おいでませ
皆さん、ノロさんにはお気を付けを(ヽ''ω`)
それでは、どうじょ(/・ω・)/
「到着っと」
青年たち一行は無事に転移した。
青年からすると慣れたものだが、サリーからするとそうはいかない。
「・・・?!」
二児の母は言葉に出来ず、左右を見回す。
転移の魔法はとても希少で一回の人生で目にすることなどほぼほぼありえない、それこそお伽噺のような存在である。
混乱する彼女に気付いた青年がフォローに入る。
「サリーさん驚かせてすみません。ここが僕たちの家です」
申し訳なさそうに頭を掻く青年。
確かに一歩違えれば人攫い案件である。
「いっ、いえ、大丈夫です」
そうは言うものの明らかに落ち着かない彼女にどうしたものかと悩む青年。
すると、
「おい、ここはどこだ!わたしたちをどうするきだ!」
そう叫んで青年を睨み付ける少女がいた。そう、サブリナである。
自分たち家族を買った男。そして何処か分からぬ場所に連れ込まれた。
思いっ切り敵認定である。
「あ、えーっと、サブリナちゃん。ここはね、僕や君たちが暮らす建物の中でね「うそだ!さっきまで街にいたんだ!」
グルルと敵を見る目をやめない少女。
青年は困ったなと愛想笑いしながら冷や汗をかいていると黒須家の長男と次男が動いた。
「んにゃ」
「ぴぃぴぃ!」
少女の前まで歩いて行くと何かを訴える。
人間の少女に他の動物の言葉は分からない。だが、彼らが何を訴えているのか敏い少女は分かった。
『この人は悪い人じゃないよ』
そう言って少女に体を擦り付ける。
野良や野生を経験している2匹にはなんとなくこの少女の気持ちが理解できたのだろう。
少女は少し困っていたが、おずおずと2匹に手を伸ばし慣れない様子で撫で始めた。
「にゃ~」
「ぴぃ~」
ご満悦の兄弟であった。
サブリナも落ち着いたので青年は3人を2階の一室へ案内した。
短い移動の間、ネム助はミルコの傍におり、軍鶏助はサブリナの手の上に収まっていた。
幼い少年少女を気遣ったのだろうか。
少なくともうつらうつらしている軍鶏助の真意は読めたものではない。
ミルコは姉に比べて大人しい質のようで騒ぐようなことはなかった。
ネム助もそんな彼を少なからず気に入った様でもあった。
「ここですね」
青年が鍵を回しガチャリと扉を開く。
土足のまま上がろうとする3人に靴を脱ぐよう説明し、今度は室内の戸を開ける。
『うわあああ』
その歓声の主たちはドタドタと部屋に入ると目を輝かせてあちこちを見回す。
彼らの声で軍鶏助はどうやら目が覚めたようであった。
「ぴぃ・・・ぴぃ?ぴぃぴぃ!」
酷く何かを主張している。
サブリナも困っている。
「あ~、もしかしてお腹空いた?」
「ぴぃ!」
飼い主の質問に「その通り!」と腹ペコ鳥はご飯を要求する。
なぜ言葉が通じるのだろうとは考えもせず青年は「それじゃあ飯を作るか」と腕まくりをしながら台所へ向かう。
「今からだと時間掛かるし簡単な物だけだぞ?」
「ぴぃ~」
「にゃっ」
食いしん坊たちからOKサインが出たので青年は先ず冷蔵庫から肉を取り出す。
スーパーで売られているようなパッケージでラベルには牛切り身(それなりに高級)と書かれていた。
因みにこれはビッグホーンブルという魔物の肉で、平民なら一生に一度食べられるかどうかと言うほどの高級食材である。当然青年はそのようなことを知らない。
続いて野菜を切り始める。皮むきをした玉ねぎ、人参そしてチンゲン菜をある程度大きさを揃えながら素早く切っていく。これらも又魔物から獲れたものなのだが、当然以下略。
それぞれを違うボウルに移し、今度はフライパンを熱し始める。
一段落した所で青年は親子の視線に気が付いた。
「あ、ごめんなさい。サリーさん達の部屋なのに、いつもの癖でつい」
「だ、大丈夫です。それにしても手慣れてらっしゃいますね?」
「ええ、まぁ、悲しい独り暮らしの功名ってやつです」
「? あっ、何か手伝います!」
青年の言い回しが理解できなかったものの、すぐさま二児の母サリーは食の戦場へ突入して来た。
流石である。
「な、なにつくってるの?」
おどおどと今度はミルコが聞いて来た。
青年はなるべく怖がらせないようにしゃがみ込み目線を合わせてから優しく話しかける。
「牛肉と野菜を炒めたものを作ってるんだよ?ミルコくんはお野菜食べられる?」
「う、うん」
「そっかあ、偉いねぇ」
よしよしと撫でていると食欲魔神たちが「まだか」「早くしろ」とせっついて来た。
分かった、分かったから、と青年は再び調理に戻る。
と言ってももうそれほどやることは残っていない。
肉野菜炒めは既にサリーが着手し始めている。
何も言っていないのに流石は二児の母である。
青年はチンするお米をレンジにいれ温める。
そしてヤカンに水を入れ熱し始めると戸棚から出すはレトルト味噌汁の素。
これもまた資材置き場に入れられた素材から出来上がったものである。
それらを器に注ぐとサリーから質問が飛んで来た。
「あの、調味料の類は!」
「あ、それは、これっ!」
青年はすぐさま塩胡椒の入ったビンを渡す。
その際に蓋は開けておく。
ふと見ると肉と野菜の焼ける匂いに子どもたちは待ち切れないといった感じである。
(カンリ、あの子たちお願い)
(かしこまりました)
子どもたちを姉御に任せ青年は食事の準備に戻るのであった。
◇◇◇
「初めまして」
突如サブリナとミルコに声が掛かった。
声がした方へ2人が顔を向けるとそこには小さな人が浮かんでいた。
「分かりますね?私はカンリと申します。以降お見知りおきを」
幼い子どもに通じるかはさておき丁寧にカンリは挨拶する。
「さて、2人とも食べる前にすることとは一体何でしょう?」
突然の質問。
だが、敏い2人は即答する。
『てをあらう』
「そうです、それでは手洗いの場所までお連れします」
そして1匹(?)と2人は洗面所に行く。
その後、カンリという小人が食事を今か今かと待つ猫と小鳥を無理矢理洗面所に連れ込むのを不思議そうに姉弟は眺めていた。
青年とサリーが作った即席の食事はあっという間になくなった。
満足した2人と2匹はあっという間に眠りについてしまった。
「マスター、そろそろ契約の方を」
「あ、そうだね」
カンリに言われいそいそと青年は準備する。
布巾でテーブルを軽く拭いてから手をかざす。
「出でよ、契約書」
すると一枚の紙が机上に現れる。
その紙の上部には太字で【入許契約書】と書かれていた。
「入許って、入居じゃないのか、普通?」
「この場合、マスターに決定の全権がありますので間違いという訳でもないかと」
一々フォローを忘れないカンリは出来た長女である。
青年はそうなのか?と完全には疑問を払拭できてはいないが。
「では、サリー様に記入できるところはしていただきましょう」
「ん、そだね。サリーさんお願いします」
そう言ってペンと紙を差し出す。
「え、でも、私、字なんか読めませんし、書け・・・・あれ?」
識字率がさして高くないこの世界で例に漏れずサリーも字の読み書きができない部類の人間だった。
しかし、何故か渡された紙に書かれた字が読める、いや分かると言った方がいいか。
書かれている字は彼女の人生で一度も見て来た事がないものだ。
しかし、その文字がどのような意味なのか見ていると自然と彼女の頭に浮かぶのだ。
「多種多様な契約者に対応するためのサポートですので、字の読み書きが出来なくても大丈夫なようになっています。ご安心を」
それはそれでかなり凄いことなのでは、と考える青年だったが、話が逸れるのもあれかと思い胸の内にそっとしまう。
サリーの方も戸惑いながらではあるが、ペンを手に取り文字を書き始める。
その持ち方は読み書きができない者とは思えない程に美しく品があった。
少ししてサリーの筆がピタリと止まった。
「あの、この「おそなえ」と言うのはなんなのでしょうか?」
はて、と青年も首をかしげる。
(それって仏壇とかお墓に添えるやつだっけ?)
そんな青年を出来る女カンリはやれやれと言った様子で見つめる。
「マスターには遂数日前に説明したのですが、はぁ。簡単に言えばサリーさん、貴女方がこちらに住むにあたって払う対価のことです」
物理的に小さい女の子に呆れの溜息をつかれ青年は苦笑いを、そして対価と聞いたサリーは何処か緩んでいた気持ちが一気に引き締まるのを感じた。
ちょっとぶつ切りです。
伸びるのもあれかと思いここら辺で切らせていただきました。




