58.野外活動の授業(3)
今回の授業は、田舎で暮らしていた頃に私が何気なく使っていた魔法が、そのまま活かせるみたいで、とても楽しい。
まさか、あの頃は当たり前のように使っていた魔法が、学校の授業で役に立つなんて思ってもみなかった。
田舎では普通だったことが、都会では意外な技術として受け入れられる。それが、なんだか少しだけ嬉しかった。
だから、思う存分に魔法を活用する。すると――。
「ユ、ユフィさん!? 何をしているのっ!?」
「魔法で洗濯をしているんです」
「ままま、魔法で洗濯っ!? 手で洗った方が確実よ!? どうして、そんな難しいことをしているのっ!?」
「いえ、これが楽なんです」
「ど、どういうことーっ!?」
桶の中に入れた水と洗濯物と洗剤。それを魔法で動かして汚れを落としている。たくさんあれば、魔法を使った方が早いし、動きは自動でやってくれるように構築が終わっている。私の魔力を垂れ流すだけで、勝手にやってくれるのだ。
すると、魔法の動きが止まった。私はその洗濯物を拾い上げて広げる。
「ほら、汚れ一つが一つもありません」
「こ、この短時間で落ちるような汚れじゃなかったんだけど!?」
「あの動きは局所の汚れを取るように構築されたものです。まずは服のどの部分に汚れがあるかを認識してから、それを目標地点に定め――」
「あ、あのっ……ユフィさんっ!? これは野外活動の授業なのよ!? 魔法の授業じゃないわ!」
洗濯の時はヘレナ先生に力説された。次のテント設営の時は――。
「また、ユフィが道具を浮かべているぞ!」
「なんで、骨組みが組み上がっていくんだ!?」
「シートをかぶせて、テント設営が終わっているじゃない!」
テントの説明書を読んだ私は、その説明書通りに道具を動かし、組み立てていった。すると、ものの数分でテントの設営が完了した。
すると、離れたところから見守っていたヘレナ先生がまた駆け寄ってくる。
「ユフィさん! 今度は順番に組み立てないといけないのに、どうして魔法で出来たんですか!?」
「えっ? 説明書があれば簡単ですよ。説明書通りに部品が動くように構成を固めて、自動で動くようにしただけです」
「こ、構成? 自動??? それ、本当に魔法? えっ、そんな魔法、全然聞いたことが……」
「だから、どんな複雑な物でも正しく組み立てられますよ」
「???」
私が説明してもヘレナ先生は理解出来ずに困惑した表情で首を傾げた。
テント設営の授業が終わり、今度は料理の時間になった。
「皆さんの中で料理をしていたって人は少ないんじゃないでしょうか。今日は簡単なスープを作りましょう」
笑顔でそう言うヘレナ先生。黙って聞いていると、ヘレナ先生がこっちを向いた。
「流石にユフィさんでも料理は魔法では出来ませんよね?」
「えっ? 出来ますよ」
「……えっ。い、いや……まさか、そんな……。料理は複雑な工程が多くて、魔法を使えないはず。これは手で作った方が確実で……」
「そうでしょうか? あらかじめ決まっていることは魔法にしやすいですよ。見ててください」
そう言って、私はまな板に食材を置いた。手を上にかざすと――一瞬で材料が一口大に切られた。
「なっ!? 一瞬で均等に!?」
「切った食材が浮いて、鍋に入ったよ!?」
「調味料が自動で入っているんだけど、どういうことだ!?」
私の頭の中に入っていた、料理の工程。その通りに魔法が発動すると、全て自動でやってくれる。その後、水を入れるのも、火を付けるのもだ。
そうして、ぐつぐつと鍋が煮えて――スープが完成した。
「はい。魔法で料理が完成しました。食べてみてください」
スープをよそって、ヘレナ先生に渡してみる。ヘレナ先生は恐る恐るそれを受け取ると、スープを一口食べてみた。
「っ!? お、美味しいっ!? 凄く美味しく出来ているわ!」
「自分の手で作ることもありますが、いつもは本を読みながら魔法で料理をしてました。だから、何か他の作業をしながらでも、料理は出来ますよ」
「他の作業をしながら料理が!? そ、そんなことが出来るなんて……!」
ヘレナ先生は驚愕して、固まった。周りにいたクラスメイト達はざわついて、信じられないといった顔でこちらを見てくる。
「もう、魔法のレベルが違いすぎるわよ! どうやっても、そんな魔法は使えないわ!」
「ユフィは魔法が得意なのは知っていたが、どうしてそんなことまで魔法で出来るんだ!?」
「料理なんて難しいものを、魔法でやる方が難しくない!? 難しいものを、難しくして、大変じゃないのっ!?」
ロゼリア様たちも訳が分からず、頭を抱えていた。
「料理の基礎があって、魔法構築が出来れば誰だって出来ますよ。教えましょうか?」
善意でそういったが、誰もが絶望の顔をして首を横に振った。普通の手で料理するよりも簡単なのに……。




