願いを叶えましょう、それではいってらっしゃい
もぐもぐ
拝啓、父さん、母さん。
僕は死にました。ですが、今僕はご飯を食べています。
目の前にいる少年──神様に御馳走になっています。
信じられないと思うけど、事実です。
勝手に死んじゃってごめんなさい。育て貰った恩は決して忘れません。
ですので、どうかお元気で。
七海へ
どうしようもない兄貴で申し訳ない。
兄ちゃんから言う事は2つ。
公務員目指すならちゃんと目標を決めて勉強すること。
素敵な男性と結ばれて家族皆で仲良く過ごすこと。
それじゃあ頑張ってね。
「これでお願いします」
「りょうか~い。それにしても書くことも平凡だねぇ。こんなんじゃご家族を泣かすことも笑わせることも出来ないよ」
グサッ!!
青年の心に辛辣な言葉が突き刺さる。
自分でも微妙に感じてはいたが人に言われるとそのダメージは大きい。
今も泣きそうなのを必死に堪えている。
青年は打たれ弱いのだ。
「そいじゃ、送るね~そ・う・し・ん!はい、OK!これであと2つだよ」
手紙が消える。
無事家族の元へ送られたのだろう。
あの手紙を信じる信じないは残された家族次第だが、とりあえず青年は後ろめたさを払拭できたようである。
「はい、ありがとうございます」
そして2人は食べながらの雑談に戻る。
その青年の足元では猫がミルクを舐めている。
「で、あと2つはどうするんだい?武力チート?生産チート?何でも良いよ?」
「え、えっと」
青年が聞かれているのは願いについて。
彼はこれから異世界へと送られる。
送られる世界はファンタジーな所らしい。
魔法有り、魔物在りと中々危険もあると言う。また国同士の争いもあるようで中々香ばしい匂いがする世界と言う事だ
そんな所にひょろひょろの男子学生が行った所で一月も持たないだろうという神様のご厚意で3つまで願いを叶えることとなった。
その貴重な1つを彼は残された家族への連絡に使った。
なのにあの文字数なのは彼の駄目さ加減が窺える。
「じ、じゃあ、コイツを強くしてやってください」
そう言って彼が視線を向けたのは1匹の猫。
猫本人(?)は「何?」と言った顔をしている。
青年と猫、この一人と一匹が異世界に行くのは決定事項である。
元々、彼等は異世界にある国の一つが異世界人召喚を行ったことで召喚されかけたのだが、この神様がそれに介入して青年と猫をこの場所に連れ込んだのである。
しかし、異世界に行くことはもう止められない。
「だったらチートをあげようじゃないか!」と何故か神様はノリノリなのである。
「は?・・・・・・本気かい?」
流石の神様も予想外だったらしい。
聞き返すが青年の意思は変わらない。
「はい、コイツ小さいし、力もないから。だから、可能な限りでコイツが自衛できるよう強くしてやってもらえませんか?」
「分かったよ。そいじゃあ、猫さんいきますよ~」
ショタの指先から光の球体が抜け出し、それが猫に吸い込まれる。
「んにゃ~」
猫は気持ち良さそうである。
光が完全に収まると、猫はこれまでより毛並みが美しくなっていた。
それ以外に変わった点は見られない。
「ほい。これでOKだよ?で、最後の1つはどうするんだい?(≧▽≦)」
神、凄く楽しそうである。
「うーん、家が欲しいなぁ。でも、仕事してお金を稼がないと。でも、俺の力なんて高が知れてるしなぁ」
うんうん悩む青年。一応服は用意してもらったものを着ているのでもうすっぽんぽんではない。
そして就活生は職や家について真剣に悩んでいる。異世界なのに。
ここで武力チートをもらってハーレムを!と考えない辺り、彼はおっとりしている。
「なるほどね~。家が欲しい、でもお金を稼ぐことも大事。・・・・・・あ、良い事思いついちゃった!」
性悪神様、何かを思いついたようである。
「少年君、君の願望にピッタリのスキルを考えたからそれをあげるよ」
少年に少年と呼ばれる青年。ややこしい。
神はそう言って手の平から透明な泡を出す。泡は青年の方に向かってふわふわ漂い、彼の胸に収まる。
「うん、これで良い筈だよ?」
「えっと、スキルの内容については」
「うん、それはね?《管理人魔法》さ!」
どや顔で言われても青年には何のことやら分からない。
只々困惑するばかりである。
「いや、家が欲しいけどお金も欲しいって事だったからさ。そいでさ、その魔法は実際に使って見てその力が分かると思うから、僕からはノーコメントね?」
少年神はいたずらっ子宛らの笑みを浮かべる。
当然、説明をしないのはワザとである。単純にその方が面白そうだから。
まぁ、面倒臭いからという理由もなくはないが。
「はぁ」
それを普通に受け入れようとしている青年も大概である。
「あと、その魔法、魔力を結構消費するから、魔力量増加も付加しといたからね?これはサービスさ」
「あ、ありがとうございます」
思考は追い付いていないが気を遣ってもらったと言う事は理解できるので青年は頭を下げる。
如何にも日本人らしい。
「そいじゃあ、そろそろ時間かな?」
少年神が言うや否や青年の足元に奇怪な図形が浮かび上がり青い光を放ち始める。
突然の事に青年は頭が追い付いていない。兎に角「え?え?」と繰り返している。
その右手にはフライドチキンがしっかり握られている。食い意地は嘘を付けないようだ。
猫が青年の肩に飛び乗ると、彼も少し落ち着いたようである。
お礼にフライドチキンをあげると猫ははむはむと食べていた。
「意外と大物だね、君達」
流石の神も呆れ顔である。
だが、小さな呟きは青年たちには届かなかった。
その本人たちは時間もないことは理解できたのでもう一度お礼の言葉を述べる。
「あ、あの!ありがとうございました!」
「にゃ~お」
「ふふふ、こちらこそお礼を言いたいぐらいだよ。2人でしっかりやるんだよ?」
「はい!」
「んにゃ」
そして1人と1匹は消えた。
異世界へと旅立ったのである。
「いやぁ、あの子はあの子で新しいタイプだったなぁ」
神は新しい玩具を見つけられて楽しそうである。
「頑張り給えよ、少年。異質な力って言うのは得てして騒動を呼び込むからね。・・・・・・あっ、何処に飛ばされるのか言うの忘れた。ま、いっか」
そう呟くと何処からかポテチを取り出し、ぱりぽりと食べるのであった。
テキトーな神は今日もだらけるばかりである。
「仕事メンドクセー」




