シンデレラを探す王子様
満は引き出されて間もなく、ゆっくりと目を開けた。長い眠りのせいでしばらく意識はぼんやりとしていたが、目の前に見知らぬ顔があることに気づくと、慌てて数歩後ずさりし、強く警戒した様子で問い詰めた。「……誰だ、お前たちは!?」
「私たちは……って、私たちのこと分からないの?」六日はネズミに尋ねた。
「そのようですね。まあ、この時代の彼ですから。」
「……せっかく眠っていたのに、勝手に起こすなんて……。もう二度と目を覚まさないって決めていたのに……。」そう言って悔しそうな目を向ける。しかし、その弱々しい表情とは裏腹に、声には不満と反発が滲んでいた。それは、いかにも男子高校生らしい態度だった。
ネズミは静かに言う。「今は目を覚まさなければなりません。あなたのお姉さんが危険な目に遭っています。」
その言葉を聞いた瞬間、満は不安そうに目を見開いた。六日から事情を聞けば聞くほど、彼の表情は青ざめていく。「……俺が、そんなことを……。」
「ですが、まだ間に合います。」ネズミは落ち着いた口調で説明を続けた。「魔神の身体は、変化したばかりの頃は膨大な魔力の集合体に近い存在です。胃や肝臓といった内臓も、まだ完全には形成されていません。たとえ悪魔を飲み込んでいたとしても、消化して体内に取り込んだり、排出したりするまでには相当な時間がかかります。」少し間を置いてから続ける。「つまり、あなたは二度魔神化しましたが、身体機能はまだ十分に発達していないということです。ですから、立春美紀子さんも、あなたと同じようにこの世界のどこかへ飛ばされている可能性があります。今も出口を探しているか、あるいはまだ眠ったままかもしれません。」
ネズミはさらに言葉を続ける。「私はこの場所をよく知っています。だから、立春美紀子さんのところまで案内できます。ですから、今は――」
「もういい!!」突然の怒声が、その言葉を遮った。満の叫びはあまりにも大きく、ネズミの小さな身体がびくりと震える。
「……なんですよ?」ネズミは不満そうに小さくため息をついた。
「俺は……ずっと間違えてばかりなんだ……。」その声には、六日にもはっきりと分かるほどの涙混じりの悲しみが滲んでいた。「歩美を助けられなかった。俺を大切にしてくれる人や、愛してくれる人たちを何度も傷つけてきた……。きっとこれから先も、同じことを繰り返すんだ。」
満は力なく膝をついた。「……俺みたいな奴は、このまま死なせてくれればいい。」肩を震わせながら続ける。「美紀姉は……お前たちだけで探してくれ。俺はここにいる。もうどこへも行かない……。」
「何を言って――」ネズミが言いかけたその瞬間、満は叫ぶように遮った。「それが事実なんだよ!!!」声が荒れ、悲鳴にも似た響きが辺りに響く。「俺はいつだって、俺を愛してくれる人や、大事にしてくれる人を傷つける!! お前たちだって、いつか俺に傷つけられるんだ……!!」
彼はうつむいたまま、小さく呟く。「だから……このままここで腐って、堕ちていけばいい……。現実の俺のことも……好きにすれば――」言い終わる前に、六日の拳が一直線に飛んできた。体格の細い満は、その一撃をまともに受け、そのまま遠くまで吹き飛ばされた。
「……おお、よくやりましたね。」自分の拳を見つめ、呆然としている六日に、ネズミが満足そうに言った。
「そんなに強く殴るつもりじゃなかったのに! あなた、私の体を勝手に操ったでしょ!」六日はようやく、自分がやりすぎたことに気づいた。慌てて、まだ信じられないという表情のまま倒れている満を起こし、慌ただしく声をかける。「だ、大丈夫ですか!?」
満はしばらく呆然としたまま、されるがままになっていた。
「その子は何としてでも連れて行かなければなりません。気絶させてでも。」
「やっぱりあんた、人じゃないね……。」六日はそう呟くと、今度は満を真正面から睨みつけた。「自分が悪いって思ってるなら、なおさら最後まで責任を取るべきでしょう! 逃げてばかりじゃ何も解決しません!」生死も分からない雨水と、魔神に飲み込まれた美紀子のことを思い出し、六日の声にはさらに怒りがこもる。「『本体の自分は好きにしてください』って……そんなの、どれだけ大変なことか分かってるんですか!? 今ここで目を覚まして、自分のやったことを止めることこそ、あなたがやるべきことでしょう!」六日の瞳には涙が浮かんでいた。
満はただ呆然と、その激しく怒る彼女を見つめる。
「たとえ今までたくさん間違えてきたとしても、昔の後悔を取り戻せなかったとしても……あなたには、立春さんを守る義務があるでしょう!」六日はさらに叱責した。「立春さんは、あなたにとって一番大切な人なんじゃないんですか!」
その言葉に、満はようやく我に返ったようだった。「……そうだ。」ぽつりと呟く。
そうだ。
美紀子は、自分にとって何よりも大切な人だ。
そして外では、今も取り返しのつかない状況が続いている。
そこまで冷酷になれる人間ではない。
満は自分の腕を強く握りしめた。「……分かった。行く。」
そして、ネズミと六日を真っ直ぐ見つめる。「でも……全部終わったら、その後はもう俺のことなんて放っておいてくれ。」その瞳には揺るぎない決意が宿っていた。
ネズミは静かに答える。「その話は、本当にすべてが終わってからにしましょう。」
二人と一匹は、再び夢の奥深くへと歩き始めた。
「このまま進めば、もうすぐこの世界の核にたどり着くはずです。」ネズミはそう言って、先へと歩みを進めた。
「え、えっと……じゃあ、さっき満さんを見つけた場所って、核心部じゃなかったんですか?」六日は驚いたように尋ねた。
「そうですね。階層に例えますと、ちょうど三階ほどの場所に過ぎません。」
「核心部……って、どんなところなの?」六日は思わず聞いてしまった。
「最も醜悪で、最も恐ろしい場所です。」ネズミは嘲笑うような声を漏らした。だが、魔神の核心に隠されたすべての真実を六日に語るつもりはないようだった。
その言葉を聞いた満は、さらに深くうつむいた。
やがて一行は、夢幻的な色彩に包まれた広大な野原へとたどり着いた。
水晶色の草原は、遠くから見ると雨上がりの露のように輝いていた。しかしそれは水晶草自身が持つ、ガラスのような輝きだった。
幻想的で鮮やかな水晶草原とは対照的に、雑草のように荒々しく伸びた巨大なタンポポが風に揺れながら舞っていた。その大きさは現実のものとは比べものにならない。ここにはいつも涼やかな風が吹いていた。タンポポの無数の種子は、その風に乗って旅立っていく。小さな落下傘兵たちは空の彼方へ、どんどん遠くへ飛んでいき、最後には一人、また一人と、まるで故郷を離れた旅人のように姿が見えなくなっていった。
空は淡い桃紫色で、まるで少女が好みそうなユニコーンカラーのようだった。紫色の雲が桃色の空をゆっくりと流れている。ネズミが語った「醜悪で混沌とした場所」という印象とは、あまりにもかけ離れていた。
何本もの黄色い土の道から、次々と馬の軽快な足音――「カツ、カツ」という音が響いてきた。音のする方向へ目を向けると、さまざまな色をした、美しく優雅なユニコーンたちが、誇らしげに色とりどりのカボチャの馬車を引いてやって来ていた。最も典型的なオレンジ色の馬車。幻想的な水色の馬車。重厚な紺色の馬車。そして、まるで謎めいた力に包まれているような紫色の馬車まで存在していた。カボチャの馬車の窓には、何重にも重なった厚いカーテンがかけられており、中にどのような客が乗っているのかはまったく見えなかった。
黄色いダイヤモンドで舗装されたすべての道は、同じ場所へと続いていた。それは、ダイヤモンド、水晶、そしてガラスで造られたかのような城だった。桃紫色の空の下で、その城は眩いほどに輝き、見る者の目を強く引きつけていた。彼らの耳には、城の内部から流れてくる優雅な音楽と賑やかな歓声がかすかに届いた。そして、ローストチキンや苺ケーキの濃厚な香りまでも漂ってきた。
「ですが……美しい外見に騙されてはいけませんよ。」ネズミはまた、意味ありげにそう言った。
巨大で華麗な城門を押し開ける。
まるで海の水面のようにきらめき輝いていた城の内部は、なんと、底の見えないほど深い闇に包まれていた。
予想もしなかった光景を目にした六日は、ごくりと唾を飲み込む。そして、自分から満の手を握った。暗闇の中で、お互いがはぐれないようにするためだった。
なぜかネズミは慌てた様子を見せた。「お、おいおい……男女が手を繋ぐなんて、少々慎みに欠けるのではありませんか?」
「手を繋いでるだけじゃない。」六日は淡々と言い返した。
「ダメなものはダ――あ。」ネズミは何かに気づいた。
その視線の先を追うように六日が振り向いた瞬間、彼女の足から力が抜けた。
美しい音楽、賑やかな声、そして漂っていた食べ物の香り。
それらはすべて、獲物を誘い込むために作られた偽りの罠だった。
彼らの目の前には、一人の巨人がしゃがみ込んでいた。
ぼさぼさの髪、ぼろぼろの服。着ているものは少女が着るような白いワンピースだったが、その顔つきは幼い少女のものではなかった。老人のように深い皺が刻まれていた。
虚ろな瞳で、彼女はこの城へ入り込んできた客を乗せたカボチャの馬車を、目的もなく弄んでいた。まるで子供が玩具を壊して遊ぶように、一台、また一台と馬車を壊していく。カボチャを分解し、部品をばらばらにし、模型を壊すような無邪気さで、ユニコーンや客たちを玩具のように扱っていた。床には壊されたものの残骸が散らばり、その光景はあまりにも異様だった。
振り返ると、先ほどまで存在していた華麗な大門は、いつの間どこにも見えなくなっていた。手元の玩具をすべて壊し終えた巨人は、まだ満足していないように彼らへ視線を向ける。そして、ゆっくりとその手を伸ばした。
六日は真っ先に満を守ろうとした。彼女を強く押し飛ばし、自分が巨人の攻撃を受けて遠くへ飛ばされる。
「六月!」ネズミは思わず叫んだ。しかし、六日から返事はなかった。彼女はすでに意識を失っていた。すると、目の前の獲物で遊ぶことを楽しんでいた少女のような巨人は、今度は満へと視線を向けた。
抵抗する力もない満は、震える身体で立ち尽くす。足はすくみ、逃げることすらできなかった。
まるで追いかけっこの遊びに興味を失ったかのように、巨人の瞳には楽しげな光が浮かぶ。そして、どこからともなく一人の女性を取り出した。
満は目を凝らす。そこにいたのは、美紀子だった。
恐怖に気づいた時には、もう遅かった。満は目の前の怪物が何者なのか理解していた。恐怖と罪悪感に押し潰されながら、震える声で名前を呼ぶ。「美紀姉……」
巨人は不気味な笑みを浮かべながら、美紀子を掴んだ。そして、異様な動きで満へ近づいてくる。掴まれた美紀子から苦しそうな声が漏れた。
満の足にはまだ力が残っていた。
だが、弱い自分では遠くへ逃げることもできない。臆病で、後悔に満ちた心が、何も行動させてくれなかった。まして、美紀子を助けることなど。
「あなた……死ぬおつもりなのですか?!」六日のもとへ向かおうとしていたネズミが、満へ叫んだ。
「でも……俺は……」満はその場に崩れ落ち、何度も嗚咽を漏らした。
「お姉さんを諦めて……それでどうするおつもりなのですかよ?!」ネズミは、満にとって最も大切な存在を思い出させるように言葉をぶつけた。
「美紀姉……きっと、俺より上手くできる人がいるよ……」ネズミの表情が変わった。満はついに、今まで胸の奥に隠していた言葉を吐き出した。「俺は……最初から何の役にも立たない、弱い奴だったんだ……」
「たとえ最強の『サタン』の弟子になったとしても、それは変わらない……」
「歩美はずっと苦しんでいたのに……俺は何もできなかった……」
「俺は……俺は歩美とずっと同じ地獄にいるんだ……」
その時、満は巨人に捕らえられた。反対側にいる美紀子を見つめながら、満は必死に願う。「……せめて、その人を放して…………」巨人は興味深そうに満をしばらく見つめた。そして再び、不気味な笑みを浮かべる。
気まぐれに美紀子を放り出すと、今度は満を強く掴み、苦しそうな声を上げさせた。
もう片方の手が、ゆっくりと満へ近づいていく。
ネズミはついに堪忍袋の緒が切れたように、大声で叫んだ。「あなたは……本当に、妹さんがあなたのことをずっと憎んでいたと思っているのですか?!」満も、巨人も、その怒りを露わにして叫ぶ小さなネズミへと視線を向けた。「その浅はかなお考えと、歪んだ思い込みでも構いませんから、少しはお考えくださいよ! もし妹さんが本当に、あなたにも自分と同じ苦しみを味わってほしいと思っていたのでしたら……あの時、あなたを助けに来るはずなどないではありませんか!」
満はハッとしたように目を見開いた。しかし、歩美への罪悪感は、正しいはずのその考えを押し流してしまう。「でも……それでも、おれがまだ妹に憎まれている可能性だって……」その時、巨人はしゃがんだまま近づいてきた。重く、ゆっくりとした、しかし巨大な足取り。
それでもネズミは怯えなかった。
こいつは、そんなものを恐れたことなど一度もなかった。「あなたは、本人のお気持ちを直接お聞きになったことなどないではありませんか! それなのに、勝手な想像だけで決めつけることこそ、あの子への侮辱ではありませんか?!」ネズミは怒鳴りつけた。「何が『ずっと同じ地獄にいる』ですか?!」
「この世界そのものが、とっくに巨大な地獄なのです!!」
「そんな中で、それでもなお、さらに醜く、最悪になっていくこの世界を生き抜くこと……それこそが、あの方に対する何よりの償いであり、贖罪になるのではありませんか?!」
満は大きく目を見開いた。「それに……もし本当にあなたがこのまま自ら堕ちていくのであれば、あなたは結局、あの子が本当は何を思っていたのかを、永遠に勝手な想像だけで考え続けることになるのです……」
「そして、独りよがりで間違った形の贖罪を、ただ続けるだけになってしまうのです。」
「それで本当に、姉さんのためになると思っているのですか?」
「そんな姿を見たら……姉さんだって、きっとこの出来事をまた深く悲しむことになるのです。」
「最後には……姉さんも、あなたと同じ道を選んでしまうのではありませんか?」
満はしばらく黙り込んだ。
そんな考え方など、今まで一度もしたことがなかった。
彼は自分自身に誓っていた。絶対に、美紀姉を自分と同じ存在にはしないと。
自分の命には価値がないと思っていたから。
自分の罪は許されないものだと思っていたから。
だからこそ、一番大切なものを見落としていた。
「もし最後に姉さんまであなたと同じになってしまったら……」ネズミの姿は、満の溢れ続ける涙の中で、ある誰かの姿へと重なっていく。「その時、この出来事は間違いなく罪の連鎖になるのですよ。」
「ただ繰り返されて……何度も巡り続けて……終わることなく続いていくのです……」
「もしこのまま何も変わらなかったら……」
「苦しむのは貴方の姉さんだけではありません。六月さんだって、傷つくことになるのです。」
「貴方が起こしたくない未来が……一つずつ現実になっていきますよ。」ネズミは静かに、しかし強く言った。「まさか……大切な人の未来まで、自分と同じように色を失ったものにしたいのですか?!」
満の涙は、すでに完全に堰を切ったように溢れ出していた。頬を伝い、顔全体を濡らしていく。しかし、巨人は彼にそんな時間を与えるつもりなどなかった。
巨大な拳を振り上げ、ネズミと六日を叩き潰そうとする。
その瞬間だった。
巨人の痩せ細った腕は、一瞬にして消え去った。その手に捕らえられていた獲物が、どこへ消えたのかも分からない。
腐臭が漂う。黒く、粘ついた液体が切断面から流れ落ちる。巨人は耳をつんざくような絶叫を上げた。
ネズミは、間一髪で逃れたその姿を見つめ、安堵したように微笑んだ。
満の耳飾りは、いつの間にか消えていた。
代わりに彼の両手には、巨大で華麗なガラス製のナイフとフォークが握られていた。その柄には、タンポポの彫刻が施されている。
突然現れたその武器を、満は驚いたように見つめた。「これは……ルシファーが、かつておれに授けてくれた……武器?」




