連休2日目。
午前11:00.
連休二日目、開店時間。
「オーダー入ります!」
今日も朝からお客さんは多い。外は春うらら、ぽかぽか陽気で外出にはもってこいの天気だ。
「木下さん、これお願いします」
アルデンテくんが差し出してくる。
「…どのテーブル?」
「あっ!えとっ、3番です!」
「わかりました。次からは、ハッキリ言ってね」
「はい!」
って、朝からワインですか…。元気な人もいるもんだな。
ところが、3番テーブルには、未成年のような男の子たちが座っていた。
「お待たせいたしました、ワインでございます。…あの、お客様?」
「何?」
一番手前に座る男の子が無愛想に言った。
「失礼でございますが、年齢のご確認をよろしいでしょうか?」
「何、俺たち未成年にでも見えるっての?」
「いえ、一応確認のためにお尋ねしております」
私が言うと、少し男の子たちがたじろいだ。
こういう対応には慣れている。2年のキャリアをなめてもらっちゃ困るね。
「…20だよ」
「申し訳ございませんが、証明できるものをお見せいただけますか?」
私が言うと男の子がにらんできた。営業スマイルを崩さず、その視線を真正面から受け止める。
「…ちっ、行こうぜ。もういい、会計だ」
「かしこまりました、ありがとうございます」
丁寧に言って、お辞儀をした。この私に口で勝つにはまだ若すぎたわね、少年たちよ。
レジに向かう男の子たちを見送って、テーブルを片付けはじめる。
「さすが木下さん、慣れていますね」
「あ、飯島さん。…敬語はやめてくださいよ、私のほうが年下なんですから」
「ふふ。でも、キャリアから言えば私のほうが後輩ですからね。尊敬していますよ、先輩!」
この人は、飯島さん。
アルデンテくんの同期で私より7歳も年上なのに、丁寧語で話しかけてくる。なんだか、少し照れくさい。
「木下さんは、ああいうお客さん緊張しないのですか?」
一緒に片付けていると、飯島さんが尋ねてくる。本当に後輩みたいに見えてきた。
「そうね…もう慣れちゃったかな。飯島さんも、すぐに慣れるよ。…あっ」
やばい。つい、タメ口になってしまった。
「いいですよ、その方がお話しやすいですし。…やっぱり慣れ、ですか」
「…そうですね、私も初めは怖かったんですよ」
「うーん、その余裕がうらやましいです。…私もがんばります、木下先輩!」
楽しそうに言って、飯島さんはテーブルを離れていった。
本当に、いじわるな人だな。私は苦笑するしかない。
午後6:00.
ディナータイム開始。
この時間からペペロンでは、ディナーコースが始まる。
メニューがいくつか増えるのと同じわけで、結構面倒だったりする。
「木下さん。Aコースの前菜、21番です!」
「あ、木下!こっちはワイン、15番に頼む!」
「はい!わかりました」
二つ同時に頼まれるなんてことにも、もう慣れた。アルデンテくんは、ちゃんとハッキリ言えてたし、上々ね。
サラダとちょっとお高いワインを両手に持って、テーブルに向かった。
「お待たせいたしました。…ごゆっくりどうぞ」
ワインをテーブルにおいて、栓を抜く。これもサービスの一環ですから。
「お待たせいたしました。Aコースの前菜でございます」
「あ、追加、だよな?…どれだっけ?」
「これだよ!このワイン2本追加で」
「かしこまりました」
席に座る、20代前半の男性が言ってきた。すばやく、メモを取る。
夜になると、ワインを注文してくるお客さんが多い。店の雰囲気も大人っぽい感じだし、パスタとワインの相性はいいから当然か。
「ワイン2本追加お願いします!」
「木下が飲むなよー!」
原田さんが笑いながら言ってくる。
仕事中になんてこと言うんですか!
「ほれ、追加のワイン!」
「あっ、ありがとうございます」
「木下ぁ、何ぼさっとしてんだよ?きびきび動く!」
「はいー」
原田さん、本当、声大きいって!みんなの視線が痛い…。
そそくさとワインを持っていく。確か、21番テーブルだったよね。
「お待たせいたしました、追加のワインでございます」
「おっ、来た来たぁ!ねー、お姉さんケー番交換しなぁい?俺、めっちゃ好みでさー」
うーん…すでにできあがってる人いるんですけど。こういうお客さん、この店じゃあんまり多くないから慣れないなぁ。
「申し訳ございません。ワタクシ、仕事中ですのでご遠慮ください」
丁寧に、だ。とにかく丁寧な対応が大切!一礼してから、ワインの栓を抜いた。どんなお客さんでも、サービスを忘れてはいけないよね。
「いいじゃん。…そうだ、一緒に飲もうよー」
「ありがとうございます。お気持ちだけ、頂戴いたします」
そう言ってテーブルを離れようとした。しかし、栓を抜いていた手をつかまれてそうできなかった。
「そんなおカタいこと言わないでさぁ、飲もうよ!」
「やっ、困りますっ!離してください!」
「いやだねー。ほら、飲もう?注いでよ」
ずいぶん酔っているのか、なかなか離してくれない。一緒に座っている仲間たちに視線で助けを求めるも、面白そうに見てくるだけだった。
美空、ピンチ!?




