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最強ギルドマスターの一週間建国記  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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新たなる来訪者

グラード村の村人達の住居建設と冒険者ギルド建設を開始して5時間。


夕方になる頃にはその全てが出来上がっていた。衛兵の詰所まで一緒にである。


感激して泣き崩れる村人も出る中、ギルドメンバーは許可が下りた村人たちの荷物を運び込み、引越しを完了させた。


俺は感慨深く、ブリュンヒルト達は呆然とした表情で城下町の入り口からその光景を眺めていた。


「ん? 誰か来たよ」


と、後ろから龍人のラグレイトが俺に報告をしてきた。


見ると、村人の通行の為に開けていた城壁の巨大な城門の向こう側で、放心状態のままこちらを見ている商人らしき男達の姿があった。


皆がくすんだローブに身を包み、馬や馬車に荷物や人を載せてきていた。


人数はおよそ20人ほどだろうか。


随分と大勢だが、隊商の一団か。


俺は惚けた顔の集団に近付いて声を掛けた。


「ようこそ。まだ出来上がってはいないが、城下町になる予定のグラード村へ」


俺がそう言うと、先頭に立つ中年の男がハッと意識を取り戻して俺を見た。


薄汚れた茶色のローブを羽織っているが、ヒゲはきっちり剃られているし、ローブの中の服は質の良さそうな物を着込んでいた。


案外、名のある商人かもしれないな。


俺がそう判断していると、中年の男が一度頭を下げてから口を開いた。


「ありがとうございます。我々は商人ギルドと行商人の一団です。私は商人ギルドのクビドと申します」


クビドと名乗る商人は丁寧に、だが眼光鋭く俺を見て再度頭を下げた。


俺はクビドから見定められている気配を感じながら、微笑を貼り付けて頷いた。


「そうか。俺はこの国、エインヘリアルの王レンだ。歓迎するぞ、商人達よ」


俺がそう告げると、クビドの後ろに並んでいた男達から騒めきが起きた。


大きく感情の変化を見せなかったのは3人。


目の前のクビドと、奥で馬に乗っている20代中頃に見える美女、そして馬車の馭者をしている30代ほどに見える髭を薄っすら生やした男だ。


クビドは顔を上げると、先程までの顔が嘘のような柔らかな笑みを浮かべた。


「やはりそうでしたか。いや、冒険者のような動きやすい鎧姿であっても、陛下の高貴なオーラは隠せないようですね」


クビドはそんなことを口にして笑った。うちのギルドメンバーの心をアッサリ掴む、中々のやり手だ。


俺は自分でキャラメイクした外見を褒められただけだから、然程思うことは無いが。


「そうか。ところで、見ての通り城下町は建設中でな。良かったらこの街の城として建てた城で歓待しようと思うが、どうだ?」


俺がそう言うと、またクビドの後ろからいくつかの声が上がった。


まあ、普段グラード村へ行商に来ている者がいれば、城が出来たなんて信じられないだろう。


なにせ、3日で出来たからな。


「それはそれは…光栄の極みです。もしかしたら、我らが初めて足を踏み入れたという栄誉を得れるのでは?」


クビドはそう言って探りを入れてきた。


出来たばかりの国だ。半ば確信を持っての質問だろう。


だが、俺はそんなクビドに首を振って否定する。


「いや、そこにいるブリュンヒルト達が最初の客となったな」


俺がそう言うと今度こそ、クビドも合わせて商人達が一斉に驚きの声を上げた。


「な、なんと…いや、確かにそちらに居られるのはSランク冒険者のブリュンヒルト殿。そして冒険者パーティー白銀の風の面々…おや? オグマ殿がおられませんが?」


クビドはそう言ってブリュンヒルトを見た。


ブリュンヒルトはクビドの視線に顎を引いて口を開く。


「オグマはレンブラント王国の国王に会う用事があって王都に行っているわ。合流するまで大した依頼も受けられないから、辺境領に居た私達だけでランブラスに来て、この国のことを知ったのよ」


ブリュンヒルトがそう言うと、クビドは2度頷いて顎を指で撫でた。


「そうでしたか。是非一度軍神と謳われるオグマ殿と話をしてみたかったのですが…」


「多分、数日したらこっちまで辿り着くんじゃないかしら? 私達はこの街に拠点を移すから、ここに居ればいずれ逢えるわよ」


「拠点をこちらへ?」


ブリュンヒルトの回答に、クビドは片方の眉を上げてそう呟いた。


良いぞ。ブリュンヒルトは漏らした情報は商人達からすれば黄金の価値を持つだろう。


俺の推測を裏付けるように、クビドの後ろに並んでいる商人達が目の色を変えている。


だが、その前に疑問が湧く。


誰だ、オグマって。


いや、誰かが白銀の風は5人パーティーとか言っていたか?


俺がそんなことを考えていると、ブリュンヒルトはクビドの質問に答えずに俺を何度か振り返っていた。


「なんだ?」


俺がそう聞くと、ブリュンヒルトは照れたような顔つきになって俺に向き直った。


「あの…お金は勿論払いますので、我々の拠点となる家を作ってもらえませんか? グラード村の人達の家が凄く素敵でして…」


ほう、羨ましくなったか。


やはり、俺の間取りが素晴らしいからだな。


俺は満足して頷くと、ディグニティを振り返って指示を出した。


「ディグニティ、冒険者ギルドの裏手にこいつらの家を頼む」


「分かりましたわ、ボス? あんた達、今日見た中でどの家が良かったかしら?」


ディグニティがそう聞くと、ブリュンヒルト達が顔を見合わせて一言二言話し合い、すぐにこちらを振り向いた。


「あの、一階と二階の間に一間ある家が…」


「あら、良い目をしてるわ? 任せなさい」


ブリュンヒルト達が選んだのはディグニティの作った間取りだった。


貴様ら、覚えていろ。






「お、おお…なんということだ…」


感情をあまり出さない様子だったクビドが目を見開いてそんな声を上げていた。


後ろに控えていた商人達に至っては最早言葉も出ない状態である。


なにしろ、ブリュンヒルト達の拠点となる家が30分で出来上がったからだ。


それも家具付きである。


ブリュンヒルト達は喜んで出来上がったばかりの家に駆け込んでいた。


「いやはや…驚きました」


クビドが何とかそれだけを俺に伝えると、深い深い息を吐いた。


「…商人の間ではレンブラント王国は風前の灯火と言われております。故に安定したガラン皇国か、経済豊かなメーアスに向かう算段の商人ばかりでした」


クビドはそう言って言葉を切ると、俺に向き直って口を開いた。


「ですが、これからは此処、竜騎士の国エインヘリアルに人は集まるでしょう。我ら商人ギルドもこちらに一大拠点を作らせていただきたい」


クビドはそう言って、頭を下げた。


すると、背後から美女が歩いてくる。


濡れたように艶やかな黒い髪を頭の後ろで纏めた美しい美女だ。先程まで馬に乗っていた女だろう。


「お初にお目に掛かります。商人ギルドのヴィアンと申しますわ。本来なら幹部とはいえ勝手に拠点を作るなんて発言をしたクビドさんを叱らなければなりませんが、ここは私も賛同致します。良ければ、冒険者ギルドよりも大きな建物をお願いしますわ」


ヴィアンと名乗る女はそう言って蠱惑的な笑みを浮かべた。


話しぶりからすると、幹部というクビドと同等以上の地位にある重鎮らしい。


まあ、その自信に溢れた微笑みを見れば商人としての格も知れる気がするが。


「そこの冒険者ギルドより大きい必要性があるならな」


俺が苦笑混じりにそう返すと、ヴィアンは息を漏らすように笑った。


「ただの対抗心ですわ」


「それじゃダメだ。まあ、街並みの関係上色々制限があるからな。倉庫代わりに地下に大きな部屋をいくつか作るくらいなら問題無く出来るぞ」


「おお、それは有難い話です」


ヴィアンへ話したつもりだったが、横からクビドが返答した。


「もう! クビド、邪魔しないで下さいます? 私が陛下とお話させていただいてますのよ?」


「最初は私でしたが…」


ヴィアンとクビドが何故か揉め出したので俺は咳払いをして黙らせた。


「何にしろ、それはまた明日のことだ。とりあえず今日は皆を城へ招待しよう。付いて来い」


俺はそう言って城へ皆を連れて行った。


城を見上げ、呆然とする商人の群れ。


予想通りだ。


「へ、陛下…あ、あ、あの城は…まさか、み、ミス…」


クビドが吃りながら俺の顔を見てくる。


俺は軽く頷いて口を開く。


「ミスリルの壁だ。そして、窓枠や一部装飾はオリハルコンを使っている」


俺の返事に商人達の絶叫が響き渡る。


「ミスリルの、壁…あの1面だけで国が買えるぞ…」


クビドがそう言葉を洩らす中、ヴィアンが俺の方へそっと身を寄せてきた。


「陛下…まさか、ミスリルを加工…いいえ、もしや創り出すことがお出来に?」


ヴィアンが俺の腕にまとわり付くようにして俺に寄り添い、そう確認してきた。


俺は肩を竦めてヴィアンから離れると、さっさと城へ向かった。














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