契約はしっかりと
短いですが、どうじょ(/・ω・)/
「対価とは言いますが、そんな大それたものはいりません。契約する方々がそれぞれこなせることをやってもらえれば構わないのです」
カンリの説明をサリーは真剣に聴いている。
時折視線をやるその先には彼女の命よりも大事な子どもたち。
握りしめた拳には自然と力が入る。
「その対価とはどのようなことを」
母の声は震えていた。
久々の子どもたちとの温かい食事という団らんを味わった後に要求される対価。
魔物や下卑た男どもの視線とは質の違う恐怖が彼女を囲い込もうとする。
「そうですね、貴女方なら、この建物内の清掃と言った所ですかね」
「え?」
子どもの為ならどんなことだってやってみせると悲痛な決意をしたサリーの耳にまさかの答えが返って来た。
「そんなことで、良いんですか?」
「逆にお聞きしますが、貴女方に魔物を狩れますか?無理でしょう。先程も言ったように「お供え」とはその者のできる範囲のことでやってもらえれば構いません。力のある者ならば、魔物を狩ってそれを対価に、お金を持っている者ならばそのお金を対価に、とそれぞれに合ったやり方で払う代価、それがここに入居する際に必要な「お供え」なのです。分かりましたか?」
「は、はい」
「カンリ質問いいか?そのお供えってつまり家賃?」
「大筋ではその考えで問題ないです。因みに家賃と違うところは入居者の状態でお供えの質量が変動する点ですね」
「お供えの量が変動?その時によって変わるってことか?」
「はい、極端な例になりますが、対価をお金としてここに入居した人物が恣意的な理由ではなく正当な理由でお金を払えない状況に陥ったとします。その場合、お供え内容の変更かお供え量の一時的緩和を行うことが出来ます」
「なんとなくは分かる気がする」
ウンウン唸りながら青年は天井を見つめる。
本当に理解できているかはとても怪しい。
「サリー様は如何でしょう」
説明魔神カンリは尋ねる。
お前は分かるよなぁ?と脅している様に見えなくもない。
「あっ、はい。つまり、そのおそなえは私や子どもたちがしっかりとできることを選べば問題はないということですね?」
「理解はできているようですね、良かったです」
暗に理解不十分な主を責めるカンリ。
アハハハと渇いた笑いで誤魔化そうとする青年は幾分か居心地が悪そうであった。
「それで他に質問はございますか?」
「はい、その、気になったのですが、おそなえというのはサブリナやミルコもしなければならないのでしょうか?」
「その質問への答えは是です。赤子や意識のない者を除き原則としてお供えは絶対となります」
「そうですか、分かりました」
カンリの返答を受けて思考の海に沈むサリー。
青年はそんな二児の母を慮ってお茶を淹れようと台所に立った。
熱いお茶を淹れて戻ると、彼女は既に書き終えていた。
それをカンリがチェックしている。
「・・・・はい、問題はなさそうですね。マスター、最終確認を」
あくまでも青年を立てることを忘れないカンリ。
これにより青年こそがこの場における序列の頂点であることをサリーに示しているのだ。
やはり優秀なサポート役である。
「えっ、まぁ、しょうがないか」
責任や重圧、それに緊張と言うものをを極端に避ける傾向にある青年としては進んではやりたくないが、自分が主である以上仕方がないと諦めの境地から承諾する。
実に消極的である。
一通り確認し終えると青年はサポート役の小さな女の子に尋ねる。
「うん、多分大丈夫だと思う。カンリあとはどうしたらいいのかな?」
「はい、この許可印という空欄に指を置いてください。指に指定はないのでお好きにどうぞ」
言われた通りに右手の親指をおく青年。
すると指の腹から血の様な物が流れて行く感覚に見舞われる。
驚いて指を離すと指を置いていた場所にはよくわからない模様が浮かんでいた。
「これで契約が成立しました。この書類ですが一部は私、一部はマスター、一部はサリー様が保管することになります」
そのカンリの言葉と共に一枚だった筈の契約書が何時の間にか三枚に増えている。
「すげー」
紙をひらひらさせながら観察する青年。
マジックのタネを探すような気持ちからだったのだろう。
あまりにも童心が過ぎる気がしないでもない。
「住人を確保しましたので、機能の向上、新たな機能が追加されました。それではマスター、戻りますよ?」
「それは良かった・・・って、え?」
「さあさあ参りましょう」とカンリにせっつかれ部屋を後にする青年。その胸の内には眠りから覚めつつあるネム助と未だ目を覚ます気配のない軍鶏助が抱かれていた。
サリーはそれをボーっと見つめることしか出来なかった。
その後、彼女の前にカンリの分身体が現れ大いに彼女を驚かせることになるのだがそれはすこーし先の話。
まったり亀さんですがお許しを_(:3」∠)_




