61.楽しい料理な休日(2)
「みなさん、おはようございます!」
校舎の正門の所で待っていると、ロゼリア様の家の馬車に乗って三人がやってきた。普段とは違う私服姿が目新しくて新鮮だ。
「ユフィ、おはよう。材料を持って来たわよ」
「俺は実際に使われている材料を持って来た」
「これで、学園の広場で料理が出来るね。野外活動の料理、頑張ろー!」
「はい。頑張りましょう」
ロゼリア様に材料をお願いしたのだけれど、アルフレド様も他の材料を持って来たらしい。これで、色々な料理が作れそうだ。
私たちは校舎傍の広場へと移動して、準備を始めた。道具を地面に置いて、材料を用意して、これで準備完了だ。
「それじゃあ、野外飯の基本となっているカレーライスを作ってみましょう」
「私……野菜の皮を剥くのが苦手なのよね。上手に出来るかしら」
「私は煮るのが苦手! 前回は野菜が全部固かったんだよね!」
「……僕はどっちも苦手だ」
「順番にやっていけば上手くできますよ。やってみましょう」
一番表情を暗くしたアルフレド様を励まし、調理が開始された。まずは時間のかかるご飯から炊く。飯盒に米を入れ、水で汚れを落とす。それを繰り返すと、水が透明になってきた。
私が手本を見せると、三人は習って同じことをする。
「あぁっ、アルフレド様! お米を落としすぎです!」
「……くっ。魔法よりも難しい」
「落ち着いて、慎重にやってください」
この中で一番アルフレド様が手際が悪い。すごく難しい顔をして、必死になって水を抜いている。
それが終わると、規定の水を入れる。三人が入れ終わったところを見て見ると――アルフレド様の飯盒だけ水が多かった。
「ちゃんと線に沿って入れないとダメですよ」
「……少しくらいは大丈夫なのでは?」
「ダメです! 美味しいご飯が食べられませんよ!」
強く注意すると、アルフレド様はショックを受けたように、大人しく従ってくれた。
薪を準備し、三脚を立て、それから火を付ける。しばらくすると、薪が燃えて火が灯った。
「じゃあ、最初は強火で炊きます。飯盒の中が沸騰したら、薪を減らして火を弱めます」
「えっ!? ずっと、同じ火加減じゃダメなの!?」
「はい。ご飯を炊く時は強火で十分、弱火で十分から十五分、火から外して十分蒸らす工程が必要です」
「ご飯って意外と面倒なのね……」
ミレイ様とロゼリア様が軽く絶望した顔になった。確かに面倒だけど、これも美味しいご飯を食べるためだ。本に書いてあった通りにした方が良いだろう。
「じゃあ、次に野菜を切りましょう。私の手元を見ててくださいね」
魔法でやった方が早いけれど、ここは自分の手でやる。三人とも料理の魔法は使えないし、この方が分かりやすいからだ。
私がするすると皮を剥き、実を一口大に切った。それをジッと眺めていた三人は頭を抱えた。そ、そんなに難しくないのにっ!
やっぱり、貴族と田舎暮らしの平民の間には、この野外料理に高い壁があるということか。でも、三人とも全然意欲的だし、回数をこなせばきっと上手くなる。
だから、しっかりと丁寧に教える。四人であーだこーだと言いながら料理する時間は真剣だけど、楽しい。真剣だからこそ、楽しいと思えた。
誰かと料理をするのは本当に久しぶりだ。ゼロムスさんが健康だった時は良く、一緒に台所に立ったっけ。
その時のゼロムスさんの笑顔や声を思い出して、少しだけしんみりとする。今はもう、ゼロムスさんはいないけれど、三人がいてくれる。それだけで、少し勇気が湧いてきた。
「よし、出来ましたね!」
鍋を火からおろし、私たちは皿にご飯とカレーを盛った。地べたに座り、みんなで一口食べる。その瞬間「美味しい」という声が重なった。
「一人で作った時は、野菜が固かったけど、ユフィちゃんと一緒に作るとこんなにも上手に出来るんだ!」
「とても食べやすいわ。前は皮が残っていたけれど、今回はない。こんなにも食感が違うのね」
ミレイ様とロザリア様が嬉しそうにそう言った。すると、目の前に座っていたアルフレド様は泣きそうな顔をして、腕で顔を隠した。
「……こ、こんなに上手くいくなんて。ユフィのお陰だ、ありがとう」
「いえ、お力になれて良かったです」
私なんかの知恵がこうして誰かの役に立つことなんてなかった。だから、とても嬉しい。
みんなで楽しく食事を囲うひと時はとても楽しく、とても癒された。またこうして、四人の時間を過ごしたい。




