カミサマソンナノアリデッカ?そして相棒
犬や猫に好かれる人って羨ましいです。
うまひは極端で寄って来られるか避けられるかのどちらかです。
ぷいってそっぽ向かれると少しショックで少しキュンとするの分かる人は分かると思います。
「あーあ、頑張りすぎちゃったね」
あの少年は見事に魔法を発動させた。
それは良い事だ。素晴らしいとも言える。
何せ、この世界で彼だけが持っている固有の魔法だ。
僕もあのスキルには簡単な枠組みしか手を入れてない。
家に例えるなら資材置き場に色々な材料を突っ込んでいる状態と言った所か。
もし、彼がその材料を使いこなせればスキル自体を弄ることも可能になる。
つまり、あの魔法は・・・
「おっと、彼をこのまま寝かせて病気にでもなったら大変だ」
そう言って神はスキルから世界に介入する。
すると、気を失った筈の青年が立ち上がる。
「にゃあ~」
「おお、君か。安心して良いよ。僕はこれから少年を建物の中に移動させるだけだ。彼の負担になる様な事はしないから」
青年が話している筈なのにその口調には違和感がある。
それも当然。今青年の体には神が入り込んでいるのだから。
「にゃっ」
「分かった」と猫は返事をする。
「それじゃあ行こうか」
そう言って|青年(神)は屋根から飛び降りる。
高さは大体8~9m。
そして全く音を立てることなく着地する。
「にゃあ」
猫もそれに続く。
落下の衝撃等全く感じさせない静かな着地を見事に決める。
建物の入口に立つとガラスの扉が自動でスライドする。
「おおー、これが自動ドアかぁ」
この世界にはない技術に神は興味津々の様子であった。
「うにゃっ」
早くしろと言わんばかりに催促する猫。
青年の事が心配なのだろう。
「分かったよ」
その気持ちを汲んで渋々青年(神)が動き出す。
その後ろ髪を引かれる姿はまるでおもちゃ屋のガラス越しに見える目当てのおもちゃを泣く泣く見送る子どもの様であった。
因みに見た目は青年なので可愛さの欠片もなかったが。
建物に入ってすぐ、右手にドアがあったので1柱と1匹はとりあえずその部屋に入る。扉には<管理人室>と書かれた板が貼られていた。
鍵は開いていたのですんなりと入室する。
部屋に入ると神は突如服を脱ぎ始める。決して彼が裸族だからという訳ではない。
「さっそく~おっふろ~♪」
この世界には現代の様なお風呂は存在しない。
しかし、この建物の中ではそれが存在する。
他にも、この部屋に限ってはテレビやパソコンまで置かれている。
知識しか持たない文明の利器に少年神はウキウキなのである。
一応、雨に打たれた青年を気遣ってとの建前もある。
やりたい放題、正にこれに尽きる。
バスルームで温かいシャワーを浴び、部屋に戻る。
それからくまなく部屋を探索し満足したのか、ベッドに入る。
「いやぁ、想像以上だったよ。これはちょくちょくお邪魔しなきゃね」
青年が聞けば「え?神様そんなので良いの?」と聞き返していただろう。
神とは存外テキトーではた迷惑なものである。
「で、猫君。君はこの子とこっちに来て良かったのかい?」
お皿に注がれたミルクを舐めていた猫が顔を上げる。
「みゃっ。にゃ~にゃ~」
「ふむふむ、なるほどね~」
何故か意思疎通が出来ている。
神は有能なのだ。性格の方は・・・気にしたら負けである。
「もし、この子が誰かに命を狙われたら
「にゃっ!!」
「そんな奴ボクがやっつけてやる!」と意気込む猫。
その様子に苦笑いの少年神。
「ま、程々にしときなよ?この子もそうだけど、殊戦闘に掛けては君の力はこの世界において有数なものなんだからさ。安易に国滅ぼしちゃったりとかしないでよ?仕事増えて困るからさ」
最後の一言が10割本音なのは気にしてはいけない。
事実、彼にとって一番重要なのはどれだけ面白いかだ。
そこに正義や悪での線引きはない。善良な人が殺されようが、悪人が権力を振るおうが、そんな所に少年神は興味がないのである。
これは異常と思えるかもしれないが、彼にとっては至極当然のことなのだ。
「そいじゃ、僕は戻るとするよ。この子にはよろしく言っといてね?」
「にゃ~」
猫に伝言を頼むと青年の体は再び眠りについた。
部屋の中に静寂が訪れる。
「う~にゃっ!」
ベッドに登り青年をじっと見つめる猫。
ぐっすり眠る青年の顔は自分に構ってくれている時と変わらぬ優しさが見て取れた。
猫はこの何処となく頼りない青年が大好きだ。
猫には老人の飼い主がいたが、1年前にその人は亡くなった。
その老人と同居していた娘夫婦が猫の面倒を看てくれていたが、あまり好意を持たれていないのに猫は薄々勘付いていた。だから、飼い主の死を期に近所をうろつくようになった。
猫の可愛さに餌付けしようとしたり、只々愛でたりする人はいた。が、猫の渇きは誰にも潤せなかった。
徘徊を始めてから少しして猫はある青年と出会った。
その青年は少し変わっていた。
よく猫に話し掛けるのだ。餌を与えようとしたり、撫でたりしようとせず、話すだけなのだ。
猫は自分によく話し掛けてくれた老人と彼の姿が何処となく重なって見えた。
それから少しずつ猫と青年の距離は近づいて行った。
青年が丁度食べ物を持っている時はそれを少し貰い、暇な時は話を聞きながら撫でてもらう。
青年は色々な事を話してくれた。学業のこと、趣味について、将来への不安。そして猫が相槌を打つたびに「聞いてくれてありがとな」と優しく撫でてくれた。
彼の手はとても気持ち良かった。
そんな青年が急に動かなくなった。
大きな光が彼を吹き飛ばしたのだ。
必死に猫は呼び掛けたが青年はピクリとも動かない。
「誰か、助けてよ!」
猫は心から願った。
だが、そんな都合良く助けが現れる筈もなく青年の命の炎は消えた。
猫は彼を起こそうと顔を舐め続けた。
「起きて、起きて」
猫は諦めなかった。
そして突如光が彼等を覆った。
それからのことは知っての通りである。
猫は彼の魂と共に異世界へ呼び込まれ、青年は神によって再び命を得た。
猫は青年を守る強さも得た。
勿論、青年は猫を戦わせようとした訳ではない。そんな事猫自身が一番理解している。
だが、猫は決めている。
この弱くて、優しくて、大好きな青年は自分が守ると。
猫は青年を起こさない様に静かに外に出て行った。
その日、ある森の一帯から魔物の姿が忽然と消えた。
その中心地にはポツンと白い建物が建っていた。




