他国へお出かけだが野宿とは言ってないそして天ぷらいやテンプレ
色々と悩み多きこの頃です。
皆さんも社会の荒波に負けず頑張りましょう!
それでは、どうじょ(/・ω・)/
「それではいってらっしゃいませ」
カンリに見送られる青年。
その脇にはネム助、軍鶏助、カンリがいる。
「ホント、カンリって何でもありだよね?」
「いえ、私にも出来ないことはいくらでもあります」
青年の目の前にいるカンリと横にいるカンリは同じ存在である。
彼女の能力の一つ分身体。自分の分身を作りあげる能力である。
これにより外出中の建物の管理を彼女は可能とするのだ。
分身体であるため情報の共有もラグ無しで行えるなど、最早情報戦では彼女の相手になる者はいないだろう。
軍鶏助は不思議そうに2人のカンリを交互に見やっているが、ネム助は全く動じていないのは流石猫と言った所か。
「まぁ、それはいっか。行って来ます」
「にゃ!」
「ぴぃ!」
分身体カンリに見送られ青年たちは出発した。
◇◇◇
出発し、森の中を進む青年たちだったが、そう簡単に事は運ばないのである。
「GYUROROROROOOOO!!」
青年たちの目の前に見たこともない様な獣が現れる。
その風貌はトカゲなのだが、その大きさが尋常ではない。軽く3mはあるだろうか。
「ッ~!!」
青年は必死に叫びたくなる気持ちを抑えている。
実際両手で口を押えている。
「ぴ、ぴゅい~」
軍鶏助も巨大な敵に青年の服の内側に逃げ込んでいる。
カンリはマスターを庇って前に立っている。
「GYUAAAA!!」
蜥蜴の化け物は餌に向かって襲い掛かる。
が、
「んにゃ」
気の抜けるような声と共に青年の周囲に見えない壁が立ちはだかる。
勿論ネム助の魔法 《シールド》である。
バチィィィン!
蜥蜴は突撃の衝撃で跳ね返る。
「GYU、GYUOOOOO!!」
自分の攻撃が弾かれたことへの怒りか、大蜥蜴は咆哮を上げる。
しかし長男ネム助には何の効果もない。
「にゃにゃにゃ~」
すると、ネム助が3匹に突如増えた。
そして今度はネム助の方から攻めに掛かる。
「にゃっ!」
「にゃにゃっ!」
「にゃにゃにゃっ!」
3匹が前方左右に分かれて位置に着く。
蜥蜴も警戒してか無暗に攻撃しようとはしない。
ネム助を対等な敵と認めたのだろう。その目には侮りの色はない。
だが、蜥蜴は1点だけ測り間違えていた。
それは、目の前の猫が自分よりも遥かに上の強さを持っていたことである。
『にゃ~にゃ、にゃ~にゃ、にゃーーーー!!」
掛け声の様な鳴き声と共に3匹の口元から光が発された。
それは一瞬にして蜥蜴に死を届けた。
光が収まると残っていたのは蜥蜴の下半身だけだった。
上半身は灰も残さず消え去っていた。
「ほえ?」
青年、まさかの展開に吃驚仰天のご様子。
「ぴぃぴぃ!」
軍鶏助は兄の活躍に大喜びでネム助に向かって駆け出している。
「ネム助様は流石ですね。私の《分身体》を見て真似たのでしょうか?それに最後のあれは宛らエネルギー砲と言った所でしょうか」
カンリはネム助の戦いの考察をしている。
カンリの予想通りネム助は分身体のカンリを目にして、自分もやってみようと思って真似したら出来てしまったのである。
このとんでもさの訳は神様が戦闘に関する能力を纏めてネム助に授けたからに他ならない。
事実、ネム助の戦闘能力及び魔導の力はこの世界の生物上最高と言えるほどのものとなっている。
青年はこのことは知らないので、今も呆然としているのである。
だが、魔境の魔物達は待ってくれない。
大蜥蜴の死骸に群がる多数の魔物。
更には青年に向かって飛び掛かって来る魔物もいる。
こりゃたまらんと、青年たちは逃走を開始する。
「ぎゃああああああああ!!!」
今度は叫び声を抑えられなかった青年が悲鳴をあげながら走る。
ネム助は軍鶏助を背に乗せ軽やかに飛び跳ねている。
「マスター!ここはアレを!」
「あれ?あれって。ああ!」
カンリが何かを促す。
青年もその当てについて思い出した様だ。
「ネム助、俺の近くに!」
青年が呼ぶとぴょんと足元に戻って来るネム助。背に乗る軍鶏助は呑気にネム助車を楽しんでいる。
「家門!避場口!」
青年の言葉と共に地面に幾何学模様が生まれ輝き始める。
「ギシャァァァァァ!!」
動きの止まった餌に襲い掛かる魔物だったが、爪が掛かるかと言う所で獲物の姿は消え逃亡を許してしまった。
辺りを見回すが何処にも獲物の姿や匂いはなく、諦めて住処へと戻るのだった。
「お帰りなさいませ」
気付くと青年はアパートの裏口にいて、分身体カンリにお出迎えされていた。
「はぁ、間に合った」
青年は尻餅をつく。どうやら転移は成功したようである。
彼の管理人魔法が1つ《避場口》。その効果はアパート非常口への転移。
つまり、危険を感じた場合この魔法を使えば何処からでもアパートに逃げ込める、という訳である。
小心な青年には正にピッタリな魔法であった。
「うにゃ?」
「ぴぃぴぃ!」
長男と次男はいつの間にか自分達の家に戻っていたのを不思議がったり、吃驚したりしている。
「カンリ~、あんなのどうやって進めばいいのさ?」
青年完全に諦めモードに移行である。責めの口調には少しばかりの棘も含まれている。
「はい、明日は転移したあの地点から再び旅を続行します」
「続行って・・・そもそもどうやってあの場所に戻るんだ?」
「今回の《避場口》発動で転移して来た地点がこの非常口と繋がっています。つまりこの扉を開けばあの場所に直に行けると言う事です」
「え、なにそれ?危なくないの?」
あんな魔物沢山な場所と直接繋がっていると言われては繊細で神経質な青年の心境は不安一色である。
「それに関しては大丈夫です。あの扉はマスターとマスターが認めた者以外は出入り不可能です。それこそ魔導を極めた大魔導士でも不可能でしょう」
よく分からないが問題がないと言うのは理解した青年。
少しは落ち着いたようだ。
「じゃ、今の所大丈夫なんだね?」
「はい、それで今後についてですが、毎日少しずつ《避場口》を使って進んで行きましょう。そうすればかなり安全かと思われます」
つまり、非常口から森へ→進む→避場口を使って戻る、この作業を繰り返していこうということである。最早旅でも冒険でもないが、青年からすれば願ってもない事である。
「その方が俺も助かるよ。流石にあの森で野宿は無理だ」
魔物を思い出してぶるりと震える青年。
それでは、そのようにしましょうとカンリはまとめる。そして汚れた男共に風呂を勧める。
お言葉に甘え長男、次男を担いで青年は風呂に向かった。
風呂から上がるといつもの様にみんなでご飯を食べそして就寝する。
そして翌日から森の中へ転移し森の中を進んでまたアパートへ戻る、このサイクルを繰り返す。
多数の魔物に狙われたら全速力で逃げるか、即転移。何とも逃げ腰な冒険譚であった。
そして戦略的撤退作戦7日目、遂に青年たちは森を抜けることに成功する。
とても長い道のりであった。寝るのはいつも部屋だったが。
「やっとかぁ~」
青年漸くの森からの脱出に一息である。
「それじゃあ、切りも良いし今日の所は一旦帰ろっか」
真面目に旅する気皆無である。
しかし、カンリはちゃんと注意する。
「マスターここは場所が開けているので、転移を使った場合誰かに見られる可能性があります。ですので、何処か物陰を見つけてそこから戻りましょう」
至極最もである。
流石カンリ。見た目は幼女でも出来る女性なのである。
「確かにそうだね。じゃあそうしよう」
と言う訳で青年達はふらりふらりと丁度いい場所を探すのであった。
「カンリ、やっぱり森から距離を取った方が良いのかな?」
「そうですね。ある程度の距離は立った方が安全ですね。もう少し先に行きましょうか」
そして森から出て1時間程歩いて漸く転移できそうな場所を見つけた。
見つけたのだが、
「ねぇ、あれ・・・」
「はい、戦闘中ですね。恐らくですが、盗賊の類かと」
見るからに凶悪な風貌の男達が場所に襲い掛かっていた。
しかし、そんな者達と剣を向け合う存在がいた。
「盗賊と戦ってるのって、護衛?」
「はい、あの格好から見るに護衛対象に仕える兵士でしょう。」
青年は迷っていた。
勿論、助太刀するか、しないかにである。
だが、この中で戦えるのはネム助だけだ。それにネム助に人を殺させるのにも抵抗があった。ネム助自身は全く以て気にしないのだが、平和ボケが抜けない青年であった。
「きゃあああああ!!」
その声は馬車から聞こえて来た。その声は高く恐らく幼い女子が乗っているのだろう。
見ると、襲われている側は劣勢なようであった。
盗賊の死体が幾つも転がっているが盗賊達の数的優位は未だ変わらないようである。
すると、盗賊が青年達にも気付いたようである。
「何だあの男。おい、てめぇらついでにアイツも殺って来い」
「おお!」と数人の男達がやって来る。
ネム助が動こうとしたが、青年はそれを止める。
顔は真っ青である。目の前で人の殺し合いを見せられたのだ。仕方ないと言えば仕方ない。
だが、その目には覚悟という小さな火が灯った様にも見えた。
「お、俺がやる。ネム助ばかりに頼ってたんじゃ、駄目なんだ」
「んにゃ~」
「ぴぃぴぃ?」
「大丈夫?」と心配するブラザーズ。
しかし長女は違った。
「分かりました。マスターのご随意に」
心配する素振りなど碌に見せず、青年の背中をそっと押してやる。
だが、固く結んだその手には彼女の本心が見事に表れていた。
「ありがとな、みんな」
青年は愛らしい家族たちに笑みを向けると正面を見据える。
盗賊達との距離は大分縮まっていた。
青年は一つ深呼吸をする。
そして、唱えるのであった。
「家門、侵入者を排除せよ守り人!!」
そして青年の前に1体の土塊が現れた。
その大きさは3m程。
「ッ!ゴーレムだと!?アイツ魔術師だ!」
「中型の様だし問題ねぇ!おめぇらであのゴーレム引き付けてろ!その間に俺らが魔術師を仕留める!」
「チッ、しゃーねーか。早くヤレよ?」
「わぁーってるよ」
この盗賊達かなり手慣れた様子である。
しかし、相手が悪かった。
ブウウウウウウン!
巨人の腕は見たことのないスピードで振るわれその風圧だけで、盗賊達が吹き飛ばされる。
『うわあああ!!』
見ると男達の体には穴が開いており、青年に襲い掛かろうとしたほとんどの者が息を引き取っていた。
生き残っていた者達はこの異常な事態に当然恐怖を覚えた。
「おい!何だよアレ!!」
「し、しらねぇよ!あのゴーレムが腕振った途端吹っ飛ばされたんだろうが!」
「うにゃ」
その瞬間彼等の意識は永遠に途絶えることとなった。
猫は大好きな青年に牙を向ける輩を決して許しはしないのだ。
そして、その青年と言えば
「おえええええ!!」
吐いていた。
これでも頑張った方である。
しかし、盗賊はまだ残っている。
だが、戦況は確実に変化していた。




