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進行役
使いなれているはずの会議室は、
今日はいつもより少し狭く感じた。
重要な確認が、いくつも控えている。
本題に入る前に、頭の中で資料をなぞり直す。
扉が閉まりきる前から、
言葉が口をついた。
クライアントの三人が席に着くより早く、
進行を始めてしまう。
間を作ると、
空気が重くなる気がした。
資料を配る。
名前。
時間割。
撮影内容。
確認ではない。
すでに決まっている事項だ。
感情を挟まず、
淡々と、資料を読み上げていく。
「質問はありますか」
誰も、すぐには口を開かない。
一拍置いて、
このまま締める流れに入ろうとした、そのとき。
ボーカルが、静かに口を開いた。
「……全部、
もう決まってる話ですか」
少しだけ言葉を選ぶ。
「基本線は。
もちろん調整は可能です」
可能。
変更ではない。
それ以上、
聞かれることはなかった。
「では、
よろしくお願いします」
扉の前で、
ボーカルが一度だけ足を止める。
何か言いたげな背中を、
そのまま見送る。
感情は、動かさない。
さて。
もう一つ、仕事が残っている。
書類をまとめながら、
会議室に残ったドラムに、一瞬だけ目を向けた。




