相棒つゑ―と青年頑張ってみる
犬と猫どっちも可愛いですよね。
うまひはどっちも好き派です。
邪道ですかね?
青年が目を開けるとそこは森だった。そう、森であった。
「え、ここ何処?」
「にゃ~」
猫に聞いたところで分かる筈もない。
青年は考える。だが、平和ボケした大学生に大した考えは浮かぶはずもない。
「とりあえず、開けたところに出ようか?」
「にゃあ」
※森や山の中で無暗に動き回るのはやめましょう。大変危険です。
1人と1匹は森の中を歩く。
正直、青年はびくびくしている。
まぁ、いきなり知らない森にいたら恐怖するのも当然ではある。
しかし、猫は全く普通に振る舞っている。
青年はその肝の太さを羨ましく思うと同時にその存在に感謝した。
(俺1人だったら絶対無理だよ、こんな所歩くなんて)
「お前のおかげで寂しくないよ、ありがとな」
「にゃ~」
どういたしましてと言っているような猫の声に青年はクスクスと笑いを零す。
少し歩くと、開けた場所に出て来た。
日の位置は高めである。
恐らく昼過ぎと言ったところか。
「というか、異世界でも太陽ってあるんだ」
大変呑気な青年。
その横では猫が寝そべって前足で顔を擦っている。完全に気を抜いている。
この1人と1匹、大変お似合いである。
そんな彼等の元に餌を求めて獣がやって来る。
「ガルルルルル」
現れたのは狼で、その毛は薄汚れ、鋭い牙の間からは涎が垂れている。
体は痩せ細っていて、その目には空腹からか狂気の色も見え隠れしている。
1匹だけで行動していることから、碌に餌に在りつけていないのだろう。
「うわっ!」
「ふしゃー!」
ビビる青年、情けないと言う事なかれ。
そんな青年の前に立ち敵を威嚇する猫。大変勇ましい。
「ガウッ!!」
狼は目の前の餌に向かって牙を剥く。
獲物はヒョロヒョロで武器も持たない男と自分より小さい猫。
恐れる要素は何処にもない。と言うより、もうこの飢えた獣には理性が残っていなかった。
「やばいって!!」
青年は逃げようとするが、相棒の猫は向かって来る狼に対して引く気配はない。
殺る気である。
「ちょっ「にゃっ!!」
猫の声とともに炎の球が3つ現れる。
「うにゃー!」
「行け!」とでも言ったのか、炎の球は一斉に狼に襲い掛かる。
「ガウ!?」
それが狼が出した最期の声だった。
三方向からの火球に焼かれ、狼はその存在を消した。
「へ?」
青年、突然の事態にフリーズ。
いきなり火球が自分の命を脅かす存在を消し去ってしまった。
そしてその原因は相棒の猫。
「お前がやったんだよな?」
「うにゃあ~」
「凄いでしょ、ほめてほめて」と擦り寄ってくる猫。
その姿に青年は少しホッとする。
だが、手放しに褒めたりはしない。
「ありがとな。確かに凄いけど無理はしないでくれよ?」
「なーう」
この青年にとって現在、この世界で唯一心を許せる存在がこの猫なのだ。
確かに猫は神の力で超常的な能力を得た。が、それでも青年にとってはこの猫の事が心配なのは変わらないのである。
猫も心配してくれているのが分かったのかちゃんと返事をしている。
ひとしきり触れ合いが終わると青年は神に言われた言葉を思い出す。
「”管理人魔法”かぁ。ちょっとやってみようかなぁ」
元々、青年は魔法と言った非現実的な力に憧れを持っていた。
彼自身勉強もスポーツもどんなに得意な物であっても精々集団において中の上程度という自分の中途半端加減に嫌気が差していた。
だからこそ期待していた。自分も変われるのではないかと。
ただ管理人魔法の名についてはちょっとアレだなと思っていた。
だが、相棒の強さを目の当たりにして神から与えられた力に期待は膨らむばかり。
「早速やってみよう!」
両手を前に突き出す。
この構え、何となくやってみたかっただけである。
とりあえず目を瞑る。これも所謂フリである。
青年はだいぶはっちゃけているようだ。
「管理人魔法!」
当然と言っては辛辣だが何も起こらなかった。
木が風に揺れる音や鳥の鳴き声らしきものが響くばかりである。
「あはは、あれ~おかしいな。えいっ!てやっ!」
更に手を前に突き出すが、何も変化はない。
数分ほど続けたが得られるものは何もなかった。
「どういうこと?なんで発動しないんだ?」
ブツブツと呟きながら、残酷な仕打ちに打ちひしがれる青年。
その横に陣取り、「気にするな」とでも言っているのか何度も鳴く猫。
「ありがとなぁ。あれ?」
いつの間にか空は雲で覆われていた。
今にも雨が降って来そうである。
「やばいって、凌げる場所・・・木の下ってのもあれだしなぁ」
あれこれ考えてはみるが、一向に考えはまとまらない。
だが、時間は待ってはくれない。
遂に雨が降り始めた。
「うわっ!急がないと!とりあえず木の陰に」
急いで木の下へ移動する。
その間に少し雨に打たれてしまった。
(早く止まないかなぁ)
ボーっと考えると腕の中から
「にゃっしゅん!」
くしゃみらしき声が聞えた。
声の主は勿論相棒である。
「え、猫がくしゃみ?そ、それよりもこのままじゃ風邪引いちゃう!」
このくしゃみ、ただ単に体内の埃や異物を出すために行なわれたのだが、その知識のない青年からしたら雨に打たれて風邪の兆候が!?に繋がってしまったのである。
馬鹿にしてはいけない。「知らない」ことは人にとって一番の脅威なのだから。
「ど、どうしよう。兎に角、屋根、屋根・・・」
青年がパニックに陥っていると突如聞き覚えのある声が響いて来た。
(お~い、落ち着きなって、少年)
「神様?」
(困ってるようだから今回だけアドバイスしよう。自分で造っといてアレだけど、君の魔法は途轍もなく異質だ。だからよく考えてくれ。自分が何を欲したのかをさ。そいじゃ、ファイト!!)
神の声が止み、辺りは雨の音一色となった。
青年は必死に考える。
(俺の欲しかったもの?)
圧倒的な武力?否
卓越した技術力?否
全てを呑み込む財力?否
絶対的な権力?否
どれも違う。
自分は大したことのない存在だ。それは自分が一番分かっている。
そんな自分にとって大事なのは
「俺とお前が帰れる場所・・・・とあと仕事」
締まらない男である。
だが、イメージは出来たようだ。
青年は木の下から出て、目を瞑り思考の海に沈む。
無防備だが、幸運なことに彼を狙うような獣は周囲にはいない。
(俺は・・・・・・・家が欲しい!!あと職も!)
腕を前に突き出し強く願う。
すると不思議と唱えるべき呪文が浮かんでくる。
青年はそれを思いと共に口にする。
「管理人魔法、家門!」
地面に幾何学的な模様が浮かび上がる。
「招来!!」
体の中から何かがごっそりと抜ける感覚の後、青年は意識を失った。
そして青年が居た場所には白い建物が悠々と座しており、雨はいつの間にか止んでいた。
家門=come on=おいでませ
招来=将来=俺の職
こじつけです。




