盗賊撤退とご挨拶
とりあえず、どうじょ(/・ω・)/
「おいおい、ふざけてんのかありゃ?」
盗賊団の頭は信じられなかった。
獲物はヒョロヒョロの青年と猫1匹。
珍しい恰好をしていたので金になると思い部下をやった。
いつも通りならすぐに片付けて戻ってくる筈だった。
だが、少し目を離した隙に仲間は皆やられていた。
生き残っていた2人の男も突如倒れ、起き上がって来なかった。
傍に猫がいたがあれは魔物なのだろうか。
そして獲物であった筈の男の前にはゴーレムらしき姿も見える。
「魔術師だったか、チッ!」
まず間違いなく、あのゴーレムは青年によるものだろう。
あの男のせいで折角の数的優位、それによる士気の維持が困難になった。
ちらほらと向こうの様子に気付いてる下っ端もいる。これ以上はマズイ。
得る物はなく、少なくない兵力を失った。だが、あの男と護衛集団をまとめて相手するのは無理だと頭は頭のそろばんで叩きだす。となれば選ぶのは、
「てめぇら!ここは退くぞぉ!」
撤退である。
だが、そこかしこから不満の声が上がる。
皆、男ほど状況判断に優れている訳ではないのだ。
しかし、一々そんな声に構ってられないと男は即断する。
「死にたきゃ好きにしろ!俺は退く!」
頭の男は即座に戦線を離脱する。生き残っていた直近の者達も指示に従い、その場から離脱する。
目の前の欲に目が眩んだ下っ端ばかりがその場に残された。そしてそのような者に限って腕は大したことは無い。次々に兵士に討たれて行き、最後の者が切り捨てられ、戦いは終わりを迎えた。
戦いの跡は悲惨なもので数多の死体が転がっている。
中には護衛の兵士らしき死体もあった。
「もし、旅の御方よ。よろしければお話しさせて頂けませんか?」
盗賊がいなくなった後、吐き終って顔色の優れない青年に襲われていた一団がやって来た。
護衛に守られやって来た人物は高そうな服を着た老人だった。
「は、はぁ」
正直吐き疲れて休みたかった青年はそんな曖昧な返事を返す。
「お前!この御方は「止すのだ。この御方は紛れもなく我らの恩人。それにお疲れのご様子なのだ。察するべきはこちらだ」
「はっ、出過ぎたことを。申し訳ありませんでした!」
怒鳴り掛けた兵士の方は真面目な青年だったらしい。老人の諫めを素直に聴き入れている。
他の者達もそれに不満は無いようである。
「いや、申し訳ない。この者は若く、何卒御容赦下さい」
「あ、あの、大丈夫です。こっちこそ失礼な態度ですみませんでした」
互いに謝って場の空気がある程度温まり、緊張感が少し緩んだ所で今度は自己紹介が始まる。
「あ、自分、黒須と言います。えーっと申し訳ありません。自分、田舎の出でしてお名前の方伺っても宜しいでしょうか」
「クロス様ですか。おっと、私としたことが失礼。私の名はアーデウス・ファクマルフォンと申します。しがない隠居です故そう堅くならなくて良いですからな」
老人は鷹揚に言うが周りの威圧感がそれを許さない。
恐らく、この場で「じゃあ、爺さん」などと呼ぼうものなら青年には護衛の数と同じだけの剣が向けられるだろう。
「は、はぁ、それで何か自分達に御用でしょうか?」
名前を一度聞いただけで覚えられなかった青年は老人の名前を呼ばなかった。
当然、警戒していたのもある。彼はビビりなのだから。
「そう警戒なされるな。私の事はそうだな・・・アーデウスとお呼び下さい」
周りの兵士がざわつくが老人の一睨みで見事に収まる。
青年でも、この老人が位の高い人物であることは簡単に予想が着いた。
「いえ、流石にそれは問題でしょう。アーデウス様と呼ばせて下さい」
「う~む、仕方ないか。では、クロス殿早速なのだが、相談に乗って貰えないだろうか?」
青年しばらく家には戻れそうになさそうである。
◇◇◇
「えっと、つまり、一緒にアーデウス様のお住まいがある街まで行って欲しいと」
「うむ、どうか力を貸してもらえないだろうか?」
盗賊のせいで兵士の数も減っている。
それにあの盗賊達がまた襲って来ないとも限らない。
更に魔物の存在もある。
そんな中10人近い盗賊を一瞬で倒した黒須青年はこの老人にとって、今現在、とても頼りたくなる存在なのだ。
しかし、青年の方からすればご勘弁願いたいところである。
彼は今回奴隷を買いに来たのだ。自己紹介の時点で田舎の出と言っている以上、本来の目的については話すことは出来ないし、もし、知られてしまった場合、疑いの目を向けられるのは確実だろう。
尚、彼が断りたい一番の理由は彼等と行動を共にしなければならないことである。
彼等と目的地を目指す以上、寝る際に転移して自室に戻ることなど不可能なのだ。
(すっごく断りたいけど、無理だよなぁ~)
護衛達の「分かってますよね?」な目付き、そして明らかに高い身分の老人の丁寧なお願い。
THE日本人な彼には到底断れる筈もなかった。
「わ、分かりました。ご一緒させて頂きます」
「そうか、そうか。よろしく頼む、クロス殿」
笑顔なアーデウスとは対照的に青年はトホホな心境だった。
それから死体の処理を終え、出発となった際とある問題が生じた。
それは移動手段についてである。
アーデウス氏は黒須青年を馬車に乗せようとするのだが、護衛達がそれを認めなかったのだ。
生い立ち定かではない男を主と一緒にさせたくないと言う事だったのだろう。
しかし、これも老人の一声で収められたのである。
青年は兵士達の態度に辟易していた。
あからさまに非難されるのに対して「もうここから転移しちゃおうかな」と考えたほどである。
しかし、ここで逃げて後々問題が起こってしまうのも嫌なので何とか耐えていた。
「クロス殿、誠に申し訳ない。彼等も職務故、な」
自分が怪しいからと言外に言われているような気がして更に気が重くなった青年であった。
もしかしたらこの老人も完全に青年を信用した訳ではないのかもしれない。
そんな重い気分で青年が馬車に入ると老人の横には少女がいた。
「へ?」
「マリー、この方が我々の窮地を救って下さったクロス殿だ。これから一護衛もして下さる。ご挨拶できるな?」
老人の顔は好々爺の顔になっていた。
この少女は恐らく、
「はい!わたくしはマレリーンと申します。よろしくお願いいたします!」
「孫娘のマリーだ。クロス殿にはいざという時、この子を第一にお願いしたい」
予想通り、思いっ切り関係者だった。
「わ、分かりました。マレリーン様、クロスと申します。どうぞよろしくお願い致します」
「はい!それで・・・その猫さんはクロス様の従魔さんなのですか?」
少女の目は可愛らしいネム助にロックオンされている。
当のネム助は何処吹く風と言った様子で全く気に掛けていない。
「従魔と言うより自分の家族ですね。ネム助と言います。あと、こっちの雛は軍鶏助です」
青年の首元からちょこん顔を出す軍鶏助。
「何~?」と首を傾げている様は見事にあざとい。
「きゃあああ!!可愛い!!クロス様!ネムスケちゃんとシャモスケちゃんとお話しさせて頂けませんか?」
目をキラキラと輝かせる少女。
完全にフォーリンラブ状態である。
「いいか?」と2匹に確認する青年だが、ネム助は「面倒だにゃ」と言った様子で軍鶏助は「嫌!」と言わんばかりに服の中に隠れてしまった。
「あー、この子たち人見知りなんですみません」
青年はやんわりとお断りする。
少女はガーンと言った様子だが、無理に触ろうとしない辺り出来た子ではあるのだろう。
「残念ですが、仕方ありませんね」
悲しそうな顔だがこればかりは青年にもどうしようもない。
「クロス殿何とかなりませんかな?」
ヒソヒソと御爺ちゃんは孫娘の為にお願いする。
この様な無理強いをするとはやはりこの老人も孫には弱いのだろう。
「すみません。本人たちの気が向かない事を自分も無理にはやらせたくないので」
青年、普段は弱気だが、家族が絡むとその弱気が鳴りを潜めるのだ。
こういった部分もネム助たちが彼を慕っている理由の1つかもしれない。
「そうか・・・無理を言って済まなかった」
ご老人も青年の意思を感じたのか、ここは引いてくれた様子である。
「先代様、そろそろ出立して宜しいでしょうか?」
変な雰囲気になりそうなところに丁度良く外から声が掛かる。
「ああ、頼む」
慌てて席に着くと馬車が動き始める。
(どうなるのかなぁ)
膝の上のネム助を撫でながら青年はぼんやりと考えるのであった。
すみませぬ。
投稿間隔がこれまで以上に不定期になり申す。
何卒ご堪忍下され(;一_一)




