

このバーにはもはや、彼の声しか響かない。

それこそが勝利。


彼は心の底から喜んだ。


…しかし、その至福を引き裂くように、コア子の声はこぼれた。


「馬鹿…、『私達』の、勝ちだ…」


「へっ???」


ひょうきんな声で反応したメッケルダウン。


その、彼の視界が、空気を裂くような音と共に、ゆっくりと下に落ちていく。

落ちて、落ちて、やがて地面に転がる。


「へっ…、へっ…?」


天を仰いだ彼の視界。その視界に、首から上がない自分が映る。


血に濡れた斧を持って、自分を見下げる秦要護が映る。


「あれ…?僕達の勝ち…、勝ちは…?」


「んなもん、最初から無ぇよ」


間もなく、彼の頭はスイカのように真っ二つに割れた。





警察に代わり、侍衛係の非戦闘員達が店内を忙しなく動く。

具体的には、事件の後処理のために動く。


ビロンギングだが、あくまで民間人であるコア子らは、この状況にあって特に厚遇はされない。警察が自警団を職場仲間だと思わないのと同じ。怪我をしていても、心配はされど、組織内の福祉に与ることはできない。それが普通。それがマニュアル通りの対応。


しかし、侍衛係内に秦を慕う者は多い。そのためコア子は、もれなく「局長には内緒ですからね…?」と念を押す一人の女性職員の異能により、応急処置された。飛び出した内臓を体内に押し込み、傷口を縫い、その上で異能の恩恵を受けたコア子は、間もなく危篤状態を回避した。


「…尤も、私の力は対象の生命力を強化するだけですから、根本の治療は出来ません。だから、病院にはちゃんと行ってくださいね?滅茶苦茶になった内臓も、折れた骨も、入院して、適切な医療を受けてこそ完治するんですからね?」


「は?誰が入院なんてするかコラ。私の寝床は私が決めんだよバーカ」


「えぇ…?」


悪態をつくコア子の頭を、秦がポカっと殴る。彼が女性職員に深々と頭を下げると同時に、コア子も渋々頭を下げる。


コア子は、秦の大きな背中におぶられる。


「…病院に行くのが嫌なら、せめて『秘薬』は飲め。後で本町から貰っといてやるから」


「じゃ、ついでにアイスも買ってこいよ。熱気まみれの戦場にいたからサッパリしたい」


秦は分かったと頷いた。

コア子は上機嫌になって、秦の首に両腕を回した。


「…しかしお前、あまりにも肝が座りすぎじゃないか?あれだけの怪我をしたら、流石に俺でも狼狽えるぞ」


「はっ、雑魚が。私は無敵なんだよ」


「そうか。そうだな」


「そうだよ。それによ」


コア子は少し気恥ずかしそうに秦に言う。


「…どんな危機に陥っても、お前が必ず助けに来てくれるって、知ってるからな」


「…そうか。そうだな」


応急処置にそこそこ時間がかかったから、外は、いつの間にか夕日に照らされていた。

ちょっと感傷的になるにはおあつらえ向きだ。


幸い、ココから家までは一駅分しか離れていない。ゆっくり歩いて帰れる距離。


「…そういや、吸血姫の奴はどうした?」


「あぁ、アイツ?アイツなら、銭湯から出る前に『番頭に電話を借りてカナモリに電話しろ。その後は脱衣所の隅に隠れてろ』って言っておいたから、その通りにしてんじゃねぇか?」


「…電話?」


「そうだよ?なぁカナモリ、今後もこういうことがあるんだからさ、いい加減私にもスマホ買ってくれよ。今どきスマホの一つも無きゃやっていけないぜ?」


「…スマホは子どもの脳に悪影響らしいからダメだ。ポケベルなら構わないが…」


「は?ふざけんなよお前。あんなおもちゃで何が出来んだよ」


「出来るだろ、少なくとも連絡は。…いや、それより、電話って何だ?俺はただ、街が騒がしかったから出てきただけで、吸血姫から電話なんて貰ってないぞ?」


「…あれ?」


「…お前、吸血姫にちゃんと俺の電話番号教えたか?」


「あー…」


…虚しいね。そのやり取りの間も、美少女は独り、必死に危機と戦っていた。


具体的には、何度も何度も番号案内に電話をかけていた。番頭からは5,6回目で電話の貸し出しを拒否されたから、以降は店の近所にあった公衆電話で。オペレーターリセマラに全てを賭けていた。


「あ…、何度もすみません…。あの、『クリーン清掃事務所』のハタ・カナモリって人の電話番号が知りたいんですが…。えっ、そんなふざけた名前の事務所は無い…?いたずら電話かって…?ち、違うんです…!友達が命の危機でして…、本当なんです…!信じてください…!」


その後、コア子と秦が例の銭湯の前に辿り着くと、そこには、公衆電話に有り金を全部むしり取られ、新天地が故に家への帰り道も分からず、途方に暮れてむせび泣く、大量のカルピなんとかの缶を両腕に抱えた銀髪哀れの姿があった。


かわいいね。

三章おわり。

コア子が生きている理由は偏に気合いです。

すごいね。

知ってますか?星とかブックマークって、実は無料で出来るんですよ…?!

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