恋する乙女はハートの目?
午前9:35.
今日もいつもと同じ時間、ギリギリだ。
「おはよう、穂波」
「わ、美空!…おはよう」
人の顔を見て驚くのって、結構失礼だと思うんだけどな。
だが、穂波の視線の先にアルデンテくんがいることがわかると、妙に納得してしまった。
なんだか、恋する乙女ってカンジ?…ちょっと古いか。
「あ…」
一瞬、菅野さんと目が合った。
うわー、なんかすごく輝いて見えるなー。
胸がドキドキと高鳴る。
うそ…私もしかして…。
菅野さんのこと本気で好きになっちゃった?
って、そんな訳ないよ!だって私より13歳も年上だし、それに…
――― 大丈夫だったか?
あの時の菅野さんの声が頭に響く。急に顔が熱くなった。
ちょ、ちょっと私!どうしちゃったのよ?
もう、何か…わからないー!
「…おいっ、木下!!」
「え…はっ、はい!わっ!?」
突然の声に驚いて顔を上げると、目の前に原田さんの顔があった。
本当、顔近いんですけど。
「何ぼさっと突っ立ってんだよ?チェックは終わったのか?」
「あ…すみません。まだでした」
しまった、考え事してたら本当にまわり見えなくなちゃってた。
「顔、赤いぞ?恋する乙女は目がハートマークか?」
この人も、だいぶ古い表現を使うなぁ。
「何言ってるんですか!」
「え…本当、なのかよ!?」
自分で言ったくせに驚いてる。その上、かなり真剣な顔して言うからおかしい。
「いーじゃないですか!原田さんには関係ありませーん」
…あれ?
何か言い返してくるかと思ったら、黙ったままだ。なんだか拍子抜けしてしまう。
「…木下さーん、チェック行きませんか?」
「はいっ、すみません!」
飯島さんに声をかけられて思い出した。
開店10分前…やばい!!
「いらっしゃいませー、お客様何名様でございますか?」
営業開始。連休最終日、今日も忙しくなりそうです。
「木下さん、これっ…5番です!」
「はい!」
アルデンテくんが渡してきた。あんなこと聞いちゃったら、穂波に悪いことしている気がするなぁ。
ま、仕事だから仕方ないんだけどね。
「木下、こっちは11番な」
「は、はいっ!」
菅野さんから皿を受け取る。
ヤバイ…緊張しすぎだよ、私!
どうしてだかわからない。だけど、こんなにも胸が高鳴ったのは久しぶりで…これって、スキってことなのかな?
…ちがーう!!そんなこと、ないんだって!
「きーのーしーたぁー!!さっさと運べぇー!!」
「はいー!!」
原田さんの怒声で我にかえった。
集中しなきゃ!迷惑かけちゃう…。




