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魔法で遊んでいた世間知らずな田舎者、都会に出たら怪物扱いされました  作者: 鳥助


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65.持久走後

「じゃあ、お疲れ様」


 そう言って、私は席を立った。職員室を出ると、玄関へと向かっていく。


「そういえば、ボルブル先生は戻ってこなかったな……。また、授業後に体を鍛えているのか?」


 今日はボルブル先生の初授業だったはずだ。熱血漢のボルブル先生が戻ってこないということは、生徒の頑張りに充てられて自己鍛錬でもしているのだろう。


「全く、明日も他のクラスの授業があるのに。翌日に疲れが残ってしまう」


 これは少し注意をしなくては。そう思って、玄関を出るとグラウンドへと向かっていった。夕日が落ちて、暗くなりかけの外。そのグラウンドを見て見ると――。


「……ん? ボ、ボルブル先生?」


 グラウンドにボルブル先生がいた。だけど、自己鍛錬をしているわけじゃない。ただ地べたに座って体育座りをしていた。


 とても奇妙な光景に嫌な予感がした。恐る恐る近づいて、声をかける。


「ボルブル先生、どうしたんだ? もう、帰る時間だ」


「……カレン先生」


 顔を上げたボルブル先生を見てギョッとした。精気が抜けていて、まるで死人のような顔をしていた。


「ど、どうしたんだ、本当に!? 何かあったのか!?」


「俺は生徒に限界を知って欲しかった……。限界を知れば、おのずとやるべきことが見えてくる。それは生徒のためになると思ってやったんだ……」


「あ、あぁっ……ボルブル先生らしい教育方針だと思う」


「それなのに……ユフィの奴、全然限界が来ないんだ……! ど、どうなっているんだ!? あんな生徒、今までいなかった!」


 ボルブル先生は絶叫して頭を抱えた。思わず驚いて体を引いてしまった。


「どれだけ走らせても、『まだ走れます!』って顔をしているんだぞ……? 他の生徒はとっくに脱落しているのに、涼しい顔で!」


「……そ、そっちの魔法も上手く使いこなせているんだな」


「しかも、限界を迎える前に自分で効率のいい動きまで考え始めたんだ! 限界が近づくにつれて、どんどん効率が良くなって……! 普通、辛くて何も出来ないんじゃ!」


「それは……」


「俺が教えようと思っていたことを、全部自分で見つけていくんだ! そして最後には――限界を突破した」


 さっきまで絶叫していたボルブル先生が途端に静かになって遠い目をした。


「俺が教えたかったことを、あの子は一日で……。俺は今後、何を教えればいいんだ……?」


 ボルブル先生は再び体育座りになった。


「俺は教師だぞ……。生徒に何かを教えて、成長する姿を見たいんだ……。それが喜びだったのに……」


「だ、大丈夫だ。ユフィは都会の事には疎いから、都会の何かを教えればいい」


「と、都会の何を教えればいいんだ! 俺は、俺はー!」


 し、しまった……余計に拗らせてしまった。流石にボルブル先生が心配だ。私はボルブル先生を連れて、一緒に飲みに行った。


 ◇


「おはようございます!」


 教室に入って挨拶をすると、クラスから返事が返ってくる。いつもならそれで終わるんだけど、今日はみんなに囲まれてしまった。


「ねぇ、昨日はいつまで走ったの!?」


「えっと、夕方ですかね」


「えっ……あの状態で夕方まで走っていたの!? か、体は大丈夫!?」


「はい! 一晩寝たので、問題ありません!」


 元気に答えると、周りのクラスメイトが引いていた。


「もう少し、魔力使用効率を上げれば、夜まで走れたと思うんですけれどね……。私はまだまだです」


 昨日思ったことを口にすると、教室の空気が重くなった。そして、私を見る目が変わっていく。なんか、私を見ていないような、なんていうか……。


「ユ、ユフィは今までのままで十分だと思うよ!」


「ほら、無理すると体に悪いし! もう少し、リラックスしていこうよ!」


「いつも限界まで使っていたら、体がもたないしな!」


 そう言って、クラスメイト達は離れていった。すると、ロゼリア様とアルベルト様が近寄って来る。


「もう、あなたは本当に……。一体、その体にどんな力があるっていうの?」


「昨日はあれで限界だったのに、それを優に超えるなんてな……。規格外にもほどがある」


「えっと、その……田舎で暮らしていた時はずっと魔法を使っていたというか。だから、鍛えられたんだと思います」


「それ、どんな田舎暮らしよ。いい? ここは田舎と一緒じゃないんだから、無理しちゃだめよ。何事もほどほどにがいいんだから」


「ユフィに全力を出せとか、限界までっていう言葉は禁句かもな」


 ちょっと怒ったようにロゼリア様から注意され、アルベルト様からはため息が漏れた。もしかして、昨日はやりすぎたんだろうか? でも、ボルブル先生は限界までって言ったし……。


 そこで、気づく。いつも元気なミレイ様がいない。視線を向けると、ミレイ様は頬杖をついて、窓の外をボーッと眺めていた。


「ミレイ様、どうしたんでしょうか? 元気がありませんね」


「そうなのよ。朝からあの調子で……。お腹の調子でも悪いのかしら?」


「いつも元気な奴が静かだと調子が狂うな。しばらくすれば元気になるだろうから、そっとしておこう」


 二人は心配そうにミレイ様を見る。こういう時、どうすればいいのか分からない。二人の言っていることが正しいのかな?


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