メイという存在
命運分けるその刹那、ロキが目に、耳にしたものは想像しえない少女の覚醒だった。
度重なるダメージに朦朧としていた意識を突如襲ったのは強烈な眠気で、全身の痛みが嘘のようにロキは眠りに落ちた。
「!?」
時間にして数秒程度。しかし目を開けた時には既にジョーリアからの拘束から逃れ、地面に転がっていた。
意識を失っていたのか、と早急に状況を把握しようとするがどうにも頭が回らない。
「(まさか…)」
沈んでいく意識の中でなんとか視線を上げるとメイの両腕が青黒色の羽毛に包まれていた。
あまりに想定外の恐竜化。
涙を流す少女の声によって二人は一瞬で眠らされたのだ。目覚めたことで激痛もまた目を覚まし肉体に激痛が走っていたが、ロキは震える腕でどうにか立ち上がろうとしている。
状況が一転したのは一目瞭然だった。だが意識が追いつかない。瞼が鉛のように重たく、時間の流れが低速化したような感覚が混乱を引き起こしている。
なんとか支えていた力も尽き、唯一できたことはうつ伏せからあおむけになることくらいだった。
『メイは任せた』
アルーゼに任されて、この様はなんだ。
意識が沈んでいく中でロキは自身の無力さに拳を握った。
そして
「ッ!」
肉体を、意識を、覚悟を呼び覚ますためにモナから受けた刺し傷に拳を振り落とした。
激痛に膨れる不快感が眠気を貫き、乾いた血染みに鮮血が塗り重なる。十分すぎる痛みを耐えて立ち上がったロキだったが、変わり果てたメイの姿に目つきが変わった。
青黒色の羽毛、それは最初両腕のみを包んでいた。それが今は全身を包みこんでいる。羽一枚一枚が間をかき分けて外へ外へと、その見た目は球体へと近づいていた。
◯メイ・ロング
体長約50センチメートル 白亜紀前期中国生息
意味「安らかに眠る」
「メイ!」
恐竜化の暴走だとひと目見て理解した。
幼少期、まだ恐竜化に慣れていない時に暴走してしまうケースはよくある。それによって自分を傷つけてしまう場合もある。
気絶させることで強制的に解除することもできるが、出来るだけ自然に解除されなければ暴走を繰り返したり恐竜化自体出来なくなる場合もあるため、ロキは慎重に手を伸ばした。
「俺の声が聞こえるか」
羽に触れても反撃はなかった。しかし反応もない。
あらゆる恐怖やストレスを遮断するように覆い被さる大量の羽。それを壊さないようにロキは慎重にメイの手足を伸ばしその場に寝かした。
かろうじて顔は羽に包まれておらず人を維持していたが、それ以外は一応人の形をした鳥そのものだった。
今のところ強烈な眠気はない。つまり睡眠効果は羽によって齎されたものではない。メイが叫んだと同時に意識を失ったことから、すなわち能力は「声」による強烈な睡魔の誘発。即効性と持続性が高いが激痛など睡眠を阻害する要素があれば目が覚めてしまう。
「……ぅ」
暴走による肉体への負荷や二度目の効果発動の可能性は発動者であるメイが自身の声によって睡眠状態にあったため杞憂に終わった。
呼吸、脈拍、体温は正常。もしこの状況で暴走負荷による発作等が起きればそれこそ対処に限界があるため、能力がメイにも作用したのは幸いだった。
問題は
「zzz!!」
容赦なく爆睡しているジョーリアをどうするか。
メイの覚醒、メイが危険を冒したことで間違いなく救われた。救われてしまった。みんなを裏切りかけた。
複雑な感情が渦を巻き、言葉にならない敗北感が吐き気とともに込み上げる。血を流しすぎた。刺し傷も開き、発熱と倦怠感で今にも倒れそうだった。
このコンディションでジョーリアが目を覚ませば間違いなく終わる。無論、メイによってひっくり返った状況を無駄にするわけはいかない。
「zzz!」
豪快に眠っているジョーリアの足にはグラントールが貫通している。引き抜けば起きる可能性は大いにあるがそれと同時に急所に突き立ててしまえばいい。それで終わりだ。
メイが何に恐怖を抱いているのか理解しているロキだったが、既にその思考は血に染まっていた。度重なるダメージと疲労、出血多量によって冷静な思考能力が低下し、一方向の固定化された殺意だけが行動力へと働いてしまっている。
「……」
騎士の剣は命を斬る。医者の手は命を救う。善悪のバランスを厳正に保つことで維持しているこの矛盾をロキは戒律のように背負っていた。しかしかそれは己を律するため、というよりも見失わないためという方が正しい。
悪に対し騎士として正義を執行するか医者として善を遂行するか。
冷静沈着、時に冷酷と言われながらもラプトル騎士団団長として信頼されている雷刃ロキ。しかし彼は過去の体験によって命と善悪の価値観が壊れている。
故にその価値に対して矛盾を抱え思考し続けることで精神が自壊しないよう、狂気に呑まれないように生きていた。
「……すまない」
ロキはゆっくりと柄へ手を伸ばした。
「……」
だが手が止まる。
踏みとどまった、ではない。 来た。
どこまで頼り続けるのか、助けられるのかと笑われるだろうが瞬間的に安堵してしまった。
今はそれほどに弱い。
今はもう誰かの助けなしではどうにもならない。
「……俺は、未熟すぎる」
「にじゅうう!!よにんめぇ!!!」
絶望が澱んだ空間を爽快かつ豪快にぶち壊すように降ってきた黄金の闘志。
相手が戦士ならば躊躇も慈悲も容赦もない。偵察として別行動していたアルーゼは爆睡しているジョーリアの顔面に拳を叩き込んだ。
「ひゃぶっ!!」
どこでも狙えるからこその顔面一択。
戦士への嫌悪感が十二分に発揮されたことで当然ジョーリアは戦闘不能になり、アルーゼはパンパンと満足げに手を叩き払った。
「はーい余裕!どいつもこいつも弱ぇ戦士だなぁおい!ビリビリ悪りぃな!トドメはいただいた…ぜ…」
振り向いた直後、アルーゼの元に限界を迎えたロキが倒れ込んできた。
あまりに突然のことで反射的に支えたはいいものの、アルーゼは状況を理解できずに目を見開いている。
「は!? おいビリビリお前!なにしてんだよ!」
男性からのスキンシップに全く慣れていないアルーゼはてっきりロキから抱きしめられたのかと露骨にワナワナと動揺している。
だがそれも一瞬のこと。やけに冷たい体と生温かい感触にアルーゼは手の平を見て絶句した。
「ロキ!!」
意識はない。呼吸も浅い。
心臓が絞られるような焦燥感に駆られ、アルーゼの心境は一転した。
だがそれだけにはとどまらない。
目線の先、こんもりと山型になったナニカ。その正体に何故か直感的に嫌な想像をした。
「メイ!いるか!」
もちろん返事はない。返ってくるのは僅かな風の音だけで、そのナニカに対する嫌な予感が増幅するだけだった。
近づけばそれが羽が集まったものだと分かる。分かるが、
「…メイ、なのか」
なぜこうなったのか、ロキが付いていながらなぜこのような姿になっているのか。
負の感情が絡み合い今にも声を上げたかったが、周囲にまだ戦士がいるかもしれない現状に唇を噛みどうにか堪えた。
メイに出血は見られない。呼吸と脈もある。
問題はロキだ。刺し傷からの出血と生新しい多くの痣。体温の低下とともに体にはほとんど力が入っていない。
「…やっぱりお前」
グラントールは鞘から抜かれ、ジョーリアの足に突き刺さっている。グラントールが既に雷の水晶を使い果たしただの鉄剣になっていることをアルーゼは知っている。
そして本人はズタボロでメイは無傷。戦士は一人だが、今までの戦闘でロキに対してアルーゼには引っかかっていることがあった。
戦闘のスペシャリストであり、その差はあるものの確かな実力を持った戦士。竜脚類は破壊力とタフネスを誇る油断できない能力だが自身も恐竜化していれば、ましてロキほどの戦闘センスならば雷の水晶が尽きていても応戦できたはず。
しかし砂浜での対戦士、先ほどの対ベルーサ、その全てでロキは恐竜化していない。雷晶の剣グラントールは恐竜化した戦士を倒せる威力を持つが、だからと言ってあえて恐竜化しないとはならないだろう。
アルーゼの出した結論は一つだった。
「恐竜化、できねぇんだろ」
恐竜界において恐竜化できない人間は存在する。しかしそれは少数で、さらに「能力を持っているが発動できない」と「能力を持っていない」に二分され、後者はより少数だ。
「お前案外無茶するやつなんだな」
これほどのダメージを負ってもメイが無事だどいうことに、最初はなんだこいつと思っていたアルーゼもロキへの信頼は厚くなっている。
恐竜化できないことを公言しなかったのは何かしら理由があるのだろうとアルーゼは特に気にしていない。
今はするべきことがある。
アルーゼはロキの団服を脱がし、上半身の傷の具合を確認した。
「おぉ…結構緊急事態だな」
冷静な口調なものの内心、アルーゼは焦っていた。
この後の状態によってはエースケ救出、竜滅会幹部を捕えることなど色々支障がでる。
つまりロキを何がなんでも復活させなければならない。
「母さん譲りの荒治療だぜ。医者だからってダメ出しすんなよ」
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一方、アルーゼがロキとメイを介抱する最中、エースケもとある男を介抱していた。
Dr.シノルの研究所地下牢に閉じ込められ、そこで出会った盲目の男。衰弱し、酷い扱いを受けていた彼をエースケが庇い、二人は牢屋に立てこもっている。
「…やっぱ出るべきか?」
エースケの努力あって錠は外され、一人の戦士を無力化、一応いつでも出られるのだが今は待機している。
しかしじっとしていることが耐えられなくなってきた。
「ちょっとでも戦士の数減らしといた方がいいかな。大人しくしといたほうがいいかな。あー!どうすりゃいい!」
側には目の見えない男がいる。彼を放ってどこかに行くわけにもいかない。
「きみは…」
男がそっと顔を上げる。
「早く逃げなさい。…私はもう」
「いやいや、さすがに置いてくなんてしませんよ。おじさんには生きてもらわなきゃ」
エースケにはこの盲人に心当たりがあった。もちろん過去に会っているとかではない。
似ているのだ。
「あの、突然なんですけど、おじさんはメイって女の子を知ってますか」
印象的な青黒髪を見て、エースケには心当たりがあった。
メイと聞いた瞬間に男は固まり、その反応にどこか核心をついたような、エースケの中で何かが動き出した感覚があった。
「やっぱり知って…」
「…なぜメイのことを」
男が重い口を開こうとしたその時、廊下から足音が響いた。
反射的に振り向き、その足音に耳を澄ます。
おそらく一人。声を大に話しすぎたか、戦士が戻らないことを不審に思ったか。
まぁ理由がなんであれぶちのめすのみ。
たとえそれがベルーサ、
「目を覚まされましたか、転移者」
だったとしても…。
「げっ、ベルーサ…」
「これはこれは。名前、覚えてくださって光栄です。わたしも、エースケと呼んだ方がよいでしょうか」
「転移者でいいよ。お前らと馴れ合うつもりはねぇ」
ベルーサは鎖で縛られた戦士を横目にざっと牢屋内の状況を把握した。
倒れている戦士は大したことのない弱者だったが、倒されたからには常人に比べてエースケはそれなりの実力を持っているということになる。
ベルーサのエースケを見る目が変わった。
「彼が粗相を働いたようですね」
「くっそ痛ぇ粗相をしやがったよ。まじでなんでも暴力でどうにかなるって思ってるんだな。戦士がより嫌いになったぜ」
立ち上がったエースケは男を隠すように鉄格子にせまった。
「あんたもこいつと同じか?」
エースケが出会ってきた戦士に善人と呼べる者は誰一人いなかった。力でねじ伏せ支配する。ゼアル筆頭にそういった考えが染み付いた野蛮人。
しかしベルーサはどこか戦士とは違う、会話ができるような感覚があった。
「同じかと言われれば同じでしょう。ただ、わたしは彼と違って暴力による支配に興味はありません。利己的な暴力ほど愚かなものはありませんから」
「じゃあなんでこの人が暴力を振るわれてるのを無視してんだ」
「暴力を振るわないのと暴力に興味がないのは同義ではないでしょう?彼が傷つくことを止める理由がわたしにはありません」
「…やっぱりあんたも戦士だな」
「あなたこそ、彼がどのような人物か理解して正義を振り翳しているのですか。暴力を悪として彼を擁護するのなら、きちんと真実を知っておくべきでしょう?」
エースケはこの盲人の正体を知らないが、予想はついていた。
青黒髪に同じ盲目。男の姿を見てメイを思い出さずにはいられなかった。
「名をロン。この島を滅ぼした元凶です」
淡々と出た真実はエースケの思考にとどまることなく抜けていった。
この衰弱しきった男が島崩壊の元凶。にわかに信じがたい事実に一度振り向く。見るからに戦士ではない。その見た目からは崩壊を招くほどの脅威を感じない。
当然、信じることができない。
「真実を知らない人間が善意をもって立ち上がるなど万人ができることではありません。しかしその善意が真実を知った時、転移者、あなたは自身の信念を曲げずに立ち続けることができますか」
「…鵜呑みにしてくらうほどこっちも馬鹿じゃねぇよ。それに、たとえこの人が悪人でも暴力を許す理由にはならねぇ」
崩壊の元凶。これが何を指すのか分からないが、今の言葉はエースケの本心だった。
恐竜界に転移してから彼女に影響され無意識に「アルーゼなら」と考えているため、エースケの思考・発言・行動はアルーゼの感情や信念に準じていた。
「…たとえ彼が大量殺人者でもですか」
ベルーサは試すような目でエースケを見ていた。
崩壊の元凶が大量殺人者。
エースケの中で最悪のシナリオが描かれた。
「どういうことだ」
「言葉通りですよ。我々は大量殺人者である彼を追ってこの島に来た。彼は今、罰を受けているのです」
骨が浮き出るほどの飢えと乾きの中、鎖で縛られ暴力に晒される。
これが罰とはどれほどの罪を犯したのか。
「これは竜滅会の報復ですよ」
恐竜界に潜む闇の存在は着実にエースケの前へ姿を表し始めた。
大量殺人者と狂人組織。報復するされるの彼ら関係性にエースケは踏み込んでしまった。島に転移した時点でもはや必然的とも言えるが、しかし今更放っておくわけにもいかない。
「報復なら罰とは言わねぇ。これは筋違いのリンチだ。裁きたいなら、正しい法律で裁くべきだろ」
「裁く意思は罰を与える者たちで十分。善性の正義を振り翳しておいて、裁くことを他人に任せるのは無責任というものでしょう」
「そんなの私刑を正当化しただけの憂さ晴らしだ」
「彼は我々竜滅会のメンバー四十三名を殺害した罪があります。多くの仲間を殺されて罰を与えるななど無理な話でしょう」
瞬間、エースケの心が揺らいだ。元いた世界で四十三名もの命を奪った殺人犯が逮捕されれば、どんな裁きが降るかは明白。それはあまりに想定外の数字だった。
「鎖を外したことが果たして本当に正しいことなのか、もう一度お考えになられてはどうでしょうか」
「……」
エースケの返答はなく、ベルーサは「では」と一言、その場から立ち去った。
事実を知り、手のひら返しで脱走するならそれはそれで面白い。ベルーサはエースケへの興味に微笑んでいた。
「…あなたの器。見定めさせていただきますよ」
ベルーサが立ち去り、エースケには不安だけが残った。
大量殺人者ロン。衰弱状態に加えて目が見えていないためか逃げ出したいほどの恐怖はない。
だが間違いなく心境の変化はあった。
「……今の話は」
冷たい石壁にもたれたまま、ロンは動く気配どころか生きているのかさえ分からないほど弱っている。
よぎるのはメイとの関係性だった。
もしもロンがメイと近しい関係、まして家族だとしたら。この事実をメイは知っているのか。
それを踏まえてエースケはロンに問うた。
「大量殺人者ってのは本当なんですか」
ロンにはベルーサの声もエースケの声も届いてた。島崩壊の元凶やエースケの質問の意味も理解している。
ロンは張り詰めた空気の中ゆっくりと顔を上げ
「……本当だ」
あっさりと認めた。
ベルーサの妄言だと片隅に思っていたことが馬鹿馬鹿しくなるほどに、誤魔化すでも嘘をつくでもなくあっさりと認められてしまった。
エースケに驚きはない。あるのは落胆だ。
「…だが、これ以上君に話すことはない」
衰弱していたロンだがその言葉には力強さがあった。彼はこれから何を聞こうと決して話さない、そう直感したが、エースケにはロンに対する切り札があった。
「メイはそれを知っているんですか」
さっきの反応からしてロンはメイを知っている。
案の定ロンは食いついた。
「君がなぜメイを知っているんだ」
「俺はさっきまで彼女と一緒にいました。事情も、なんとなくは察しています」
エースケがメイについて分かっていることは「目が見えない・お父さんを大切に想っている・Dr.に強いトラウマがある」の三つ。
しかしそれらの詳細は本人から聞けていない。
一体この島で何があったのか。なぜロンが元凶と言われたのか。巻き込まれたとはいえ、一面に触れたのなら今更目を逸らす気はない。
「…無事、なのか」
「俺よりずっと頼りになるやつが二人もついてます。身の安全なら心配いらないです」
「…そうか」
大量殺人者については重い緊張感があったのに対し、メイのことになるとロンは脱力した様子で反応する。それが人間的というか、エースケはまだロンの事実を受け止められないでいた。
「メイは事あるごとにお父さんって言っていました。…俺はメイを救ってあげたい。…だから、俺は、あなたを救います」
「私を救うことが、メイを救う…か。理由が噛み合っていないように聞こえるが」
ロンの言う通り確かに噛み合っていない。メイを救うことがロンを救うことに繋がるなんて、エースケもかなり飛躍していると自覚していた。
しかしそれでもロンの反応や言動がメイと無関係とは思えない。所詮直感だがエースケは口を開いた。
「…メイのお父さんはあなたですよね、ロンさん」
そうでないならそれはそれ。だが知っておきたい事実はある。
転移者、大量殺人者。互いの詳細を知らず、どこまで信じていいものかも不明。全容が見えきっていない現状を暴いていくには情報を開示していくことが必要なとこはロンも理解している。
話すことはない。確かにそう言ったが、やはりロンにとってメイの存在は大きかった。
「……あぁ。その通りだ」
囚われていたメイの父親、ロン。彼の生存をメイは知らない。そして同じく囚われているエースケはベルーサを筆頭に、竜滅会の実力者を打破できるほどの力をまだ有していない。
時を同じくしてロキは度重なるダメージに、メイは能力暴走によって倒れ、アルーゼも動けない状況にある。
「…おや、雨ですか」
エースケとの会話を終えたベルーサは手に落ちた雨粒と島を覆う曇天に呟いた。
エースケ陣営と竜滅会陣営。ぽつぽつと振り始めたこの雨が両陣営の勝敗に大きく関わることを、まだ誰も知らない。




