7.筆記試験(2)
私の目の前には二つの冊子。一つは問題用紙。こっちに問題が書かれているってことだよね。もう一つは回答用紙。こっちに答えを書けっていう事だよね。
なるほど、これが都会の試験のやり方なんだ。確か、受付の時に説明されたのは、筆記試験と実技試験があるって言っていたな。
筆記試験を合格した者だけが実技試験に進める、と。その筆記試験で半数以上が落とされるって言っていたから、すごく難しい問題なんだろうなぁ。
それに合格するなんて無理だよね。だって、周りから唸り声が聞こえてくる。それだけ、難しいってことだ。まぁ、私なりに頑張ってみますか。
そう思って、問題用紙を開いてみた。そこには文章が書かれていて、その文章の答えを下の項目から選ぶようになっている。
それを読んだ瞬間、私は固まった。だって、これ――答え書いてあるよ!?
えぇっ!? 問題用紙って答えが書いてあるものなの!? こんなの簡単な間違い探しみたいなものじゃ!
……いやいや、最初だからそんなに優しい問題なんだ。後々になると、もっと難しい問題になるはず。
私は問題を読み、下に書かれていた項目から合っている答えを選び、記号を回答用紙に書いていく。問題を読むのに十五秒、答えを見つけるのに一秒。書くのに二秒。
その調子でどんどんと記号を書いていくと――五十問。それで、一枚目の回答用紙がいっぱいになった。
……えっ? 答えを書き写すだけの問題だったの? どれも初歩的な問題ばっかりだったし、読めば誰でも分かるような内容だけど……。
そう思って、周りを横目で見て見ると――頭を抱えたり、鉛筆を噛んだり、唸りながらとても苦しそうに問題を解いていた。
……可笑しい。そんなに悩む問題ではなかったけれど……。もしかして、みんな――この後の問題に悩んでいるとかかな?
流石、都会の人。もう、あんな問題なんてすぐに終わらせちゃったんだ。なるほど、ここからが本番っていうところだね。
気を取り直して問題用紙と回答用紙を見て見る。問題用紙には問題が書かれていて、今度は答えを選択する項目がなかった。
そして、回答用紙。とても大きな解答欄になっていて、今度は自分の言葉で答えを書くことになっている。
やっぱり、みんなここで躓いているのかな? ここで、どう答えればいいか悩んでいるに違いない。
気を引き締めて問題を読んでみる。ふむふむ、ほうほう。……あれ? これ、全部本に書いてあるものだ。
いや、私の目が可笑しい? もう一度、読み返してみても――やっぱり、記憶していた本の内容通りだ。
じゃあ、記憶していたものをそのまま書いても大丈夫ってこと? もしかして、どこかで捻ってない? 大丈夫?
私は恐る恐る、回答用紙にその答えを書いた。そこで、不安になった。本当にこれでいいんだろうか?
その気持ちは、問題を進めていくうちにどんどん強いものになっていった。どれもこれも、本で読んでいた通りのことが書かれてあり、答えも本で読んだものを求めているような気がする。
不思議に思いながらも、手を止めずに回答欄を埋めていく。六十問目、七十問目、八十問目。すらすらと、止まることなく書いていくと――。
ついに百問目の回答を書き終えることが出来た。
「終わったー!」
万歳をして、声を上げた。すると、バッと周囲の人たちが驚いた顔でこちらを見る。その様子に私の方がビックリした。
「ゴホンッ。私語は慎むように」
「あっ、はい。す、すいません……」
すると、試験監督が睨みつけてきた。思わず体がすくみ上り、体を縮こませて頭を下げた。
それに、周りからの視線が痛い。信じられない目、疑うような目、あざ笑う目。色んな視線が投げかけられて、とても怖い。
試験の時に声を上げるとこうなるって、誰も教えてくれなかったよー! 私は試験が終わるまで萎縮して待っていた。
◇
「それまで! 今、問題用紙と回答用紙を回収する」
試験監督の声でみんなが一斉に手を止めた。そして、すぐさま控えていた人が問題用紙と回答用紙を回収していく。
そして、周りはとても空気が重い。頭を抱えてブツブツ言う人、天井を見上げて呆ける人、手を組んで祈る人。本当に様々いた。
みんな必死なんだと思うと、約束を果たすために来た私が場違いのような気がする。きっと、こういう人たちが学園に通えるんだと心底思った。
「結果は三時間後、外に掲示板にて貼られる。それまでは、自由行動だ」
結果ってそんなに早く出るものなんだ。まぁ、合格しない私には関係のない話だ。私は筆記用具をカバンに詰め込むと、席を立ちあがった。
やることやったし、帰ろうか!




