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朽ち果てたカボチャの馬車

満があの少女と顔を合わせたのは、結局あの一度きりだった。だが、それでも彼はほどなくして、少女の正体が誰なのかを知ることになる。その答えは、書物の翻訳や調査の果てに辿り着いたものではなく、まったくの偶然からもたらされたものだった。正直なところ、それは少し拍子抜けするような真実だった。だが同時に、肩の荷が下りたような気持ちにもなった。


あの男は、月神教について大して理解していないどころか、あの危険な組織そのものを、まるで脅威として認識していないようだった。


第一段階の葬儀も終盤に差しかかった頃、満は偶然にも、強欲の魔王とある人物との会話を耳にした。「……もう、あの子を信じるのはやめたのか?」


「……これほどの危機に直面してなお、あの子には覚醒も変化も見られなかった。仮にあれが本物だったとしても、長い転生の果てに、その力の大半を失ってしまったのかもしれない。」重く低いその声には、どこか覇気のなさが滲んでいた。満はその声を聞いた瞬間、誰なのかを悟った。気配を殺し、さらに耳を澄ませる。


「つまり、諦めるってことか? あの子はまだ子供なんだぞ。」

「もう時間がない。あいつらにとって、最大の脅威が死んだことで、しばらくは好き勝手に動けるだろう。だが、連中はすぐに次の標的を俺たちに向けてくる。その頃になっても、あの子はまだ大人になっていないかもしれない。」満は思わず目を見開いた。会話の中に出てくる「あの子」の特徴は、月神教が語っていた「唯一にして完全なるキメラ」の条件と、あまりにも一致していた。


しかも、ベルゼブブがこれほどまで気に掛けている少女。それが彼の後継者である娘以外であるはずがない。


だが、あの少女の瞳は金色ではなかった。年齢もまだ幼い。


本当に、あの子がそうなのだろうか。探し求めていたものが、思いがけず目の前に現れた?


マモンの声には、隠しきれない諦めが滲んでいた。「……確かにな。」

ベルゼブブは短く言った。「私はまた遠征に出る。しばらくは会えなくなるだろう。」


「その子はどうするんだ?私だって仕事を放り出すわけにはいかないんだぞ。」マモンの声音には、わずかな困惑と面倒臭さが混じっていた。「私たち、誰も子供の世話なんてしたことがないしな。」


ベルゼブブは淡々と答える。「お前に任せる。お前なら、うまくやってくれるだろう。」

満ははっきりと、マモンがため息をつくのを聞いた。「分かった。必ずうまく手配しておくよ。信じてくれてありがとう――」だが、マモンはそこで不意に言葉を切った。


次の瞬間、満は一筋の魔力がまるで鳥のようにこちらへ向かって一直線に飛んでくるのを感じ取った。幸いにも、彼は経験を積んだ悪魔だった。見つかる寸前にその場を離れ、すぐに美紀子と合流して無事に帰宅することができた。


それでも逃げ去る途中、ベルゼブブの声だけは耳に届いた。「……誰かに盗み聞きされていたとしても、もうどうでもいい。」


疑問はまだ山ほど残っていた。


だが、六月六日というあの少女こそが、自分の探していた存在であることだけは疑いようがなかった。とはいえ、満は彼女の居場所をそう簡単に月神教へ知らせるつもりはなかった。だからこそ、彼は観察を続けた。まるで獲物を待つ猟師のように、じっと時を待ちながら。


伝説のキメラと呼ばれているにもかかわらず、六日はどこにでもいる普通の子どもと何一つ変わらなかった。


子ども特有のわがままさと遊び好きな性格。感情の起伏は激しく、さっきまで笑っていたかと思えば次の瞬間には大泣きし、静かになったと思えば今度は何かしらの騒動を起こしている。


家族との結びつきや情愛を抱きにくいと言われる悪魔――それも魔王が、まさか子どもを引き取って育てようと考えるなど、満には到底想像もつかなかった。


満は彼女の記憶の中に、ルシファーが彼女の世話をしていた頃の光景を見たことがある。万能に見えたルシファーですら、子どもの気まぐれや機嫌の移ろいには振り回されていた。彼女の記憶の中の彼は、いつもどこか余裕を失い、てんてこ舞いになっていた。


なるほど、子どもを作らない理由がよく分かった。


そんなことを思いながら長い間この小娘を観察していた満は、次第に疑い始めていた。もしかすると、この子は「完璧なキメラ」などではなく、ただの騒がしくて遊び好きな子どもなのではないか、と。


その後、マモンもベルゼブブも屋敷を去り、少女は母方の親族へと託された。そこにいたのは、愛を知る優しく穏やかな人間たちだった。子どもは悪魔たちのもとにいるよりも、ずっと多くの愛情と温もりを受けながら育っていった。


その姿を見届けた時、満はようやく悟った。


自分に、こんなありふれた幸せを壊す資格などあるはずがない。


彼は少女を月神教へ引き渡すことを諦めた。幸いにも月神教の者たちの中に読心能力を持つ者はいなかった。満は今日に至るまで、この事実を隠し通してきた。今なお月神教の残党とは付き合いが続いているものの、そのたびに適当な嘘を並べては誤魔化してきた。


だが今になって、月神教は自力でこの子を見つけ出してしまった。そして彼らは、どうしても彼女を連れ戻そうとしている。


荒っぽいやり方で月神教から逃れようとした結果、少女の中に眠っていた曖昧な記憶が刺激されてしまった。しかし、その力を制御しきることはできず、彼女はますます心を閉ざしてしまった。


もともと彼女に花粉を付着させていたのも、いざという時に守るためだった。それなのに、月神教がすべてを台無しにしてしまった。


あの子が倒れた時、月神教の連中も信じられなかったに違いない。なにせ「最も成功したキメラ」は、あらゆる力を防ぎ、あらゆる攻撃を回避できる最強の存在とまで言われていたのだから。それが、倒れた。


撤退したのも、おそらくは改めて「キメラ対策」を練り直すためだろう。


運が悪かったのは、その場を立夏月光たちに見られてしまったことだ。


もともと、あの連中に関わるつもりなんてなかった。それなのに、あいつらが余計なことを喋ったせいで、今では誰もが自分を警戒している。


情報の優位だけを利用して楽に勝つつもりだったのに。


このままでは、Urikusが優勝をさらうのも簡単ではなくなるかもしれない。きっと美紀姐にも迷惑をかける。いや、もうすでに十分すぎるほど迷惑をかけている。


だからこそ、今からでも必死に立て直さなければならない。


……それにしても、あの子にはちゃんと埋め合わせをしないとな。あんなひどいことをしてしまったのだから。


六日は、これらの出来事を自分自身に納得させ、受け入れるまでに、もっと時間を必要としていた。悲しみと哀しみの涙が彼女の頬を伝う。六日は慌ててそれを拭いながら、呟いた。「……あの人に、こんなにも辛い過去があったなんて……」

白いネズミは静かに答えた。「そうです。しかし、同情や憐れみだけでは、あの子を救うことはできません。」それは、かつてあの人が言った言葉とどこか似ていた。「彼は、ここから自分自身の足で抜け出さなければなりません。それは、彼自身が向き合わなければならない課題なのです。」白いネズミはそう言いながら、六日をさらに奥へと導いていく。


やがて、夢幻的でありながらも壊れ果てたカボチャの馬車が、二人の前に姿を現した。


六日は驚きながら小走りで近づいていく。「……こんな場所に、カボチャの馬車があるなんて……」カボチャの馬車を操っていた御者も、引いていた馬も、当然すでに姿を消していた。車体の半分は泥沼に沈み、かつて熟して甘い橙色をしていたカボチャの姿も、もうどこにもない。そこに残っていたのは、あらゆる植物を終焉へと導くような、枯れ果てた黄色だけだった。カボチャの馬車の扉や窓は、すでに腐り、砕け、地面へと落ちている。


それでも唯一、馬車から養分を吸い取りながら、未だに実を結ぶことのないカボチャの蔓だけは、青々しく力強く伸び続けていた。まるで童話の世界に突然現れた、街を侵食する巨大な怪物のようだった。


密集したカボチャの蔓は、朽ちた馬車を狭く閉ざされた牢獄へと変えていた。誰かの心に絡みついた結び目のような蔓をかき分けたその先で。


六日は、そこに座り込んでいる満を見つけた。なぜか、いつもよりずっと幼い姿をした満。目を閉じたまま、まるで長い眠りについているかのようだった。


六日は外側から必死に呼びかける。「満さん……満さん!」


しかし、満は眠り続けたまま、目を覚ます気配がない。


白いネズミは言った。「たとえ外から彼をお目覚めにすることができたとしても、このカボチャの蔓では、彼をここからお連れ出しすることはできません。」ネズミは力いっぱい蔓を引っ張った。しかし、どれだけ力を込めても、蔓を断ち切ることはできなかった。「私は小さすぎますから、これが再生する前に引きちぎって、この子を連れ出すことはできません。でも……今はあなたがいますから。」六日は静かに頷いた。そして一気に、びっしりと絡み合ったカボチャの蔓を引き裂いた。再生するよりも早く、彼女は満を外へと引きずり出すことに成功した。


彼は制服を着ていた。髪も、いつものように簡素な黒色のままだった。


六日には分かっていた。


これは、高校時代の満だった。



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